聖女ちゃんくるしい。
「ぴざ しゅごい……」
ツェツィリーちゃんはとろけるような笑顔を見せる。
「それは何よりだ。そこの蜂蜜をかけても美味しいよ」
ツェツィリーちゃんは首を傾げる。
「はちみつは あまい」
俺は頷く。まあ、異世界でも蜂がいるなら蜂蜜はあるよね。
「はちみつは おいしい でも ちーずに あう おもえない」
そう言いながら、小匙にすくってクアトロフォルマッジの1ピースの上に垂らして持ち上げる。
そしてこちらを挑発的に見て言った。
「でも きょーすけ すすめるなら ためす」
もぐもぐもぐもぐ。
「…………あうわぁ」
即落ち聖女ちゃんである。
「なにこれ ずるい」
「ズルくは無いが」
聞いてみると、美味しいものがいっぱいあって、美味しい食べ方まで知ってるのはズルいらしい。
俺はジャポネーゼを渡す。
「こっちは おにくの ぴざ」
もぐもぐとツェツィリーちゃんが口を動かす。
「こっちも おいしい」
とまあ、ツェツィリーちゃんと交換しながら食べる。『ピッツェリア・ラ・ロッサ』のクアトロフォルマッジははじめて食べたけど、これもうまいなぁ。
ピザを平らげ、ツェツィリーちゃんが、ふーーと大きくため息をついた。
「おなか いっぱい」
「そうだね」
「これは うごけない…… くるしい」
うん。とは言え他のお客さんも多いからねー。ここで休む訳にもいかんっていう。
俺はツェツィリーちゃんのグラスも持って立ち上がり、ドリンクバーからウーロン茶を入れて持ってくる。
ツェツィリーちゃんはくんくんとウーロン茶のにおいを嗅ぐ。
「つめたい こうちゃ?」
あれ、そもそもアイスティーも飲んだことないか?
俺は首を振る。
「お茶だけど、ちょっと作り方とか違うやつ。ウーロン茶っていう」
「うーろんちゃ」
「ちょっと渋いが、ダイエット……えーと太りづらい効果がある」
「すばらしい とてもとても すごい」
ツェツィリーちゃんは感心したように頷くと、ウーロン茶を飲み始めた。