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第二章・42


「あっぶねぇ・・・・ 」


「俺と足止めしてくれた堅に感謝しろよ? 」


 僕が冷や汗をダラダラと流しながらそう言うと、息を整えた英雄が続く。

この足元に転がる死に損ないだが、僕の背後から奇襲を掛けて来たのだ。

それも土の中からと言う徹底ぶりだから性質が悪い。


 流れとしては、僕が合体した球体に対して火魔法を準備している所に背後から近付かれ、警戒に当たっていたフロウがそれに気付き報告。

慌ててサイドステップでその場から飛び跳ねると、先程まで立っていた場所へ、モグラが通った後の様に土を盛り上げながら何かが近付いていたのだ。

この時僕は奇襲を回避出来た上に、穴から出て来た所を叩けると考えていたのだが、この部品、流石はあの糞野郎の道具であった。


ほんっと忌々しい事に、このトンネルすら魔法で作ったフェイントで、本命は避けた僕の右側から迫っていたのだ。

視角的に丁度それを見ていた英雄が声を上げ、こちらへ向かい走ってきた事でそれに気が付く。

隙を生じぬ二段構えにまんまと踊らされた僕は、飛び出してきた上半身へ、半ば自棄になりながら準備していた『ファイアーボール』を叩き込むが、勢いの付いた体当たりを喰らって後ろへ転がった。


病室と言い今回と言い、何故今日はこんなに衝撃力のある攻撃ばかり受けるのだろうか?

流石にそろそろ吐くぞ・・・・


 ぐわんぐわんと揺れる視界で、堅が球体に攻勢を仕掛ける姿と、僕を襲った上半身が英雄の持つ両手剣で真っ二つにされている事を眺めながらそんな事を考えると、大きく息を吐いてまた吸い込む。


立ち上がると同時に自分へ回復魔法を掛けて軽く頭を振ると、止めを刺した英雄が声を掛けて来て、冒頭へと至ったのである。


「助かったよ、ありがとう。 」


「おう、悪いがもうひと頑張りしてくれ。」


僕がお礼を言うと、こちらが大丈夫であると判断した彼は申し訳なさそうに言う。

それに頷いて返し、僕はもう一度魔法を練り直す。


「援護は任せたぞ。」


英雄はそう言うとバスターソードをポーチに仕舞い、代わりに片手剣と円形の盾を出して、球体へと走り出した。

魔法と言う飛び道具の所為で、圧倒的なリーチの差から防戦一方の堅はようやく来た英雄を見ると嬉しそうに口角を吊り上げる。


「待たせたな。」


「本当に待ったわ・・・・」


「うん、僕の所為で何か本当にごめん。」


 今度こそ攻撃準備に入った僕らは、タイミングを計りながら球体を睨みつけた。

こちらが体勢を整えた為か、相手側も行動する事無く睨み合いが続いている。

1体ずつ減らした場合と連結部分の球体を狙った場合では、どちらが早く倒せるかと考えていると、僕の正面に立ち、左腕に盾をはめた英雄が駈け出す。

それに僕と堅も反応し、攻撃を開始した。


「くっ『レイ! 』」


英雄の後方から生身の人間には効果の無い光魔法を放つ事で援護するが、流石にガス欠寸前だ。

身体から少しずつ力が抜け、息が上がる。

威力も今まで以上に弱くなり、役立たずになるのも時間の問題だろう。

そうやって内心で焦りを募らせていると、2人もそれに気が付いているのか、武具に光を纏わせて走る。

その姿に迷いは無く、純粋に格好良いと思ってしまう。

元男としてあれに置いて行かれるのは非常に悔しい。


 そんな事を考えていると、彼らは球体の懐へ飛び込む。

打ち込まれる魔法の数々を英雄は盾で往なし、放火が集中しなくなった堅は足捌きと体捌きで華麗に躱していく。


僕もあんな戦闘がしたい。


「堅、少しだけ耐えててくれ!! 」


「またか!? 」


 英雄の叫んだ提案に堅が軽く抗議を上げるが、そこは長年の付き合いか素直に協力してくれた。

2人は猛攻の中、やっと詰めた距離を惜しみなく手放すことを選んで後ろに下がる。

僕は照射中の魔法を、英雄へと向いている個体だけに絞って嫌がらせを開始し、堅は軽く距離を詰めて、打ち込まれる石や闇で出来た槍を回避した。

その中に氷の槍まで混じり始めた時は流石のあいつも慌てたらしく、跳ねる様な全力の回避行動へ移っている。

良い攻撃を何度も入れたから最も警戒されているのだろうが、あまりに火力が集中し過ぎて不憫に思えるのだ。

これが終わったら、しっかり労ってやろう。


 肝心の英雄は左腕の盾を外し、片手剣を仕舞う。

後ろから見ていた僕は気でも狂ったのかと軽く心配したのだが、それは杞憂に終わる。

あいつは残した盾の縁を右手で掴み、魔力を流して白く発光させると、それをブーメランの様に球体へ向かって投げたのだ。

投じられた小盾はフライングディスクの様な形をしている為か綺麗に空を飛び、人型の顔を目掛けて飛んで行く。

進路上にいる球体は迎撃のために行動しようとするが、それは僕がさせない。


「やらせるか! 」


光線を向ける事で目を潰し、防御のタイミングを失わせる。

撃ち落とす事を諦めた一体はそのまま両腕を顔の前で交差し、頭部に直撃するであろう盾に備える。

その姿を見て僕は軽く舌打ちをするが、それは予想以上の結果を生み出す。


盾は防ごうとした両腕事、人型の頭部を千切り飛ばしたのだ。


あまりの出来事に、僕と視界の端に映る堅が口を開けながら眺めていると、正面の英雄が戻って来た盾をキャッチして佇む。

その時、自信に満ちた横顔がチラリと見えて、僕の胸がトゥンクと弾けるが、それはこいつに対してでは無い。


「ふ、これからはキャプテン・ヒデオと呼んでくれ。」


 広く逞しい背中を持つイケメンが後ろ姿でそう言うと、もう1度僕の胸が強く打つ。

実は僕があのチームの中で一番好きなのはキャプテンだったりする。

あんな強くて真っ直ぐな人になりたかった。

中身はどうあれ、あれに近い動きをされた事できゅんと来たのは許してほしい。


「てめぇ、露骨なアピールすんな!! 」


「こっちはお前みたいにいつでも魅せられる訳じゃねぇんだよ!! 」


馬鹿共が怒鳴り合うが、その声は嬉しそうで、お互いにやる気が漲っている。

それは僕自身もそうで、自然と笑みが零れた。


 肝心の球体だが、予想通り頭部を破壊されたら、機能は完全に死ぬらしい。

盾に千切り飛ばされた人型は力なくぶら下がっており、下にいる別の人型が鬱陶しそうな顔をしていた。


ざまあみろ。


 内心でほくそ笑んでいると、こちらの方にも限界が来た。

僕の攻撃に回せる魔力が切れたのだ。

残りは防御に使う分だけである。

 光線の照射が止まった事で2人はこちらをチラリと見るが、戦えなくなった訳では無い。


「ごめん。」


「気にするな、向こうも1人減ったばかりさ。」


僕が謝ると、英雄がそう返す。

すると堅がおどける様に聞いて来た。


「手はあるんだろ? 」


「勿論! 」


力強くそう返すと、彼らはこちらを見ないで頷く。

2人とも良い所を見せたのだ。

そろそろ僕も良い格好をしても文句は言われないだろう。

そう考えると1度深呼吸し、アイテムボックスから出した剣と盾を構えて英雄の隣に並ぶ。


「キツイなら下がる事、近接戦はそれが条件だ。いいな? 」


「それなら今日は戦えるね。」


隣に立つ親友へそう返すと、溜息を吐かれる。


「英雄、その馬鹿に何を言っても無駄だって。遊馬、燥いで転ばない様にな。」


「散々転げまわった後だっての。」


 呆れながら言う堅に対して、何を今更と言った風に返す。

この場では上空の使い魔君しか知らないが、僕は最初の拘束を抜ける段階で転がっているのだ。

不敵に笑う僕に、彼らは仕方ないと肩を竦める。


「それじゃあ、もう1セット行ってみようか! 」


僕の声と同時に、数度目となるこちらの攻撃が始まった。



―――――――――――――――――――――――――――――



 俺は隣で飛び込むタイミングを計っている遊馬を見ながら、回収した盾にまた魔力を込める。

弱っている筈なのに、近接戦が出来るからか生き生きして見えるのは怒った方が良いのだろうか?

まあ、言って治るのならとっくの昔に治っているので放っておこう。


チャージの終った武器を右手に構え、俺は心の底からこの攻撃を教えてくれたブロンズ上がりたての子に感謝していた。

あの時、体力ギリギリまで付き合わせた事が俺達の命を繋ぐかもしれないのだ。

彼には御礼として、当たり障りのないプラフィの生写真を数枚進呈しよう。


「先に行くね! 」


 そんな事を考えていると、隣の遊馬が迷い無くチチリの羽を生やして空を駈ける。

俺としてはあいつが接敵する前に二撃目を叩き込んでしまいたいのだが、どうやら辛抱出来なかったようだ。

だが実際問題として、もう1度同じ事をしても攻撃が通る自信は無い。

どうするかなと悩んでいると、あいつが球体を挟んだ向こう側へと移動した事で妙案が浮かんだ。


「遊馬、出番だぞ!! 」


 そう叫んで盾を投げ、球体上部に生える人型のギリギリ上を通過させた。

相手は勿論迎撃に動こうとするが、コースが自分に当たらない事を見抜くと、こちらへと反撃の準備をする。

数体が反撃の為にこちらへ手を伸ばすが、それこそが俺の狙いなのだ。


おとりは無様に転げ回る1人だけでない事を知れ。


成功を確信しながらも、回避の為に行動しようと腰を落とすが、そこはあいつの方が早かった。


「ナイスパス! 」


俺の放った盾を空中でキャッチした遊馬は、そのまま体を回転させ、文字通り体全体を使う事で、さらに勢いを付けながら盾を投げる。


「らぁっ! 」


 投じられたディスクはこちらが回収できるギリギリの速度で人型へと進み、呆気ないほどあっさりとその身を断ち切る。

目の前で鮮血が走り、辺りを満たす血の臭いが更に濃くなっていく。

流石に2人目は堪えたのか、直撃を受けた1体が地面へ沈むと同時に、球体の面々が苦しそうに身を捩りながら下がった。

千切れて地面へと落ちた人型は腕立て伏せの要領で体を起こそうとしていたが、場所が悪い。

大球が引く事で空いたスペースへ、堅が一気に走り込んだのだ。

迷いの無い右足刀は首をへし折り、完全に機能を停止させる。


残りは11体。

こっちの体力も削られていくが、相手の手数も減っていく。

奴等の目に、少しずつ困惑や恐怖の色がちらつく度、全身を熱いものが走った。


 2人とも気が付いているだろうか?

さっきから俺達が優勢の度、笑っている事に。

こうやって命のやり取りをするたびに考えるのだ。


『ああ、自分は今全力で生きている。』と。


成長を感じる戦いの度、つくづく自分は現代で生きられないのだと実感させられる。

年を取るにつれ、ディスプレイの奥で繰り広げられる冒険譚を作り物だとどこかで理解し、子供の様に全力で集中出来なくなった俺が、あの頃以上の充足感や満足感、達成感などを強く感じているのだ。

形は違うかもしれないが、それはあの2人も同じだと思う。

もっと長い間、この感覚を味わいと心の底から強く思うが、俺達にそこまでの余裕は無い。

余裕が無いからこそ楽しいのかもしれないが、負けてしまっては元も子もない。


 鋭角に投げられた為、少し前の地面に刺さった盾を引き抜き、軽く息を整えると正面を見る。

そこでは堅が数回目の突撃を行い、あいつの一撃を警戒する大球の反対側からは、空中の遊馬が斬り掛っていた。

上から強襲し、確実にダメージを蓄積させるのだから相当に嫌な攻撃だ。

これを投げるなら今だろう。

俺の動きに気が付いた人型が他の連中へ声を掛けているが、嫌がらせの様な攻撃で完全に集中が出来ていない。

遊馬は極力殺したくないし、堅は目を離すと一撃が怖いのだろう。

今度は胴体部へ向かって容赦なく盾を投げつけたのだが、さすがに対策を練られていた。

ギリギリのタイミングで空中へ現れた氷の壁が、盾を弾いたのだ。


「ナイスアシスト!! 」


 この手が通じない事に軽く舌打ちをして別の武器を取り出そうとしたのだが、そこへ遊馬から嬉々とした声を掛けられる。

何事かと思い視線を少し動かすと、勢いを削がれたがまだ空中に残る盾を足場にし、上部の人型に対して突っ込もうとしている馬鹿あすまの姿が見えた。

何を狙っているかは分からないが、あんなに楽しそうに戦っているのだ。

惚れた弱みからか、やらせてみたくて俺は迷わず手斧を取出し、もう1度胴体へ向かって投擲する。

俺の攻撃は新たに現れた氷の壁によって止められたが、どうやら十分な隙を作る事に成功したらしい。


 そこへ遊馬が一気に駈ける。

あいつは魔力で強化しながら補強込みの盾を勢い良く蹴飛ばすと、進路上にいた人型へと迫り、持っている剣を突き込んだ。

腹部を刺された奴は死にこそしなかったが、あいつはそれに構わず、刺さった刃を軸にしながら方向を転換し、中部に生える個体の首を股で挟む。

少し羨ましい。


「らああああっ!! 」


遊馬は雄叫びを上げながら、飛び掛かった際の勢いと自分の体重と、更に体を捻る事で生み出した力を掛けてその首をへし折る。

捩り折る際に、まだ意識しないと動かせない羽をしっかりと使っていたので最初からこれが狙いだろう。

攻撃が終わると、何事も無かったかのように空中へと脱出しようとしたが、追撃の魔法が例の気持ち悪い手だったので、あいつは青い顔をしながら全力で逃げ出していた。


 そして一連の攻防を見た堅が走り、中部から生える別の個体へと追撃を掛け、俺は新たに取り出した投槍を使って下部にいる人型を狙う。

投じた槍は防御に使った両腕事胴体を貫くが、殺すには至っていない。

攻撃した相手がこちらを嘲笑するが、俺だって今までの無力なままでは無いのだ。

遊馬ほど大胆ではないが、刺さった以上は確殺する技を先輩方から仕込まれている。

半ば決まった事を確信しながら口角を吊り上げ、槍の中に仕込んでいた魔力を共鳴させた。

返り血で彩られてはいる灰色の無骨な槍がそれとは違う色で赤く明るく染まりだす。

異変に気が付いた人型がそれを抜こうと暴れるが、両腕と胴体は槍の中ほどにあるので、どう頑張っても抜けはしない。


「喰らいやがれ! 」


人型が怨嗟の声を俺に向けようとした所でこちらも叫び、それと同時に爆発が起こった。

集中していた為か、開けた口から呪詛では無く喉から上った炎を吹き出す姿が鮮明に映り、次の瞬間には耐えきれずに爆散する。


 逃げ遅れた堅が軽く爆風に煽られていなければ完璧だろう。


「すまん、本当にすまん!! 」


「次、気を付けろ! それと遊馬の添い寝権1回な!! 」


心の底からの謝罪を受け入れた堅の申し出に、俺が苦々しい思いをしながら頷くと、


「何で僕なんだよ!? 」


 足場にした盾を持ち、隣へ羽ばたきながら降りて来た遊馬に怒られた。

それを受け取りながら俺はさっとこいつの顔色を見る。

つり目が凄く可愛いのだが、それより気になる事として肌の色が大分青白くなり呼吸が荒い。

表情に出していないが、そろそろキツイのだろう。


堅の奴がしっかりと1体仕留めているので残り8体。

実は病室襲撃時・・・・から隠れてこちらを覗っているカリーナさん達に援護要請をするべきか悩むが、その判断をする前に遊馬が動く。

もう少し落ち着きがあっても良いと思うんだが、確かにここで譲るのは勿体ない。

俺は改めて両手剣を取り出すと、護衛対象の癖にまた近接格闘を仕掛けようとする馬鹿を追掛けるのだった。



―――――――――――――――――――――――――――――



『主様、そろそろ危険域です。戦線から離脱してください。』


『姉さん、仕掛けるならこの一撃までにしてくれ。次以降は絶対に無しだ。』


『・・・・わかった。』


 有無を言わさぬ2人の言葉に僕が渋々頷くと、家族たちは『約束したからね? 破ったら怖いよ? 』と言った雰囲気で調整作業へ戻る。

その時ルルが軽く唸り、チチリが威嚇してきた事が一番怖かったです。


僕が離脱するのであれば、次のセットで最低でも2体は仕留めないと後が厳しいだろう。

仮にそれが出来たとしても6対2なのだ。

単純計算しても3倍差である。

こいつらの場合は集合体なので少し違うが、数の圧倒的有利さについては自分の正面と後方等、2方向から同時に襲われた場合を考えればどれだけ危険か分かるだろう。

堅の教えと現代の実戦とうそうげきとブレスタ○ンアイコンで身を持って知っていた僕に隙は無い。


高校時代、正面から迫る荒縄持ち変質者(クラスメイトA)に気を取られ過ぎて、背後から来た眼鏡好き変質者(クラスメイトB)が持つ麻袋に入れられた時の絶望は心に大きな傷を残したのだ。


だからこそ最低限2体は倒す事を念頭に置きながら踏み込むと、英雄が僕を追い越して行く。

歩幅が違うので仕方ないが悔しい。


僕もあんな鍛え上げられた肉体が欲しかった・・・・

超回復とかプロテインとか1年間いろいろ試しても駄目だったのだ。

その度に周りから『それでいい。』と温かな笑顔を向けられる悲しさを僕は忘れない。


過ぎ去りし思い出に心の中で泣いていると、魔法による迎撃がこちらを迎え撃つ。


「こんな所で終れるかっ!! 」


 叫ぶと共に羽ばたく事で空中へ逃れると、足の下を鋭利な土杭が通り過ぎる。

次いで飛来する氷の槍は羽を畳む事で回避し、惰性によりロールしながら体勢を整えた。

追撃は無かったので身体が下を向いた所で翼を広げると、力強く羽ばたいて高度を取る。

どうやら他に魔法が飛んでこなかったのは英雄と堅のお蔭らしい。


相手の手数が減った事で2人は今までより自由に動けるようになったのだ。

そりゃあ僕1人にかまけている暇はないだろう。

単純な火力なら、あいつらの方がずっと高い。

今のうちにしっかりと自分の仕事をさせてもらおう。


 目標の上空を旋回しながら息を整えて下を見る。

先程腹部に剣を突き立てた奴と目戦が合い、次の目標を決定した。

わざわざ元気な奴を狙う事も無いのだ。

タイミング良く英雄がバスターソードを構えて向かったので、僕もそれに続く。


「上は任せろ!! 」


「墜とされるなよ!! 」


こちらも仕掛ける旨を伝えると、彼からそう返ってくる。

勿論そのつもりだ。

目に物見せてやりたい。


「俺の胸ならいつでも良いからな!! 」


 反対側から接近を始めたけんが何か言っているが、おそらくは相手の気を引くための挑発だろう。

聞かなかったふりをして高度を上げ、バッグから僕の体がすっぽりと覆える鈍色の大盾を取り出す。

この肉厚過ぎる鉄板は、僕の筋力ではとてもじゃないが使えたものでは無い。

無いのだが、空を飛べるからこそ使える方法が有る。

訓練での命中率は低くお蔵入り決定の攻撃方法だったが、こんなでかい的なら外しはしない。


「行けえええええええええ!! 」


重い鉄板に引っ張られる事で僕は下を向き、それを構えたまま人型へと突っ込む。

盾に覆われている為前方は何も見えていないが、板越しに何かが勢いよく当たった衝撃と音が響く。

恐らくは相手から放たれた魔法だろう。

至近距離で鳴り響く高い音に耳がおかしくなりそうだが、幸い抜けたものは無い。

自重と加速が乗った一撃を容赦なく叩き付け、盾越しにひき肉を作る感触を感じるとそれを手放し止まらずに離脱した。


ある程度距離を開けて振り返ると、そこには盾が突き刺さり、その下からおかしな方向に曲がった人型が顔を覗かせている。


「よし!! 」


 予定より威力が出た為か、本体の球体部分にまで大きな裂傷を作っていた事に気が付き、僕はガッツポーズをしながら体勢を整えた。

そんな僕を他所に、衝撃の為か動きの鈍った相手へと2人が迫る。

先に取り付いた堅の光を纏った右肘が人型の鼻頭へと吸い込まれた。

その一撃は容赦なく頭部を破壊し、体を入れ替えながら左前蹴りを本体へと叩き込む。

裂傷から鮮血が飛び散り、彼は満足そうに距離を開けた。

 続く英雄は飛来する土杭を紙一重で避けながら近づき、赤と白の2色に発光するバスターソードを振り下ろす。

だが、僕と堅の攻撃に晒され弱っていた為か、球体は慌てて後ろへと下がる事で英雄の一撃を回避した。


「くそっ! 」


「英雄一旦引け!! 」


それを見ていた僕が悪態を吐き、後ろへ下がった為に攻撃などで隙を作れない堅が叫ぶ。


だがあいつの顔は笑っていた。


「貰ったああああああっ!! 」


英雄が叫びながら地面へ刃を落とすと、そこで込めた魔法を解き放ち起爆させる。

僕も堅もあいつの行動の意味が全く分からなかったのだが、それは時間差で発動した。

斬り付けた先の地面から、魔力で出来た光の刃が斜めに伸びたのである。


「わっ!? 」


「眩しっ!! 」


その光がかなりの強さを持っていた為に、僕らは驚きの声を上げて顔を逸らす。

閃光が収まり慌てて相手を視界に入れると、そこには今の1撃だけで2体の人型を失い、残る身体も酷く焼け爛れた球体の姿があった。


『何今の!? 超格好良いんだけど、僕にも出来る!? 』


『主様、まだ戦闘中ですよ! それに約束通り引いてください! 』


 見るからに必殺技的な攻撃を見せられて興奮しない男の子はいないだろう。

プラフィに怒られて渋々と地面へ降り立つが、未だに興奮は冷めやらない。


「おいおい、お前がパワ○ゲイザーを使ったら、素手で戦う俺が困るだろうが。」


「安心しろ、俺は大剣で使ったからパイル○ライバーだ。」


軽口を叩き合う彼らが羨ましい。

僕も前に進むためには、この体の事を受け入れなければならないのだろうか?


「これで遊馬も俺にメロメロだな。」


「おい、添い寝権忘れるなよ? 」


うん、まだまだ男のままでいいや。


残り4体


これは勝機が見えたかな?


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