聖女ちゃんももたろうを語る。
その後もツェツィリーちゃんの読書は続く。
「いぬー!」
「ツェツィリー、静かに」
やっぱり言い直すのか。
「鳥だね。鳥の種類のひとつ」
ツェツィリーちゃんはうんうんと感銘を受けたように頷いた。
「きびだんご しゅごい……」
きびだんごへの評価が高すぎる……。
そして話は最後へと進んでいく。
「…………ももたろうは おじいさんと おばあさんと しあわせに くらしましたとさ めでたし めでたし
…………はー すばらしい ものがたりでした しょうかい ありがと ございます きょーすけ」
「そ、そうか」
何というか、評価が高いな、桃太郎。
「何がそんなに良かった?」
俺の問いにツェツィリーちゃんはしばし考えて言った。
「これは えいゆうたん ですね とくべつなる しゅつじ おそらくは かみの つかいたる ゆうしゃ ももたろうが ぜんりょうなる ろうふさいの もとへ」
……あれ、そういう民話分析!?
「いぬ きじ さるは かしんの しょうちょう たびの まえに きびだんごを あたえているの すばらしい」
「お、おう」
「そう おばあさんの げんきひゃくばい きびだんごを しょたいめんの ものに あたえる かんだいさ
はたらきの ほうび としてでなく さきに かごを あたえる これぞ ほうけんせいの あるべき すがた よき おうの すがた」
封建制のあるべき姿!?
「くにを おさめる おうの ちから そして みずから せんとうに たち おにを たおす えいゆうとしての おうの ちから おうの ありようを つたえる ものがたり」
……いや、えー。深読みし過ぎではー。
「それを こどもに わかりやすく あざやかな えを つかって だれでも よめる すばらしい」
ツェツィリーちゃんは嬉しそうに本の表紙を撫でた。