聖女ちゃん食べ終わる。
「あのー、ツェツィリー?」
「…………はっ!」
「気に入った?」
こくりと頷く。
「あまい は しあわせ」
……甘味とか食べる機会無かったのかなぁ。
「とてもあまい でも あまい だけじゃない すごい」
マーマレードだしね。
「苦くは無い?」
「わたし にがいが おいしい はじめて しった」
なるほど。
ツェツィリーちゃんはもう一口パンを食べる。
「このたべもの かみの たべもの……」
「違うからね!?」
ふむ、とツェツィリーちゃんは頷き、そこからは黙々と食事を続けた。
まあ幸せそうなので良しとする。
彼女は食べ終えると、ふうと満足そうに息をつき、彼女の言葉で、恐らく神に感謝を捧げ、最後に日本語でこう付け加えた。
「きょうの かてを あたえたもう かみに そして きょーすけに かんしゃを」
「はい。ごちそうさまでした」
ツェツィリーちゃんは真剣な顔をし、こちらを見つめる。
「きょーすけ おはなし よろしいですか?」
む、俺はしがないフリーターであり、今日は幸いにもバイトが休みである。時間はある。というか、本来はまだだらだらと寝ているような時間である。
「よろしいよ」
「ながい はなし なるです」
「分かった。ちょっと待ってね」
俺は皿を片付けると、ティファールでお湯を沸かし、戸棚からやはり『カルディ』で買った紅茶のティーバッグ、ジャンナッツのセイロンティーを取り出し、ポットに入れて部屋に。
「長くなるならお茶でも飲みながら話そうか」
「もう おゆ わかした…… やはり」
ツェツィリーちゃんが呟く。
「わたしは もといた ばしょと ことなるせかい とばされた おもいます」
へえ?彼女の価値観の中には複数の世界があるのか。
「そうかもしれない」
俺は頷く。
「そこに かみが すくいのて さしのべて くれた」
ふむ?
「きょーすけ という だいまじゅちゅしの もとへと みちびいて くれたのだから」
「違います」