聖女ちゃん勝つ。
そのタイミングでツェツィリーちゃんが店の中から出て来る。
俺がどうやら他の人と話しているらしいと気づいたのか、途中で歩みを止めて軽く首を傾げる。
「きょーすけ おはなしちゅう?」
「ああ、すまん。拾うの手伝えなかったな」
「いいえ だいじょぶ」
ツェツィリーちゃんと話して真由に向き直る。
人には他と比べる心理があり、一般的に男より女の方がその傾向は強い。そして真由は特に比べたがりであった。
彼女の顔が僅かに歪んだ。
「その子は?」
真由の瞳が小刻みにツェツィリーの上を動く。
……顔、胸、下半身、腰、胸、髪、顔。
「彼女はツェツィリー。こちらは河野真由」
ツェツィリーちゃんが頭を下げてから、俺の横につく。
「はじめまして まゆ」
「え、ええ。はじめまして。……えっと、キョースケ。どういう関係?」
「えっと「かのじょさんです!」」
…………おう。
周囲の人がこっち見んのハズいんだが。
ツェツィリーちゃんは俺の腕に手を絡めてきた。
「うん、今付き合ってるんだ」
すっと真由の顔から表情が抜けた。
「そう、おめでと」
「コーヒー飲みにいくか?」
「いいわ、お邪魔だろうし帰るわ」
俺が声をかけるが、彼女は武蔵小山の駅へと歩き出した。
俺とツェツィリーが視線で彼女を見送る。
…………ふぅ。ため息がでた。
「すげーわ、ツェツィリー」
「わたし すごい?」
「ああ」
俺は頷く。
ツェツィリーちゃんが存在するだけで、真由が何も言えずに負けを察して帰ったわ。