聖女ちゃんとばげっと。
そうだなぁ。何が人気か。俺はここのパニーニとか好きだが、チキンカツサンドとか有名か?
ちょっとお高いが肉たっぷりで美味いのは間違いない。
そう、『nemo』はちょっと高い。いや、むしろ『こみね』が安いのか。
でもまあ、それだけ美味いおしゃれ系パン屋である。
とまあ、木調の小洒落た店内を回りながらツェツィリーちゃんにパンの紹介をしていくと、ふと彼女が足をとめた。袖が引かれる。
彼女が声を出す。
「おっきい!」
「ツェツィリー、声小さめに。
……あー、フランスパンのバゲットか」
籠に刺さった1m近い長さのパンに驚いたようだ。
彼女が俺の耳元で囁くように叫ぶ。
「きょーすけ おっきい!」
…………。うん、ソウダネー。
「バゲットというパンだよ」
「ばげっと……さわっていい?」
ん、触ると買わないといかんが……昨日食パン買ったばかりなんだよな。今日の昼は自宅でパンにして、夜は帰りちょっと早いし、帰ってから食べに出ても良いか。
「いいけど、じゃあ昼ごはんはこれにしようか」
「うん!」
俺はバゲットを一本、籠から取り出してツェツィリーちゃんに渡す。
「はい」
ツェツィリーちゃんは両手でパンを受け取る。
「おっきくてかたい!」
んっ。
「りっぱ!」
俺は思わずふきだした。
「きょーすけ なぜわらう?」
「ツェツィリーは可愛いなって言う話」
うへへー、と彼女は笑い、肩で俺の身体を押した。
なんだよ。