聖女ちゃんのうわさ。
『真由の愚痴を聞かされていた女友達の話を総合すると、君のところに若い白人女性がいることがわかる。
そして昨日から武蔵小山に可愛い外人の女の子がいるという話題が出ている』
「……マジっすか」
あー、ケータイ向けられてるなとは思ったが。
俺は廊下の手すりに肘を置いて話を聞く。
『SNS漁れば出てくるぞ。最初の写真としてTwitterに上がったのが、ぶかぶかの赤いパーカーとダボダボのジーンズ、サイズの合ってない靴というファッションの写真だ。
あの赤のパーカー、君のだろ』
「良く憶えてますね」
『あれは目立つじゃないか。物も良いし。
まあ、その写真だけは削除させた。ちょっと画像が犯罪っぽかったのでな』
まあ全然サイズ合ってない服着た美少女とかどう考えても犯罪に巻き込まれてる感あるよな……。しかし、流石アリーパイセン、手回し早い。
「ありがとうございます」
『いや、リツイート先で誰かが保存してるかとかまではもはや分からんからな。
まあ、まだバズってるという訳ではない。だがまあ、実際可愛いのは分かるし、目立つぞ。あのあたりテレビクルーも多いだろう』
「一応、テレビ局っぽいカメラは避けてるんですけどねー。一般人がこっそりスマホ向けてるのはムリです」
『それで、君は何を求めてるんだ?』
「ツェツ……彼女の幸せを」
電話の向こうから笑いを堪える気配がする。
『京介、君はやっぱり面白い。分かった、後でメール返事しとく』
「ありがとうございます」
言い切ったかどうかというところで電話は切れた。
変わらない。苦笑しながら振り返ると、玄関をちょっと開けてツェツィリーちゃんがこちらをうかがっていてびくっとした。
「はいはい、お待たせしました」