聖女ちゃんあんどらぁごん。
夢を見ている。
絶望の荒野にて矮小なる者共と戦う夢だ。
絶望の荒野に仮設の祭壇を築き、祈りを増幅し、防壁となす雌。そしてその前に立つ虫けら共。
地を駆け轢き潰し、鉤爪で切り裂き、牙で食らい付かんとする。
させじと雌共から魔術が乱れ飛び、弓矢が飛び、一匹の雄が剣を振りかぶる。
魔術や矢など余の鱗の前には無力、体表にて掻き消える。
剣など徹るはずも無いが、引っ掻いたようなような痛み。あれが神世の聖剣か……!
祭壇の雌が雄の持つ剣に祝福を与え、剣身の光が増す。
やはり警戒すべきはあの雌!白き衣を身に纏い、手には神世の杖。蒼き瞳でこちらを睨む。
余は咆哮した。
――不遜!
余の咆哮は天地を震わせ、竜巻を呼び地を揺らす。
身動きの取れぬ祭壇の前の者共を薙ぎ払い、こちらを見上げる雌に狙いを定める。
今こそ、その雌に食らい付かんと……!
「ひゃうっ!」
……ひゃうっ?
俺の牙は柔らかいものを食んでいる。……牙?何のことだ?
「あの きょーすけ」
俺の耳元からこえがする。
「いいよ でも やさしくしてね」
右手はサラサラとした手触りの硬いものを抱え、頭と髪の毛かこれ。
口の中には柔らかな耳朶が……。
「…………!?」
俺が目を覚ますとツェツィリーちゃんを抱きかかえるような姿勢になっている。
そして耳を甘噛みしていた。
「うひゃい!」
一瞬で目が醒めた。
だから天丼ネタ好きだっていう。