0.エビローグ
今でも思い出す。彼女のことを...あの日のことを...
「あなた、男に生まれたなら強くいなさい!バカにされたくないなら強くいなさい!」と尻もちをついている僕·幸坂 祐を彼女·寺島 千華は見下ろしながら説教している。この運命の出来事を僕は一生忘れない……
彼女に初めて出会ったのは幼稚園の頃。ひ弱な事を周りに笑われ、泣いていた時に彼女が「強くいなさい!」と声をかけてくれた事がきっかけだ。
強くて、カッコ良くて、頭が良くて、綺麗な彼女。
お金持ちな僕にも叱ってくれたり、遊んでくれた彼女。
そして、.........僕の初恋の彼女。
「君は今何をして、何処にいるのだろう......」ため息をつきながらこの言葉を言うのが最近の僕·幸坂祐 25歳の口癖だ。
大企業の『コウサカソーシャルグループ』。その外交事務長室で大人が椅子に体育座りをしながら、駄々をこねていた。
「無理だよ~!僕にそんなたいそうな仕事できっこない!他に優秀な人はいるんだからその人にやってもらってよ~ん。」駄々をこねているのは、若い男性でルックスは童顔の人だ。「大丈夫ですよ!裕坊ちゃんは優秀です!だから、自信をもって会議に参加しましょ?何かあればこの松原拓也 35歳が何とかいたしますので、お任せ下さい。」松原は裕の世話係兼秘書である。裕は、所有している会社の会議に出ることが「僕は無理だよ!自信がない」と卑屈になり駄々をこねている。
「そんなこと言わずに行きますよ!」と、松原は泣きながら駄々をこねる裕の椅子を引きながら会議室へと向かった。
会議室には、小難しそうな男たちが半円状に数十人座っている。「では、これより定例会議を行います。」と松原が言い、会議が始まった。裕はさっきまでかけていなかった、細ふちメガネをかけながら資料を見ている。雰囲気は、さっき駄々をこねていた人とはまるで別人の様だ。
「お疲れ様でした裕坊ちゃん!もう外していいですよ。」と会議が終わり会議室を出た裕に一緒に出た松原が語りかけた。「あぁ、そうだな。」とクルーにしている裕がメガネを外すと、また別人の様になり「はーーーっ………。終わったよー。疲れたよー。」とヘタれに戻った。するとメガネを受け取った松原が裕に一人事の様に言った。「そういえば、今は何処にいらっしゃいますかね?……寺島様」
丁度その頃、アメリカ某所で大統領と秘書が車に乗り込んでいた。
「なぁ、次は何をするのかね?優秀な我が秘書くん。」と大統領が女性秘書の膝に手を伸ばすと、秘書は「今度は日本有数のグループとの会食です。」と答えながら、大統領の手を捻った。「イテテテテ!ごめんよ。つい、出来心で出てしまったんだよ...……さすが、元CEOで元SPのチカ テラシマくんだよー!いい仕事するねぇ!」「からかわないで下さい、大統領。そんな事よりも、この資料を読んでください。先方の資料です。」「ほぅ。ふむふむ。相手は超大手会社だねぇ……『コウサカソーシャルグループ』かぁ...」
すると、千華は小さな声で「立派になったね... 祐...」と放った...。
この大統領と幸坂 祐の会食で運命の歯車が回り出したのだった……