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お兄様は悶絶です

 寮に戻ったら自分宛に手紙が届いていた。見れば一つはジョゼフ、珍しい事もあると思い、もう一通を見れば思わずにやけてしまった。

「どうした?アラン?」

一緒にいたオーギュストが不思議そうに声をかけてきたが、手を振ってごまかした。

「何でもない」

そのまま談話室に友人達と移動したが、やはり気になって手紙を開封すれば、セシルの拙い文字が綴られていた。その様子に、後ろから覗く気配を感じれば、エリクが楽しげな声がふってきた。

「おや、小さい子からのお手紙か」

その声に、隣で課題の本を読んでいたギョームも覗いてきた。

「もしかして噂の妹君かな?」

顔をあげれば、他の友達も集まってくる様子に、仕方なしに説明をした。

「あぁ、弟と仲良く遊んでるらしい」

もう一枚は大人の字でセシルが何を書いたのか説明してあったので細かい内容もよく分かる。何より最後の文章でとうとう耐えられずに叫んでしまった。

「ぁ〜!!!可愛い!!俺のセシル!!」

机に突っ伏して叫んだら、周りが引いていたが、誰か一人に大人の字で書かれた手紙を奪い取られた。

「何々〜” 大好きな大好きなアランお兄様、元気にしてますか?セシルはジョゼフお兄様と仲良く遊んでます。今日は郵便屋さんの絵本を読んで貰いました。アランお兄様がいなくて寂しいです。早く帰って来てね”」

作った甲高い声でギョームが大きな声で手紙の内容を話した。

「って書いてありますって親切につけてくれてるわけか。それにしても、本当仲良いな、俺の妹と大違いだ」

そう言ったのはエリクだった。

「確かに注釈が無いと読めないな、”アラン”と”セシル”の文字は判別できるけど。」

オーギュストが覗き込みながら言えば、アランは自信ありげに言った。

「当たり前だ!!俺が名前の書き方を教えたんだから!!」

「へー。弟のジョゼフの名前は教えなかったのか?」

「あぁ、そういえば、教えてないな。俺とセシルの名前しか」

 しれっと言ったアランに、一瞬周りの友人達はあることを思ったが、誰も何も言わなかった。手紙には絵も書かれており、拙い人だと思われる棒人間らしき近くにはハートがちりばめられている。

「よし、返信を書こう!!」

「おい、課題溜まってるぞ」

「セシルへの返信が先!!きっと今頃泣いてる!」

そう言って部屋へと戻っていったアランに、友人達は少しだけセシルに興味をわきつつ、将来大変だろうなっと一様に思った。

「会って見たいとか言ったら、殺されるかな?」

「・・・俺は怖くて言えねぇー」

「だよねー」

だが、その言葉によってほんの少しの興味だけだったのに、一気に好奇心が増してしまった。ダメだと言われると余計見たくなるのが人の性だ。




今日は、学園の休日です。寮から出るためには申請が必要なのですが、アランの場合は毎回同じ理由なため事前に外出許可がだされています。いつもどおり、王都の屋敷に戻れば、家族はすでに談話室に集まっていました。

「アラン、おかえり」

シュゼットが息子に声をかければ、他の兄弟も気づきました。

「ただいま戻りました。セシルに手紙を出したいんだけど」

「ふふふ、アランもセシルにお返事ね」

「俺も?」

見れば、みんな手には手紙を持って集まっていたのです。

「みんなバラバラに出すより、まとめてくれってニコラに言われてな」

レオンがそう言いながら、手紙の束をまとめて、執事のニコラが持ってきた箱にいれていった。

「・・・みんなにセシルからの手紙がきてたんですね」

家族の全員セシルとジョゼフ宛の手紙を持っているのに気づいて、残念そうにアランは呟いた。

「自分だけ貰おうなんて、いけない子ね。セシルは優しい子だから全員にお手紙を書いてくれたわよ」

シュゼットは息子の独占欲に気づいて両頬をつまんだ。

「痛いです。お母様」

「嫉妬深い男は、嫌われるわよ」

「わかってます」

むすっとしながらも、アランも執事に手紙を渡した。シュゼットは手紙と一緒に袋に入ったものも一緒に渡している。

「なんですか?」

「これ?」

「「ラパンフラムだよ!!」」

ウジューヌとエドガーが答えました。

「え?」

「俺が選んだんだ!」

「僕とお母様が選んだの!!」

「ちがうし!」「ちがくない!」

「お母様と手触りの確認もした!」

「手触りい!」「見た目も一番可愛いのにした!」

「セシルが抱っこできる大きさなんだよ!」

ウジューヌとエドガーが競うようにアランに報告してきました。

「わかった、大きな声で言わなくても分かるから。つまり、ぬいぐるみ?」

「「そう!」」

「ふーん・・・」

「”僕が一番にあげようとおもってたいのに”って所かしら?」

思っていたことを母親に言われ、アランはむすっとした顔で言った。

「お母様、勝手に言わないでください」

「ふふふ、女の子のお人形はまだあげてないわよ」

「・・・今日は買い物に出かけます。」

「午後までには戻ってくるのよ。午後の予定はずらせないから」

「わかりました。」


 急いで王都のお人形屋さんに駆け込み、セシルが気に入りそうな女の子の人形をアランは探し回りました。小さい子供用の可愛い人形はなかなか気に入ったのが見つかりません。そうこうしているうちに、午後の約束の時間になってしまいました。

馬車の中でため息をつく息子の様子に、シュゼットは楽しげに言いました。

「寮に帰る前に、プレゼント用のカタログを渡すわ。そこから選んでみたらどうかしら」

「うん。友人にも聞いて見ます。妹がいるやつもいるので」

「そう」

ちょっと不機嫌そうなアランの様子に、弟のウジューヌとエドガーは今日は大人しめです。でも、いつも兄に先を越されている二人にとって、兄よりも先に、セシルに先にぬいぐるみをプレゼントできたことが嬉しくて思わずニヤニヤしてしまいました。

「なに?」

「「ううん」」

ニヤニヤしていたら、アランに睨まれてしまいました。二人は同時に首を振ってなんでもない様子を見せてますが。シュゼットはおかしくてたまりません。


そして、城につくと、アランの悩みのタネがまた一つ増えてしまいました。


豪華な部屋で子供だけ集まっていた。そこには、アランの友人アルベールもいた。

「君のもう一人の弟は母親似なんだね」

「あぁ、エドガーの事か。そういえば、そうだね。」

「ふ〜ん」

「なに?」

「いいや・・・きみの」

言いかけたアルベールの言葉は、この部屋の主人に妨げられました。

「アラン!!セシル姫からの手紙は君にはなんて書いてあったの?」

 挨拶もそこそこに、王太子は好奇心いっぱいの瞳で聞いてきました。その言葉にアランは固まりました。3歳以下の子供は、基本親族以外には話すことは滅多にないのですが、セシルのことは特に厳重に親から詳しい話はしないように言われているのです。それなのに、小さな社交場であるこの場所で、妹の話が出たことにアランは一瞬焦りました。

「・・・どうして王太子がセシルの名をご存知で?」

 アランはにっこり微笑みながら、ちらりと弟達を見れば、まずいっと顔をしたのはウジューヌ。エドガーは不思議そうに首を傾げてます。

「ウジューヌに聞いた。なんでもシュゼット夫人に似てとても可愛らしい姫とか!ウジューヌが妹から手紙が着たと自慢してくるんだ!」

「そうでしたか。我が妹は可愛いですよ。ですが、王太子が気にされるほどでも」

「アルベール、エドガーはシュゼット夫人に似てるのか?」

「えぇ、王太子。似ていますよ。ですから、セシル姫は今の所、この兄弟の中でエドガーが一番顔が近いと、私は思っています。」

そう今節丁寧に、想像しやすいように説明したアルベールを思わずアランは睨んでしまった。エドガー自身は、まさかセシルの話から自分まで巻き込まれるとは思わず、みんなの視線を集まりました。エドガーは6歳といっても、まだまだお子様です。中性的な顔だちもあって、まだ可愛い顔立ち、そこからウジューヌが話すセシルの容貌を思い出せば、可愛いことは間違いないっと周りは思いました。それは、王太子も同じで・・・。

「へー・・・エドガーが・・・僕も手紙を書きたい!」

「は?」

「絵姿付きで送るから大丈夫だ」

その発言に、アランは笑顔を忘れ真顔で言いました。

「何が大丈夫ですか。絶対にダメです。」

「アラン、顔が怖いぞ」

楽しげな表情で王太子は言いました。年上のアランが困っているのを明らかに楽しんでいる様子に、他の子供達はハラハラし始めました。

「当たり前です。私の妹はまだ3歳にもなっていない。世間に公表する歳でもない、そんな子に絵姿を送るという意味は、わかっていないわけではないでしょう。王太子様」

「僕は、純粋な気持ちで、顔を知らない人と手紙をやり取りをするのは失礼かな〜って思って絵姿をつけようと思っただけだよ。」

「それならば、手紙のやり取りを行わなければいいのですよ。家族だけで十分です。」

にっこりと微笑みながらアランは告げました。

「セシル姫も、一人領内でさびしいだろうし」

「もう一人弟が一緒にいるので大丈夫です。二人仲良く遊んでいますから」

「へーそうなんだ。でも、二人だけじゃ遊ぶのも飽きてくるだろうし」

「王太子様、久しぶりに剣術の稽古をしましょうか」

「ん?今日はみんなとお話ししたい」

「いきましょう」

アランは首根っこを捕まえて王太子を連れて外へと向かいましました。


「あのバカ、アランをからかいすぎだ」

アルベールは小さくため息をつきながら、二人を見送りました。

「王太子様って、今のわざとだよね?」

エドガーはウジューヌに聞けば、ウジューヌは引くつった笑みを浮かべながらうなづきました。

「あぁ。・・・それよりも、今度の会に俺兄様に絞られる。」

学園に通うアランは7日一回しか顔を合わせることはありません。普段寮生活で課題も山盛り出されるときいているから、王太子様と会った後は、そのまま寮にもどるのです。つまり、しっかりと絞られるのは来週に持ち越しです。

「・・・セシルの話、ウジューヌ兄様いっぱいしてたもんね」

「うぐ」

窓の外では、楽しげな・・・悲鳴のような王太子の声が響いていました。とりあえず、その場にいた他の子供達は、アランの前でセシル姫の話は詳しく聞かない方がいいということを学びました。

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