聖女ちゃんとチョココロネ。
まー、真由のやつは多分もう来ねえだろ。
どっちかってゆーと、生徒やその親に武蔵小山商店街で見られまくるのが問題だ。
そんなことを考えてるうちにアパートへ。
家を出る前に鍵を渡していたので、ツェツィリーちゃんがガチャガチャと鍵を開け、先に中に入って言う。
「おかえり なさい きょーすけ おつかれなさい」
「うん、ただいま、ツェツィリー」
「ただいまっ きょーす……ふぁぁ」
「おかえり、ツェツィリー。眠いね?」
挨拶の途中でツェツィリーちゃんは欠伸をする。
十時ちょい前。朝5時頃から起きてるからそりゃ眠いよね。俺も眠い。
ツェツィリーちゃんは目のあたりを手でこしこしと擦る。
「うみゅ……」
「お風呂はいるか、お湯を浴びるだけかどうする?」
「……はいりたい」
「中で寝ちゃ駄目だよ」
ツェツィリーちゃんはこくりと頷きながら俺のシャツを摘まんで見上げる。
「いっしょにはいる?」
「入りません!」
「でも きょーすけ しゃんぷー する」
「はいはい」
部屋へと入る。食器はきれいに片付けられていて、ちゃぶ台の上にはツェツィリーちゃんにあげたノートと『はらぺこあおむし』の絵本。ビーズクッションはツェツィリーちゃんの座っていた部分がへこんでいる。
ふふと笑みが浮かぶ。
「あ そうだ きょーすけ ごめんなさい」
「うん?どうかした?」
「ちょここころね いただきました」
ツェツィリーちゃんがしゅんとする。ああ、朝買ったやつ。
「チョココロネな。うん、食べて良いって言ったよ」
「はんぶん たべて きょーすけの ぶん のこしておこうと したけど」
俺は頷く。
「なかみ おしだされて こぼれて しまいそうで たべてしまいました」
あー。尻尾から食べたな。俺は笑みを浮かべる。
「美味しかった?」
「おいしかった!」
ツェツィリーちゃんの頭を撫でる。
「なら良かった。また買いに行こうな」
「ん」