聖女ちゃんと帰るので。
俺は教室に戻る。
みな何か言いたそうなので、先んじて言う。
「はい、俺はあと10分したら彼女と帰るのでみんなとっとと帰って」
「横暴!」
ブーイングが起きる。
俺は座席へと戻り、書類作業をサクサクと始める。
みどりさんが横に座って話しかける。
「せめて名前教えて!」
「ツェツィリー」
「セシリー?」
「ツェツィリー」
逆の席に山口先生が座る。
「アメリカ人っすか?」
「いや、東欧の旧ソ連のあたり。英語話せない」
「日本語話せますか!」
「すごいカタコトだけどね、話す気ならゆっくり」
「ありがとうございます!」
みどりさんは立ち上がって外へと向かった。扉の前でこちらに叫ぶ。
「肘川先生、室長先生さようなら!」
「ちょ、俺も!」
山口先生もそちらへ向かおうとするが室長に止められる。
「山口先生、仕事!」
山口先生はとぼとぼ戻り俺の隣で書類作業を始める。
生徒たちは三々五々外へ向かい、何人か俺の周りで事務を始める。
「何だよ」
「めっちゃ美人じゃないっすか、どこで捕まえたんですかあんなん」
「留学生的な?色々あんだよ。めっちゃ懐かれた」
「彼女何歳ですか?」
「……18」
嘘だけど。
「犯罪!」
「犯罪じゃねぇ」
16だから犯罪だけどな!そもそも密入国扱いなのか?戸籍がない場合どうなんだか分からんが。
「うへぇ、超羨ましいんだけど!」
「それは全面的に同意する」
俺は書類を終えて立ち上がった。
「んじゃな」
「月の無い夜道には気をつけろよくそぅ……お疲れさまです」
「お疲れさま」