はじまりの物語
「君になら食べられても構わない」
異形と化した彼にそう言うと
「見つけた、俺の月の女神」
と、言われ抱き締められた
何故君が、その名前を…?
私の名前はホルス・エストレーヤ
貴族エストレーヤ家の一人娘だ。
女の身だが訳あって男の名で生活している。
この度剣の腕が認められ国立ディヴァイン学園に14歳という異例の若さで入学した。
しかしひとつ問題がある。
私はこの学園を以前から知っている。前世から
時は前世に戻る。
私は三人兄妹の真ん中であった。
兄と妹に挟まれ二人がゲームをするのを眺めるのが日常だった。
ある時階段から足を滑らせて死んだ。
その死に際に何故か思い出したのが兄と妹がやっていた学園物のゲーム
名前は思い出せないがそのゲームの舞台となる異世界の学園の名前がディヴァイン学園だった。
そう、私は見事に兄妹がやっていたゲームの世界の者に生まれ変わってしまったようだ。
しかもこのホルスという自分の名前にも覚えがある。
主人公に何かときつく当たる嫌なライバルキャラだ。
…これは穏便に過ごさなくてはならない…
そうは思ったけれど、私は前世からちょっぴり傲慢な性格で
尚且今世の自分の見た目や剣の腕前に自信があるったので
「何?決闘…?…良いぞ」
つい
「ハッ!この程度か貴様!出直してこい!!!」
学園入学一日目で上級生との決闘に勝ち、学園中の注目の的になってしまったのだった。
「またやってしまった…」
寮の自室に置いてある鏡の前で一人反省をする。
「ハッ…こんな顔父様と母様に見せられない」
この国で王族の血筋を持った父譲りの金髪緋目、異国から嫁いできた母譲りの褐色の肌
この二人の良いところを受け継いだ私は
「美しい」
この身も、才能も、何もかもが美しい
ひとつ悲しいのは、とても美しい私の真の名を皆に知られていない事
まぁ、それは良いとして
明日はこんな私の唯一心を許している親友アズールから相談を受けるのだった。早く寝なくては
この時は、あぁなるなんて思いもしなかった
「ホルス、お待たせ」
「待ったぞアズール!遅かったじゃないか」
彼はアズール
図書館で本を読んでいたら声をかけられ、それから私達は親友になった
「俺の前ではそんな男口調じゃなくても良いって言ったよね?ほら、楽にして」
「す、すまない…やはり自室以外だと緊張してしまって…」
「あはは、まぁそこがホルスの良いところなんだけれども」
「…ところでアズール、こんな人気のないところに私を呼び出してどうしたんだ?人に聞かれたくない悩みとかあるのか?」
「うん実はね、君に告白したい事と見せたいものがあるんだ」
アズールがそう言った瞬間、アズールの足元が海面のように揺らめいて、中から触手が飛び出し、倒れかけた私を包み込んだ。
「実は俺、この世界の旧支配者、つまり、魔王の末裔なんだ」
言ってる意味がわからなかった
「旧支配者7つの精霊魔王の内、星空や大海全ての蒼海を司る精霊魔王の末裔、それが俺なんだ」
言ってる事の単語ひとつも私にはわからない
「君にはどうしても伝えたくて、でもこの姿を見た者は食べなくてはならない」
でも
「だから、ごめんね」
その姿のアズールは
頬を染めながら微笑むアズールは
「美しい…」
「…え?」
「君になら…食べられても構わない…」
思わず手を差し出す程とても美しかった
「…この姿が美しいって?」
…?
「…!ホルス、君、もしかして君は」
アズールは私を見て、私の頬を触り
「見つけた…俺の月の女神!」
私の真の名を言った。
「何故君が…その名前を?」
これは、私と彼の物語
褐色は良いぞ