聖女ちゃんと掛け布団。
お布団がー!
俺の布団は泥と血で汚れてしまっている。ちょっとだけマシなことは彼女が掛け布団の上にいるので、敷き布団は汚れていないことか。
――ドン!
薄い壁の向こうから強く叩く音が響く。
うひい、五月蠅かったですね。申し訳ない。嬉しくない壁ドンである。
「んー……ふぁぁぁ」
!!
その音に反応したのか、美少女が目を覚ます。
あくびをして覗く白い歯。持ち上がる目蓋、海を想わせる蒼、サファイアの如き輝き。
心臓が吹き飛ばされたかと思った。
ひゅ、と息が詰まる。
美少女は俺の布団と枕を不思議そうに眺めると、にまりと笑みを浮かべて嬉しそうに布団を撫でる。
あー!いけません!その笑顔!その手つき!いけませんよ!
あまつさえ、彼女は布団に頬ずりを始めた。
それはこんな柔らかい布団は初めてというかのような風情で……!
「ぐふっ」
俺の口から変な音が漏れた。
彼女は一瞬虚ろに視線を宙に彷徨わせ、それが俺を見定めるときりりと引き締まる。
やおら起き上がると布団の上に立ち、杖をこちらに突き付けてきた。
「***、******!?」
声も凛々し可愛い!
くそう、声まで美少女とか最高かよ。それと今の何語だこれ。
「**?******……?」
俺が呆然と彼女を見上げていると、彼女はゆっくりと杖を降ろして呟いた。
「**、***……」
「は、はろー」
俺の声が間抜けに響き、彼女は小首を傾げる。
いたたまれなくなって目を逸らすと、彼女のブーツに踏まれた布団が目に入った。
「あー……」
彼女は俺の視線を追い、掛け布団に土足でのっていることに気付くと、顔を青ざめさせてベッドから降りた。