セシルと水の国の絵本
お祖母様が絵本を持って来ました。
「セシルは、我が国の絵本を読んだことあるかい?」
「ううん」
「いつも何を読んでるんだい?」
「お姫様と王子様!あとうーちゃんのぼうけん!」
本棚を指さしてお祖母様に見せれば、ふむふむとうなづきながら見て行きました。
「やっぱりないね。ちょっとだけお姉さんの絵本をお祖母さんが読んであげよう」
「おねえしゃん!セシルおねえしゃん!」
なんでしょう、ステップアップですか!それはいいですね!読んでほしいです!
お祖母様が文字が多い絵本を広げました。お祖母様の横に座ってみれば、とっても綺麗な絵本です。
****
あるところに、火の国の王子様がいました。
王子様はとっても優しく勇敢で、強いひとでした。そんな王子は領民からも兵士たちからも慕われていました。みんなが幸せに暮らしてくれることが王子様の願いでした。
ですが、火の国はとっても強くて、とっても怖い国でもありました。
王様がとてもよく深く、周りの国を欲しがったのです。火の国は、暑く砂漠の国です。
王様は豊かな森を持っている木の国が欲しくなりました。そして王子様に命令したのです。
”木の国を奪ってこい!”
王子様は最初嫌がりました。ですが、そうすると大切な王子様の友達が捕まってしまいました。助けたかったら木の国を奪うしかありませんでした。奪った国の人は奴隷にされてしまいます。王子はせめての償いとして、恨まれているのを知っていながらも、なるべく多くの奴隷を買い占め、自分の領内へと匿いました。
木の国を奪った王子様に、王様はまた命令します。
”土の国を奪ってこい!”
こないだ木の国を奪って来たばっかりなのにっと王子は反論しようとしましたが、領内にいるはずの両親が行方不明になっていることを知ったのです。
友人は戻って来ましたが、代わりに家族が連れて行かれたのでした。王子様はそごと、土の国も奪って来ましが、ですがやはり王様はまた命令するのです。
”風の国を奪ってこい!”
王子様は、もう他の国を奪いたくありませんでした。王様に不信感があると伝わると、大切な妹が消えてしまいました。王子は泣く泣く、火の国の王様が命令に従いました。
”どうして、他の国を奪う必要があるのだろうか。自分たちの国だけで満足できないのだろうか”
そう悩みながらも、王子様が王様の命令にそむく訳には行きませんでした。王子様の下には領民も兵士も、そして襲ってしまった国の人々を匿っているからです。
”水の国を奪ってこい!”
とうとう、最後の国、水の国も奪うように命令されてしまいました。水の国は遠い場所にありました。そこまでいくのに大変です、自分の領内に何かあったらすぐには引き返して来れません。
王子様は王様に言いました。
”水と火では相性が悪すぎる、もうこれだけ国を奪ったのだから、水まで行く必要があるのだろうか”っと
”何を言う!相性が悪いからこそ、消すべきだ!”
そう王様が怒ってしまいました。これ以上怒らせてしまえば、王子様の大切な人たちも被害に遭ってしまいます。王子様は渋々、水の国へ向かうことにしました。
王子様は、考えました、このまま火の国に自分の領民や匿っている人たちを残して行くのは危険だと。一緒に連れて行こうと決心しました。行商や、兵士の食料を運ぶ人員として紛れ込ませて、王子様は水の国へと進んで行きました。
水の国では、火の国に迎え討つべく、高い塀や堀を作り、大きな川を作り、王都に近づかせまいとしました。
ですが、王子様は炎の剣を抜いて、水を干上がらせ進んで行きます。
ですが、水の王都の目の前に来たところで、王子は進むのをやめました。本当は、王都を超えて、別の土地へと逃げるつもりでした。
目の前に、水の国のお姫様に会うまでは。
”これ以上私たちの国を荒らさないで”
そう言ったお姫様の勇敢な姿に王子様は一目で心を奪われてしまったのです。本当は何も言わずに通り過ぎようと思っていたのに、正直に話してしまいました。
”荒らすつもりはない、私たちはこの先を超えて・・・逃げるつもりだった”
”逃げる?その言葉は信用できると思うの? 最強と言われる火の国の王子”
”そうだろう。私は水の国を奪うように言われた。だが、私はもう罪のない人を襲うのはもう耐えられない。ここまで離れれば、簡単に追っ手は来ないと思ったからこそ、領民や他の国の人たちも連れて来た。”
その言葉に、王子の後ろで隠れるように集まっている人たちを見ました。その人たちは火の国の人特有の赤い髪の毛ではなく、紫や、緑、茶色と様々な色をしていました。
”彼らを先に、あなたは最後”
そうお姫様が言うと、王子はそれを了承しました。
ですが、兵士の中で裏切り者がいました。
王子の逃亡を知って、王様に知らせにいってしまたのです。
王子を殺すべく、王様は刺客を放ちました。そして一緒に水の国も滅ぼすことを命じたのです。
その頃、王子は、美しい水の国のお姫様を毎日眺めていました。水の国を越えるためには、細い橋を渡らなければなりません。何日もかけて、いろんな国の人々を渡らせている中、毎日水の国のお姫様は橋にくるのです。
お姫様が王都の結界を張っていることに王子様は気づきましたが、誰にも言いませんでした。
美しく、優しいお姫様。
ですが、王子はその思いを口にはできませんでした。火の国の人間と水の国の人間は結ばれることが叶わないからです。
火の国の人以外が全員渡りきった後、それは起きました。
王様が放った刺客が来たのです。王子様はお姫様を守るために戦うことにしました。
お姫様はびっくりしました。
王子様が自国の人と戦っているのですから、自分たちの国を襲うのかと思っていたら守ってくれたのです。
その強さに姫様はびっくりしたと同時にうやらましいと思いました。
水の国の人たちは戦いに秀でていません。守りの力が強いのです。
ボロボロになりながら戦い、勝利した王子の姿に、姫様は橋を渡って助けに行きました。
”だめだ、君は橋を渡ってはいけない、戻るんだ”
”えぇ、戻るわ。あなたを連れてね”
そう言ってお姫様は王子様を水の国に迎え入れました。
王子様は、姫様の優しさに、自分の血族が続く限り水の国を守り続けると誓いました。そして、水の国は、いろんな国の人々が暮らす国となり、末長く繁栄したのです。
おしまい
*
セシルは自分の髪の毛を見ました。王子様とおんなじ赤い髪の毛です。
「セシルは火の国?」
「えぇ、私たちマルディ家は火の国から来た王子様の子孫よ」
「ほえーーー!!じゃーここはみじゅのくに?」
「えぇ、ここは水の国、アピードゥディス国。火の国の王子が一目惚れしたお姫様がいた国よ」
「ほえー」
セシル凄いことを知りました。賢くなりました。
「だからこそ、マルディ家は剣を持つ「セシル、お姫様になりたい!みんな 守る!!キラきら!」」
キラキラ青い髪の毛をしたお姫様を指さしながらお祖母様に言ったら、困った顔をされてしまいました。だってお姫様の魔法の結界は水色でキラキラしてるんです。絵本に描かれたお姫様はとっても可愛いです。
「ん〜・・・セシルはそっちがいいのね」
「うん!キラキラ〜みんなまもるー!」
「・・・そう」
「王子様、おにいしゃまたち!!セシルお姫様!」
「まー・・・確かにそうね〜ん〜」
お祖母様は困った顔をしてます。どうしてでしょうか?
「セシル。お姫様は戦うことも知らないとダメなのよ」
「どうちて?」
「守るためには、どんな攻撃があるのか知らないといけないの」
「んー」
確かにそうですね。でも、怖いのは嫌です。
「明日、お祖母様と一緒に・・・・んーお外で遊びましょうか」
「お外?遊ぶ!!」