聖女ちゃんつまみぐい。
さて、今日の昼飯はフランスパン……バゲットである。
とりあえずスライスしていこうか。先端部分をカットして口の中に放り込む。
硬い皮の部分、噛みしめると塩気と小麦の香りが口内に広がっていく。旨い。
背中に柔らかい衝撃。
おっ……!
「つまみぐいしてる……」
「味見です」
振り返ると俺の肘のあたりからじぃっとこちらを見上げる青い瞳。
俺はため息をついてバゲットの逆の端を切り落として差し出す。ツェツィリーちゃんは鳥のヒナのようにあーんと、口を開ける。
……あーんしろと。
彼女の口元にバゲットの切れ端をやると、パクリと食い付かれた。
俺の指を温かく湿った物がちろりと撫でる。
……えっろ!
と俺が内心で叫んでいることなど知らぬ顔でツェツィリーちゃんはもぐもぐと口を動かす。
「ぱん もとのせかい にてる でもぜんぜん こっち おいしい」
「うん。お昼はそのパンに色々とのせて食べる」
「たのしみ やさいは?」
「小さく切って」
「わかった」
キュウリをスライスしたり、ベーコン焼いたり、チーズを用意したりして皿にのせていく。
お湯を沸かして……コンソメスープにしておくか。インスタントのスープをマグカップに。俺のカップとツェツィリーちゃん用のマグカップに粉を入れる。
食器がペアになっていくね。
「はい、出来上がり」
「はやい」
「簡単で良いね、さあ持っていこう」