セシルは騙されました
お祖母様とお外で遊ぶ約束をして、ルンルンで次の日ボールや縄跳びとか持って行ったら、ズボンを履いて、胸当てや腕当てとか色々武装したお祖母様とお爺様とジョゼフお兄様、そして従者の人が何人かいました。
「あれ?セシル?」
ジョゼフお兄様も驚いてます。セシルも驚きです。そういえば、お祖母様はなんのお遊びするか言わなかったです。最近のセシルの外遊びはボール遊びと縄跳びか追いかけっこです。お兄様達と遊ぶです。
「セシル、お祖母様と一緒に遊びましょう」
ニコニコ笑顔でお祖母様が両手を広げました。でも、その足元には、大きい弓と小さい弓、大きな剣と小さい剣が見えます。セシルが遊ぶ外遊びじゃないです、むしろウジューヌお兄様がいつも持って来るおもちゃと一緒です。
「・・・やだ!!」
持ってたボールも縄跳びも投げ捨てで、一目散に屋敷に逆戻りです!!捕まったらきっと無理やりやらされます。ウジューヌ兄様より絶対怖いです。というか、むきむきなお祖母様です。絶対に嫌です。
「セシル!!大丈夫、楽しいわよ!!」
お祖母様が追いかけて来ます。怖いですー。
「あーばあさんや、セシルは・・・って行ってもうた」
「お祖父様、お祖母様に説明はしてないの?」
「した。・・・じゃが自分でやらせてみせると言ってな、優しくわからないように教育しないと無理じゃと伝えたんだが」
「・・・お祖母様って暴走しやすいよね」
「そうかの?」
「セシルますます嫌がりそうですよ。お父様がやっとセシルに外遊びをさせ始めてたのに、外遊びも嫌がったら・・・」
じーっとジョゼフはお祖父様を見上げました。
「わかった・・・わかっておるよ。ばあさんを止めてくるから、レオンには言うな」
「はーい」
ジョゼフはお祖父様の背中を見送りながら、ふと呟いた。
「止めれなかったら言っていいのかな?どう思うコーム?」
ジョゼフは従者の一人、コームに聞きました。
「・・・良いのでは?その前にセシル様がお伝えしそうですが」
「たしかに、お手紙に書きそうだね。」
剣の稽古どうしようかな〜っとジョゼフが思っていると、セシルにくっついて来ていた侍女、エリーナがセシルを追いかけずに、ジョゼフに言いました。
「ジョゼフ様、セシル様をお迎えに行かれた方が良いかと思います。あまりにも昼間怖いことがあると、夜泣きがひどくなるんです。あの状態のセシル様は、基本、奥様かアラン様以外があやすと、ますます酷くなるのですが」
「・・・そうなの?」
「はい。今ジョゼフ様が常にご一緒ですから、ジョセフ様以外はあやせないかと」
ジョゼフは、慌てて道具を置いて走り始めました。だって今一緒に寝てるのはジョゼフです。自分が本当に一人であやせるかわかりませんが、セシルを任されたお兄ちゃんなので行くしかありません。
*
セシルが館の中に入れば、侍女や掃除の人たち館内を綺麗にしてます。その人達の間を全速力で駆け抜けます。
「セシル様?」
「走ってはいけませんよ?」
「ドミニク様?!」
「姫様?」
侍女や従者の人たちの間をすり抜けて、小部屋に逃げ込みました。お祖母様の声が響いてます。来ちゃいます!怖いです。隠れる場所、隠れる場所。周りを見渡せば、箱やタンス、カーテンにソファ、飾り棚があります。
ガラスの飾り棚の下の方は大きな木の棚です。開いたら、セシル一人分入れました。
そっと閉じたと同時にお部屋の扉が開いた音がしました。
「セシル!どこにいるの?」
来てしまいました。心臓がドキドキして痛いです。
「大丈夫、怖くないわ。お祖母様が教えてあげるから。お祖母様、こう見えて強いのよー」
わかります。お祖母様の腕カチンコチンです。抱っこしてもらうとお父様みたいに硬いです。
「セシルー」
「あーいたいた、ドミニク」
「あら、あなた。貴方も探して、セシルが隠れてしまったの。」
「なードミニク、優しく教えるんじゃなかったんか?あんなに必死に逃げて、嫌がってるんじゃから、まだ教えなくても」
お祖父様が来ました、そのままお祖母様を連れてってください。
「教えるわ!!大丈夫よ。それに、見た?!あの瞬発力と逃げ足!!将来有望よ!!まだ一回もやった事ないんでしょ?やれば怖くないわ!!!」
「いや、わしが一回教えたんじゃが」
「それは、教えかたが悪かったのよ。女である私が教えれば大丈夫!怖くなわい!!」
自信満々にお祖母様が言って来ます。大丈夫じゃないです。セシルは嫌です。
「セシル出て来てちょうだい、大丈夫。我が家は火の国の王子の武闘派の家系だから、武器は得意なのよ。セシルはどの武器が得意かしらね〜」
武闘派?!なんですか、それは。セシルは水の国のお姫様みたいにふわふわ、キラキラしてたいです。絵本の中のお姫様みたいに守られたいです!領民のために結界を貼って王子様を待つんです。
「ドミニク・・・レオンが知ったら怒るぞ」
「なぜ?」
「セシルが自分からやりたいというまでは、様子を見ると決めたのはレオンじゃ、それを泣いて逃げるセシルに無理やり教えたと知れたら、どうじゃ?」
「泣いて逃げても、好きになれば大丈夫よ。結果良ければ全て良しよ!」
絶対にお祖母様に近づきません。これは、お祖母様が滞在中に訓練させられるってことですよね?!セシルは嫌です。いつも助けてくれる、ママもいないし、アランお兄様もいないしパパもいないです。セシルはお祖母様がいなくなるまで、この箱から出ません。
「セシルー出てておいで〜」
お祖母様が鬼に見えて来ました。出て来たら食べられちゃうんですよね。きっと!
「はぁ、出るわけないじゃろう。あんなに怯えて逃げたんじゃし」
「貴方も探して!」
「はぁ〜・・・この部屋にはいないんじゃないか、ほら、窓が開いてる」
「あら、結構お転婆さんね、将来有望だわ!」
バタバタとかけていく音がすると、お祖父様の声が近くでしました。
「しばらく、そこに隠れてなさい」
扉が閉まると静かになりました。お祖母様はとっても怖い人でした。お祖父様もちょっと怖かったですけど、なんか違います。圧というか、迫力があります。泣きながら走ったせいで疲れました。
「ママ、パパ」
ぎゅってしてもらいたいです。いないってきづくとなんだか、寂しくなって来ました。うとうとしながらセシルは気が遠くなりました。
*
ジョゼフが館に入れば、中にいた侍女が心配そうに言いました。
「ジョゼフ様、セシル様が先ほど泣きながら走っていましたが」
「うん。お祖母様が稽古しようとして逃げたんだ。」
「そうだったんですね。」
廊下を進んでいけば、すれ違う使用人達がジョゼフにセシルが向かった先を教えてくれます。
そして、廊下で窓を拭いている掃除婦の人は、周りを見てから小声で言いました。
「セシル様は、野原の間に入られてから出ておりませんから」
「わかった。ありがとう」
野原の間に向かって歩き出すと、途中でお祖母様に遭遇しました。
「お祖母様、セシルは見つかりました?」
「ジョゼフ!それが見つからないのよ。どこかしら?子供部屋にもいないし、お部屋にもいないし、みんな知らないっていうのよね」
大きくため息をつきながら、お祖母様が言いました。使用人達はどうやらセシルの味方のようです。
「もしかして、お外に出たんじゃ」
ジョゼフはお祖母様からこの場所から離れてもらうためにいって見ました。
「それは、ないわ。セシルのマナはこの館周辺にしか感じないから」
「そうですか」
「あとはどこかしら、使用人棟はまださがしてないわね、ジョゼフも見つけたら、教えてちょうだいね。」
「はい」
そう言ってお祖母様は去って行きました。しっかりとお祖母様が見えなくなるのを確認すると、ジョゼフはすぐ近くの扉をあけました。ここが、先ほど掃除婦の人が教えてくれた”野原の間”です。部屋の壁紙が、野原の絵になっているためそう呼ばれているんです。
ジョゼフと、従者の一人が一緒に入って扉を閉めてから、小声で声をかけました。
「セシル?いる?」
返事はありません。ですが、小さいすすり泣く声が聞こえました。音をたどっていくと、飾り棚の下の棚から聞こえて来ます。そっと扉を開ければ、丸くなって泣いて眠っているセシルがいました。
「セシル、お兄さまが来たよ。大丈夫だよ」
そういって、セシルを抱き上げれば、泣きながらセシルがしがみついて来ました。
「ママ〜」
「よしよし、もう大丈夫だよ」
「ふぇ〜〜」
「どうやら、眠っているみたいですね。これは起こすべきなんでしょうか」
コームが困ったように言いました。
「お祖母様に追いかけられてる夢を見てるのかな?」
その言葉にますます泣いてしまったセシルにジョゼフは慌てました。抱き直して椅子に座ろうとした時に、ふといつもより体が熱いことに気づきました。眠っているから熱いのかと思っていたのですが、いつもより熱いです。
「どうしよう、コーム。セシルの体が熱いよ」
その言葉に、慌ててコームはセシルのおでこに触れました。
「あー・・・これは熱が出てますね。コンスタンス様にお伝えしないと」
「早く呼んで来て」
「かしこまりました。」
慌てて来てくれたらコンスタンスがすぐにセシルを連れて部屋に戻りました。テキパキと着替えさせてあっという間にベットの中です。
「ジョゼフ様、いったい何があったんですか?」
「お祖母様が、セシルに武術を教えようとしたんだ。それに気づいたセシルが逃げ出したんだけど」
「武術を?本日は、外で遊んでもらえるとセシル様が喜んで、ボールや縄跳びを用意していましが・・・。なるほど、それで、先ほどからドミニク様が探し回られていたんですね」
「うん。」
「はぁ。あの方は猪突猛進なところがあるから・・・わかりました。」
「セシル大丈夫かな?」
「風邪ではないので、大丈夫ですよ」
「でも、泣いてる。」
「先ほどの怖いことを反芻してしまってるんでしょう。手を握っててあげてください」
「うん」
「ママー・・・アランにいしゃまー・・・・じょじょー」
「僕はここだよ。セシル。大丈夫」
「じょじょーふぇ〜」
ジョゼフは、泣きながら眠るセシルと一緒に手を繋いで横になりました。
「では、ジョゼフ様、セシル様をお願いしますね。ばあやは、ドミニク様を懲らしめてまいります。」
「ふふふ、お願いします。」