聖女ちゃんの話。
ざわ……ざわ……!
教室がざわめく。
「はっはっはなにをねごとをいってるんだ水渕くんせきにすわりたまえ」
水渕君は椅子に座りながら言う。
「でもひじかわせんせーがめっちゃかわいい金髪の外人さんと手ぇ繋いで歩いてたって」
ざわっ……!
教室の圧が高まる。俺の肩に手がかけられた。
「ちょっと肘川リーダーそれは聞き捨てならないっすね?」
大学生講師の山口である。
「気のせいだ」
「肘川リーダー、めっちゃかわいい金髪の外人と手を繋いでるとかそれはギルティなのでは?」
「別に罪じゃねーよ」
今授業を受けてた女子高生のみどりさんが眼を輝かせる。
「繋いでないとは言わないんですね!」
ぐっ。
「ねねね、水渕くん、他は他は!?」
みどりさんが水渕君へ詰め寄る。
「い、いや、かーちゃんから聞いただけだけどさ。昨日の夕方あたり『Life』で買い物してたら帰りにすれ違ったって」
…………あー、まあ確かに買い物してたよな。
「荷物たくさん持ってるのに手を繋いだままで仲良さそうだったって言ってた」
「きゃー!」
「ギルティ!」
……あーもう。
――キーンコーンカーンコーン。
「はい!授業です!解散!解散!」
俺は席に着く。
あー、生徒とか親はこのあたりうろついてるよなぁ。当たり前だけど。
授業中、室長が教室を見回る中、俺に声をかけてくる。
「さっき来たときの話は彼女のため?」
「……ま、そういうことです」
室長は俺の肩を叩いて隣のブースへと歩いて行った。