聖女ちゃんのお迎え。
山口先生が入り口に向かってダッシュし、水渕君が続く。
扉をガッと開けて外を見て、顔に驚愕を浮かべてそっと扉を閉めて戻ってくる。
「めっちゃ可愛いじゃねーっすか肘川パイセン!紹介して!」
「いや、無関係の人かも知れんだろ。あとヤダ」
みどりさんが俊敏な動きで入口へと駆ける。
そっと扉を開けて顔だけ外に出す。…………手を振っている。扉を閉めて戻ってきた。
「笑って手振り返してくれた!やだちょーかわいいキレイヤバい!」
語彙力の低そうな感嘆の言葉を言いながらバシバシと俺の腕を叩く。やめれ。
「……ちょっと見てくる」
俺は白衣を机に起き、教室を出る。26号線沿いの塾の前、街路灯の下に見慣れてきた朱を帯びたプラチナの髪が輝く。
俺が手を上げると、ツェツィリーちゃんはぱあっと顔を輝かせて手を振った。
「やあ、どうかした?」
「えへ きちゃった」
……きちゃいましたかー。
まあ、武蔵小山住んでれば遅かれ早かれバレるか……。良しとしよう。
「あと十分くらい待ってくれ。仕事片付けて帰る」
「はいっ」
「まあこれからでてくるやつら声かけられると思うけど、手でも振ってやってくれ。もしナンパされたら大声出してくれ」
「なんぱ なに?」
「あー、付き合ってって言われたりとか。どこか行こうと言われたら?」
ツェツィリーちゃんはこくりと頷く。
「んじゃすぐ終わらして戻る」
俺は教室に戻ろうとしてビクリとする。教室の扉を少しあけてこちらを覗いてるヤツらが何人も居る。ホラーか!
ツェツィリーちゃんは俺の腕を取り、ぎゅっと抱えて扉に向けてニコリと笑った。
「…………なに」
「きょーすけ わたしの なんぱ けんせい」