正義の東方
「春、一体何なんだ」
真夜中、統達は春に呼び出されていた。今は浦崎の死刑執行の1時間前だ。何の用なんだろうか。夏目の姿は見えない。
「お父さん、すぐ済みますから。」
春は統にそう言う。
「まず、最初に今回の事件。おかしいんですよ」
「あらゆる証拠が出来過ぎている、それに浦崎さんは素行が良いとは言えません、彼はビジランテではない」
「それはあなたの判断でしょう、鏡崎さん」
日元が春に返す。
「ええ、ですから確たる証拠を言います」
「まずタクシードライバーですが」
春がそう言うと向こう側の扉から夏目が出てくる。一緒に初老の男性が出てくる。
「この方は深夜担当のタクシードライバーです」
「改めてお聞きします。この人を見たことがありますか?」
春はそう言って、浦崎の写真を見せる。
「はい、とても慌てている様子でした...」
老人が申し訳なさそうに話す。
「何...?」
統が驚く。
「恐らく記憶を操る魔法を使われたのでしょう。気付いたのはこの1時間前、浦崎さんが行ったとされる商店です」
「初め店主は私にスナック菓子を勧めました、ですが今日お酒を勧めてきました」
「店に入ってすぐにあるお酒と同じものを部屋の奥から取ってきてね」
「恐らく、仕立て上げた犯人が死ぬので油断して魔法を解いたのでしょう」
「そして、この人に見覚えはありますか?」
春は一人指さす。
「いえ、ありません」
「変ですよね、なぜこの人が貴方を知らないのでしょうか」
春は追い詰めるように言い放つ。その人間は黙って春を見据えている。
「日元さん」
「ちなみに色々な人間に聞きました、誰もあなたのことを知りませんでした」
「でもカメラには映っている、昼頃に聞き込みをしているあなたが。納得できるように説明していただけますか?」
日元は拍手する。顔には貼りつけたような笑顔が浮かんでいた。
「お見事です、鏡崎春さん、鏡崎夏目さん。そして、鏡崎さん」
「春さんが話始めた時からずっと私の後ろに居る。恐らくあなたの魔法の射程圏内なのでしょうね」
「ですが私の魔法の範囲内でもあります」
日元が前に飛ぶ、ガラスを突き破って外に逃げるつもりだろう。春と夏目は反応が遅れる、
「鏡魔法 鏡結」
窓から日元めがけて棘が生える。日元はそれに気づく
「これを仕込んでいたのか...!だが」
「強化魔法 牡丹」
日元はそのまま鏡を突き破り外に出る。
「鏡魔法 鏡復元」
だが割った鏡がものすごい速度で復元されていく、日元はそれに引っ張られる。日元は懐から警棒を取り出す。
「この速度を使って鏡崎さんを叩く...」
鏡が復元される。
「ここだ!」
日元は統を殴る、だが統はそれを避ける。床に警棒が思い切り叩きつけられ、床が崩落する。日元は瓦礫を蹴って向こう側へ行く。統は落ちる、春と夏目が日元を追いかける。
「油断したな」
統はしりもちをついていた。
「大丈夫か...二人とも」
「はい...」
「ドライバーさん、貴方は帰りな。雛元?」
雛元は動かない、腹にナイフが突き刺さっていた。統はそっとナイフを抜く、
「麻酔毒か...これはしばらく動けないな」
「俺はここに居るとしますか」
「しつこいですねぇ...」
日元は廊下を全力で走っていた、
「鏡魔法 虚針」
二人は後ろから針を飛ばす、そして突き当りの部屋に入る。二人もそれを追う、そして部屋に入る。
「まだまだ子どもですねぇ...」
日元が入ってきた春を刀で真っ二つにする。その春を踏み台に夏目が飛びあがり、蹴りを放つ。
「遅い...」
日元はすぐそちらを向いて左手で刀を抜く、そして斬りかかる。
「あなたも馬鹿ね」
春の声が聞こえたと思った瞬間スライディングをかけられる。日元は夏目を斬れずに姿勢を崩す、斬った春の死骸に亀裂が走っていた
「鏡で分身を作ったか...」
日元に夏目の蹴りが当たる、日元は吹き飛ばされる。夏目は着地する。
「なかなかやるな、だが」
「強化魔法 スサノオ」
日元の身体が隆起していく、刀も伴って大剣に成長する。
「ビジランテとして活動するときはこれを使っているんだ」
「そうか、なら私たちも」
「魔力解放段階1 真実の代理人」
二人の体に透明な刃が纏わりついていく。そして鎧のようになる、春は鎌を、夏目は剣を持つ。
「鏡崎さんのを見たことがあるが、子どもでも中々に怖いな...」
「でも、二人でも。鏡崎さんほどじゃない」
日元は向かってくる二人に剣を振り下ろす、