聖女ちゃんとももたろう。
「おばあさんは かわへ せんたくに いきました おばあさんが せんたくして いると かわかみから おおきな ももが ど…… どん…… ぶらこ? どんぶらこと ながれてきました」
ツェツィリーちゃんが俺を見上げる。
「どんぶらこ なに?」
なんか発音が平坦だと、どんぶらこって感じしないのな。日本語にもアクセントあるよなぁ。
「前の部分を強く発音して、どんぶらこ」
「どんぶらこ」
「どんぶらこー、どんぶらこ」
「どんぶらこー どんぶらこ」
「そうそう」
手を前に出して、声に合わせて手を動かす。川を流れる桃をイメージして。
「どんぶらこー、どんぶらこ」
「どんぶらこー どんぶらこ」
ツェツィリーちゃんも真似して手を動かす。可愛い。
「どんぶらこは、川を大きなものが流れる様子をあらわす言葉」
「わかった!
『おじいさんにも たべさせましょう』 おばあさんは おおきな ももを よいしょ よいしょ と もちかえりました 『おおきな ももじゃ』 おじいさんが よろこび ももを わると なかから げんきな おとこの あかちゃんが とびだしてきました……
ちょうてんかい!」
……確かに超展開ですねー。
「ももから こどもが!
きょーすけも ももから うまれた?」
たまたま近くの本棚を整理していた司書さんが崩れ落ちた。
笑いを堪えているのかぷるぷる震えている。
「産まれてません」
「『なんと げんきな あかちゃんだこと』 『ももたろうと なづけよう』 ももたろうは おじいさんと おばあさんに そだてられ すくすくと せいちょうしました なるほど」
「……何がなるほど?」
「ももから うまれたから ももたろう なまえに うまれた ばしょを つける」
……それ、ほとんどの人間がまんたろうにならねーか?