西方へ歩む者達
主人公登場
「さて、レイブン。僕は何をしたらいい」
「簡単だ、ある蓮千亭の人間を殺してほしい」
レイブンは日元に写真を渡す、日元は二人の人間に見覚えがあることに気づく。
「この二人...」
「恐らく僕と君共通の敵だ」
「分かった」
「もしかしたら俺は本当にやったのかもしれないな...」
「確かにあの女は最初から好きじゃなかった...だからなぁ...」
監獄の中、浦崎は一人うつむいて壁に向かって言葉を投げていた。連日続く取り調べ、自分がビジランテという殺人鬼前提で知らない人間たちにいろいろなことをまくしたてられる。自分はやってない、と何度言ったか。もう途中から面倒なのでそれすら言わずに黙るようになった。面会に来た親は叱ることなく、ただ泣いていた。今頃親の元にはマスコミやらが押しかけているだろう、さんざん自分をゴミ扱いした報いだ。
「ははは...」
ふと頭の中に因果応報という言葉がよぎった。たまたま起きていた授業で教師が言っていた。善い行いは善い行いを、悪い行いは悪い行いを呼ぶらしい。さんざんいろいろしてきたから当然か、自分は今に納得していた。
「38番、尋問の時間だ」
一人の看守が牢の前に現れる。そして牢から出される。出されると言っても全身を椅子に縛り付けられているので看守が椅子を押す。そして薄暗い部屋に入れられる。目の前には今までの尋問で見たことがない男女の二人組が座っていた。だが、威圧されるような感じがある。
「浦崎さん、犯行を起こしてないと主張するんですね」
なんだ、医者か。あまりにも否定をし続けたので何度か医者を呼ばれたことがある。あいつらは嫌いだ、自分の立ち入って欲しくない所にズカズカと土足でなれなれしく入ってくるからだ。
「浦崎さん、あの日あなたはタクシーに乗ったんですよね?」
「ああ、だがどうやらそんなもんはねぇみてぇだけどな!」
浦崎は自暴自棄になっていた、目の焦点は合わず、泳ぎ続けている。
「いえ、存在しています。それは確かです」
女性は写真を置く、そこには知らない男女がポーズを決めて写真を撮っていた。
「誰だ、こいつら」
「重要なのはこっちです」
女性が写真の奥を指さす、そこには車があった。それは紛れもなく自分が乗ったタクシーだった。
「あっ!これだ!俺が乗ったタクシー!」
思わず声を出す。
「この写真が撮られた時刻は深夜2時、あなたが外出していた時刻と同じです」
「そ、そうなのか!じゃあ俺はこれで!」
「残念ながらこれだけでは決定力が弱いです。なので私たちはさらに証拠を見つける必要があります」
「なのであなたがとった行動を逐一教えてほしいんです」
「分かった。まずは...」
「という感じだ。」
「ありがとうございます、早速裏付けを取ります」
「あともう一つ」
「はい?」
「あんたらの名前を聞いておきたい」
「鏡崎春です」「兄の鏡崎夏目だ」
「この人見てませんか?」
夏目は浦崎が行ったというコンビニの店員に聞き込みを行っていた。
「見ました。確か午後3時くらいだったと思います」
「ご協力感謝します」
「いんやぁ~?観てないねぇ~」
春は浦崎が真夜中に行った酒店に行き、店の主である老婆に話を聞いている。
「そうですか?この人午後にここでこけてあなたに絆創膏を貰ったと聞いていますが」
「そんなことした覚えはないねぇ~」
「そうですか...」
「何か買っていくかい?」
「いえ、結構です」
「で、どうだったんだ?」
浦崎は二人に子どものように話かける。
「あなたの午前中の行動に関しては証拠がありました、ですが」
「午後の方は...」
「そうか...ありがとう。こんな俺の為に...」
浦崎は少し嬉しかった、自分の為に動いてくれる人間がいたことに。日元とかいう刑事とは違う、あいつは自分をゴミを見るような眼で見ていた。だがこいつらは違う。
「どんなあなただろうと、私たちは真実を探します。それが私たちの使命です」
春は言い残し、去っていった。夏目もあとに続く。浦崎は二人が閉めた扉をずっと見ていた。いつもみていた無機質なドアとは違う気がした。
「春、いいかこの事件は終わったんだ。あいつが犯人だ」
「いえ、お父さん。終わってません」「俺らが帰るのは明後日、それまでに真犯人を見つけてみせるさ」
二人は父と争っていた。統は一環としてこの事件が終わったということを認めない。統の両隣には日元と雛元が座っていた。終わったとされているのに捜査を続けているのでついにお叱りが来たらしい。
「革命軍のお二方、鏡崎さんの気持ちも分かっていただけませんかねぇ」
日元が二人に口を開く。
「夏目お前がついていながらなんて体たらくだ」
「ごめん父さん、でもこれは本当なんだ」
「何にせよ期限は明後日、それだけだ」
統達は去っていった。
「春、どうするよ」
夏目が聞きにくる、あれから次の日になったが全く進展がない。期限、つまり死刑執行の日は明日である。
「分かってる、でも証拠がない」
「う~ん、どうしたもんか」
春は事件の場所を歩く...そこで
「いらっしゃい、煙草かい?」
いつの間にか商店に来ていた。老婆が話しかけてくる。
「いえ、買い物に来たわけでは...」
「あら...じゃあお酒ね!待ってて今取ってくるから...」
老婆は奥に行く。老婆に受け答えをした瞬間、春は思いついた。
「まさか...だとすれば」
「お兄ちゃん?一つやってほしいことがあるの」
「分かった。行ってくる」
やっと主人公だせました