聖女ちゃんと電話。
買い物して家に戻ってくるとツェツィリーちゃんは文字の勉強である。
「ぱーぴーぷーぺーぽー…… きゃーきゅーきょー……
きょーすけ これ あってる?」
「大丈夫」
たまに間違ってないかパソコンの前に座る俺に尋ね、確認しつつ書き取りに戻る。
覚えるのもはやいし、字の上達もはやいね。
――ヴヴヴヴヴ
いつもマナーモードにしているスマホが机の上で着信に振動する。
ツェツィリーちゃんが一瞬で立ち上がり、拳を構えた。
「てき!?」
「敵ちがう。電話」
「むう」
構えた拳を降ろす。
「ちょっと話をしてくるから、続けててねー」
「ん」
ツェツィリーちゃんが座り、俺はスマホの表示を見る。
『アリー先輩』
ふむ。朝、メールを予約しておいた人だ。……まだ届いてない時間だが。
俺は部屋を出ながら電話を取る。
「お疲れさまですー」
「女を囲うのに金がいるかね?」
耳に響く低音。
前置きも何も無く、結論から入る癖が変わらない。口元に笑みが浮かぶ。
「……ですね。籠におさまる人ではないですが」
「そうだな。条件は?」
「メールに書きました。まだ届いてないですが。
しかしアリーセンパイ、話を跳ばしすぎです。流石にどう知ったか聞かせて下さい」
俺は話しながら靴を履き、外へ。薄暗い廊下と、抜けるような青空。
「真由の奴がキミにちょっかいかけようとして、結果コテンパンにのされたという話を耳にした。
昨夜はサークルの女たちが夜中にLineで絡まれて大変だったらしいよ」
「あー、そりゃご迷惑を」
「構わん、私はそれを後から聞いただけだ」