女子高生と一緒に寝るべきだ
あなたが感じている通りの事が起こっています。
一般論として、あまり回りに気付かれないようにした方が良いでしょう。
死んだときのペナルティはわかっていません。
なるべく死なないようにしましょう。(死んだことがある人は追記お願いします)
wikiのトップにはこういう注意事項が書かれていた。
その他知られているクラスの取得条件、使用感など。
運と敏捷を上げる方法を知りたかったが現状不明らしい。
まあ、本当に重大な事が見つかったらこんな所に書かないよね、とは思うけれども。
コメント欄に、エルフなどの一部の種族は、成長値を運に振れるようです、と書いてある。
普通は振れもしないらしい。大半の人の運はまだ100だということか。俺は120だ。幸運にも。
最初の方で想像した通り、物理攻撃を沢山すれば攻撃が上がり、攻撃を受ければ防御が上がり、魔法を使えば魔法攻撃が上がり、魔法を受ければ魔法防御が成長するということはほぼ間違いがないらしい。
だとすれば運は一体何で上がるのか。わからない。
他に、勇者オーグメンティンの為に作られているという地図の最新版が載せられている。
何だ、結局スタープレイヤー同士の争いなんかする気は無くて、公然の協力関係という感じなのか。
さっきのサイキッカーのシュウみたいにPKをしてくるヤツは少数派と考えて良いのではないか。
まあ、俺喜んでPKするし! と誰も、わざわざここに書きはしないだろうけど。袋叩きにされる。
さて、今日はぽよぽよの大会の決勝なのである。
行くべきか、行かざるべきか。
かなり悩ましい。
というのも忘れているかもしれないが、他の時にした予選で、βテスターが一人堂々と姿を表したという話だった。
相手が強力なプレイヤーであった場合、ないしは悪意のあるプレイヤーであった場合、顔を知られてしまう事になるのは、避けたい。
「まあ、名乗らなきゃ良いか」
耳にドリームウォーカーオンラインを付けて街をうろうろするような奇行をしない限りは、あるいは例えば車に轢かれて無事とか、高いところから落ちて死なないとか。
そういうアホなことがない限りバレはしないような気がする。
行ってみるか。
なんせ賞金が出るしな。
なんたって女子高生が待っているのだしな。心強い味方になるかもしれない。味方にしたい。俺は強く思う。
だいたいどんなヤツか観察してから、「実は俺ってβテスターなんだけど」って切り出せば良いのだ。
俺はシャワーを浴びて、歯を磨く。
黒シャツと紺のジーンズから、別の黒シャツと、黒のジーンズに、着替えた。
自転車で15分かけて、駅前のゲームセンターに向かった。
で、果たしてその女子高生は居た。
長い黒髪で、紺色で長袖の制服、スカーフは紅色、そのスカートは言うまでもなくミニスカートだ。
彼女は、オーバーニーソックスの足を、俺が入ってきた時に組みかえた。
ちょっと痩せすぎで不健康そうな印象も受ける。腰までの長い髪を右側に流している。
下まぶたの外側半分にピンク色のラメ入りのアイシャドウを入れてある。大人っぽいメイクのようだが嫌らしくはなく、寧ろ少し幼く見える。
15、6歳くらいか。
左耳には、長髪のせいでわかりにくいが確かに、ドリームウォーカーオンラインの端末をかけている。
その猫みたいに見開かれた目で。
俺が自転車を担いで店内に入っていった時、彼女は射るような視線で店の入り口を凝視していた。
俺を見て急に表情を変えた。目を細めた。
「あっ、クランに入らなければならない」
その顔を見て、俺は一つの事がわかった。
現実世界でも観察という行動ができるのだ。すっかり忘れていた。
そしてそう気付いたその時、クランに所属した方が良い理由がはっきりとわかったのだ。
何故って、人がいっぱい集まるのでモンデンキントたちみたいにパーティを組めるからという理由だけじゃない。
もう一つ重大な理由に俺は気付いていた。
現実でどんなに隠れても今みたいに「観察」されたらゲームの中でどういう存在なのかバレる。分かってしまう。
俺たちは人間の体っていうわかりやすい弱点を抱えているのだ。ゲームをしている間すやすやと眠っている。これを誰かが襲撃してこないとも限らない。
ゲームで敵対関係に有るやつとかが。
普通そこまでしないと思いたいが。
理想的にはクランで固まって住んで、交代で寝ずの番をしてもらうのが、一番効率が良いはずだ。
つまり、この女子高生とは一緒に寝るべきだ。
いやいや。
で、たぶん俺がダークエルフである事はバレている。
彼女はにこにこしている。こちらに手など振ってきている。
だがお返しだ。俺も観察してやる。
<PC> ぽよぽよ レベル42 16歳♀
種族:ピンクスライム
勢力:魔
クラス:賢者
クラスレベル:19/100
レベル42は高すぎちゃうかと。
そして、16歳と。
賢者と。
ピンクスライム。
ぽよぽよ。
可愛い。
天才か。
彼女はレースゲームの椅子に座っていたのだが。
立ち上がって寄ってきた。紺色のミニスカートがたなびく。なんだこいつ。
危険だ。相手はレベル40台のスライム相当の攻撃力を持っているのだぞ。必要以上の接近はよせ。目の下のシャドウ。子供っぽいリップ。俺の胸に警戒信号か単なる緊張かわからないけれども何か危険な予感が現れる。自分の体が自分でない感じ。判断力を取り戻そうとしているうちに抱きつかれた。
「つかまえた」
つかまりました。
ちょっと短めかもしれませんが話の切れ目なので。