聖女ちゃんお見送り。
と言うわけで夕飯食べ終わると時間は割とギリギリ。
「ツェツィリー、じゃあ俺は仕事行ってくるわ」
「いってらっしゃいませ きょーすけ
おしごと がんばって」
ツェツィリーちゃんは姿勢を正して俺に頭を下げる。
えへへ。照れ臭い。
「えーと、食器の洗い物頼んでいい?」
「はい」
「わからないのあったら、そのまま流しにでも置いといてくれればいいから。終わったら絵本読んだり自由にしていて。
悪いね、お待たせしてしまう」
「おしごと だいじ」
ツェツィリーちゃんは拳をぎゅっと握り締める。
俺は頷くと立ち上がり、財布とスマホと筆記用具入った鞄を持って出た。
玄関で靴を履くと、ツェツィリーちゃんもついてくる。
「どした」
「おみおくり」
一緒にアパートの1階まで降りる。
まだ夕方には早く、日が長くなってる季節だ。
アパートの敷地の境まで手を繋いで並んで歩き、振り返る。
「ここまでで良いよ」
「ん」
「行ってきます」
そう言ってツェツィリーちゃんに背を向けると、背中に衝突を感じた。
背中の上の方、肩甲骨の間に硬いもの、頭が押し当てられ、背中の真ん中のあたりに柔らかく弾力のある2つのものが押し当てられる。
ツェツィリーちゃんの腕が俺の体の前方へ。後ろから抱きしめられた形だ。
…………!
「ななななにを」
「いってらっしゃい がんばってね?」
「お、おう。行ってきます」
ちょっとするとツェツィリーちゃんは離れ、俺は手を振りながら塾の教室へと歩み始めた。
ちょっと前かがみになりながら。