ビジランテ
「K公園惨殺事件」
「未青年のグループが公園で惨殺される事件が起きた」
「有力な手がかりがなく結局未解決事件となった事件」
「だが今回の事件はそれと手口が酷似している」
「この事件と前の事件は繋がっていると?」
「はい、鏡崎さん」
「ま、そりゃそうだろうな」
「私はこれから聞き込みに行ってきます」
「お...俺も行ってきます」
「それでは雛元さんは教師に、私は生徒に聞いてみるとしましょう」
水村が通っていた高校に日元は聞き込みに来ていた。そしてベンチで昼寝をしている目当ての人物に話しかけていた。
「え?水村について知りたい?」
「はい」
「へ~またあいつなんかやったの?」
「ええ。それでご友人のあなたに尋ねているんですよ」
「う~ん。俺が言うのもなんだけどあいつとあいつの取り巻きはクソみたいなやつだよ」
「まあ、刑事さんが聞きにくるようなことがあいつに起きても仕方ないよ、うん」
「それに俺に聞くよりあいつの取り巻きに聞いた方がいいでしょ」
「そう思ったんですがねぇ...生憎誰も学校にいないんですよ」
「そこでこの高校の中でも経歴が少し異常なあなたに聞いたんですよ」
「はっはっは。許して下さいよ刑事さん。もう罰は受けた」
「ええ、分かってます。あと蛇川さん」
「はい?」
「今日はいい天気ですね。花は咲き乱れ、鳥たちは歌う」
「え?はいそうですね、取り巻きの奴らはL町のあたりに居ますよ」
日元は背を向けて歩き出した、蛇村はベンチで横になった。その脳裏には刑事の笑顔が思い浮かんでいた。何故あんなに彼は笑っていたのだろうか。
「よし一旦情報を整理しよう」
捜査課の部屋で鏡崎はマジックを持っていた。日元と雛元は椅子に座っていた。そして鏡崎は情報をホワイトボードに書いていく。
「まず水村とその一派は人に恨みを買いやすい人間だったと」
「はい。教師から見ても好かれている様子ではなかったようです。彼女の両親は医者で、金銭においてもまったく不自由せず。日々豪遊の限りを尽くしていたそうです」
「生徒側の評価も似たようなものです、それと取り巻きにも話を聞いたのですが...」
「なんだ」
「彼らも彼女と彼女の一派のことをそれほど良く思っていないそうです」
「派閥争いという訳か」
「さすがにそうだとしてもやりすぎな気がします...」
「あと、傍で死んでいた男だが...こいつも良い人とは言えない」
鏡崎は机の上に書類を置く。それはインターネットの検索履歴のようだ、何年何月何日何時何分何秒にどのサイトに訪れているかが全て網羅されている。釣り、車、ニュースの中に不穏な履歴がある。
「こいつ、五商明は援助交際等の黒いことをいくつもしていた。殺された日もその帰りだったらしい、店の周りの防犯カメラに映ってた」
「となるとこれは...」
「ああ”ビジランテ”だな」
「頭の中を整理するので私はこれで」
日元が部屋から去り、雛元と鏡崎が残される。
「鏡崎さん...ビジランテって?」
雛元が尋ねる。鏡崎は悲しい表情をする。
「ん?ああ、お前は知らないんだったな」
「雛元...俺達は本当の意味で守るべき市民に向き合えていると言えるだろうか」
「どういう意味ですか...それって...」
「俺達が捕まえられるのはな...法を破った奴らだけ。それも見つけることができた奴だ、ビジランテって言葉の意味は知ってるか?」
「はい、自警団って意味ですよね」
「そうだ、奴は数年前から警察の真似事をして俺達が裁けないような悪党を裁いてるのさ」
「街の不良から政治家、ブラック企業の上司やらなんやら」
「それに一切証拠が出ない。目撃者もいない、カメラにも映らない。指紋DNAも含めてな」
「それに市民は奴を英雄視している。俺達無能が取り締まれない奴らを排除しているからな、それにマスコミも扇動するようなことを書きやがる」
「そ...そんな」
「仕方ないさ...俺達は犯人を捕まえるのが仕事さ、ビジランテもいずれ捕まえるさ」
「鏡崎さん、頭整理出来ました」
「そうか。よしじゃあ行くか」
主人公早く出せるようにします