聖女ちゃんフリーズする。
急いでパンを焼く。
といってもできる時間が変わるわけでは無いが。
「むむむ あかい かじつでしょうか」
部屋からはトマトを見ているのだろうツェツィリーちゃんの呟き。
「……あまい! すっぱい! しょっぱい! すごい なんとも あじがこゆい」
トマトを初めて見るかー。ほんとマジで異世界人って感じだよなぁ。味が濃いってのは彼女のいたとこで野菜や果物が品種改良されてないってことか。
チーン!
オーブンが出来上がりを知らせる。マーガリンを塗って食卓へ。
ツェツィリーちゃんがこちらを見上げてくる。ふふ。期待に満ちた表情。おあずけ中の犬みたい。いや、こんな美人な犬はいないが。
「おまたせしました」
ジャムの瓶を見つめて動かないので、こちらでジャム、フルッタ・チェレスティーナのオレンジマーマレードの緑の蓋をあける。中からは鮮やかな黄色。
「おお」
感嘆の声が上がる。このジャムは割とフレッシュ系というかコンポート系というかね。
うん、とても好きなジャムなんだけどたっぷり塗ってしまってすぐなくなるのが欠点だ。
彼女と自分のパンにジャムをのせ、広げていく。
「はい、どうぞ」
「ありがと ございます」
感謝の言葉と共にパンを手にする。
さくり。
ツェツィリーちゃんはパンにかぶりつくと、その動きを止めた。
…………。
マーマレードダメだったかな。
……………………。
あ、でも幸せそうなオーラを感じる。