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第二章.31

ルルに身体を揺すられてゆっくりと目を覚ます。

頭の上で聞こえる寝息に気が付いて上を見ると、そこには堅の顔があった。

おそらく僕が酔って寝た後に運んでくれて一緒に寝たのだろう。

真ん中にある自分のベッドで飲んでいた筈だが、添い寝回避は失敗に終わったようだ。無念。

身体を起こして別のベッドを見ると英雄はまだ寝ている。

そして自分を見て驚愕した。

(ちょっと待て、なんで下着なんだ!?)

着ている物を見て大失態にも気が付く。

(これって昨日のやつじゃないか!! これで一緒に寝たって事は汗臭かったんじゃ!?)

あまりの恥しさに震えながら俯く。

『主様、そこは1人の女としてまず下着が乱れていないか、と先に考えるべきでは?』

プラフィからの突っ込みを受け、慌ててショーツを確認するが、全く問題なさそうだ。

『というかプラフィ見てたよね? 何か問題はあった?』

『いいえ、全く問題はありませんでした。無さ過ぎて逆にもどかしいぐらいです。』

無くて良いんだよ、僕らの場合は。

とりあえずは危機を脱したと知って安堵すると、座っているルルを抱きしめてわしゃわしゃと撫で回す。

心を落ち着けるとシャワーを浴びて自分だけ先に準備を済ませた。

すこし胃が重かったが飲み過ぎたかな?



「へっ、これだからチェスタ○枠は駄目なんだ。俺と遊馬はクレ○枠とミ○ト枠をしっかり押さえた公認カップルだから後は心配するな。」

「うるせえ! チ○スター馬鹿にすんな!! 宿屋に泊ると滅茶苦茶努力して経験値稼ぐじゃねえか!! 」

「回復に召喚術・・・僕はミン○なの? クラ○スなの?」

準備が終わった僕らは朝食前に恒例の馬鹿話をしている。

オプション装備として、英雄がルルを、堅がチチリを撫でていた。

手持無沙汰な僕はプラフィの羽や尻尾を撫でたのだが、2人から『プラフィがエロい顔してるから止めろ。』と言われて、ベッドに転がっている。

またこうやって3人で話せる幸せを感じ、枕に顔を押しつけながらくすりと笑うと、話の輪に戻る。

「どう考えてもミ○トだろ?」

「ああ、清純派ヒロインという当時の俺達の夢が詰まってるからな。」

凄く良い顔で2人は僕に言うが、敢えてこちらからも言わせてくれ。

「仮にミン○枠だとしてもさ、後2ヵ月以内にユニコーンと会えなかったら、清らかな乙女を卒業させられて積むんじゃない?」

その言葉に彼らは固まりこちらを凝視する。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「否定しろよ。せめて何か言え。そもそも性格はファ○かル○ティだろ? 昔から僕はイケルイケルって進んできた事は、お前らが一番よく見てきただろうに。」

溜息を吐いてジト目で睨むと、彼らは優しい顔をしながら英雄・堅の順で答えてくれた。

「大人になってわかるフ○ラの良さってあるよな。」

「いろいろ出来る様になって考えられるようになるとさ、ああやって振り回されるのも悪くは無い。」

気持ちは超分かる。良い子だよね。

そして結局否定の言葉は頂けなかった。処女でいられるのはいつまでだろう。

この先僕だけ1人部屋を取ってフロウ達に警備してもらった方が良いかな?


そんな馬鹿話を続けていると時間が経ち、朝食を終えてギルドに向かう。

現状僕らの最優先課題は堅の魔力操作で、次いで装備品周りだ。

アイテムボックスや回復薬ポーション類は予備の物を回せば問題ないが、ボロボロの装備で魔物を殴らせるわけにはいかないので、こっちも出来れば急ぎたい。

とりあえずはイヴァンさんに揉んでもらおうと思ってギルドへ連れて来たのだが、今日のここはいつもより物々しい雰囲気に包まれていた。

僕と英雄は首を傾げ、掲示板に張られている緊急情報を見て頬が引き攣った。

「何もこんな時じゃなくても良いだろうに・・・・」

「方角が精霊の泉側だね。とんだオマケまで付いて来たみたい。急ごう。」

「えーっと『瘴気の影響により魔物の大量発生が確認されました。街の外に出る際は気を付けてください。』意味は分かるが、これと俺達に何か関係があるのか?」

僕らの苦々しい言動に堅は首をひねる。

「まだ登録をしてない堅なら問題は無いんだけど、僕らはある程度実績も出ているから近い内に編成される討伐隊に組み込まれると思う。」

「要は暫くの間、お前の面倒を見てくれる人間がいないって事だ。最悪の場合は俺か遊馬に欠けが出るしな。」

「おいおい、着いて早々それはねえだろ。俺は戦力にならないのか?」

状況を理解した堅の空気も鋭くなる。


魔物の大量発生は出来る限り早く対処しなければ何が起きるか分からない。

たった1日の遅れが上位種を発生させた事例もあり、ゲームの様にイベントだと笑うことは出来ないのだ。

基本的に魔物の数が多く乱戦になるので、僕も英雄も生きて帰れる保証はない。

流れ弾や、対峙した相手との実力不足等、考えられる不安要素はいくらでもある。


「置いてけぼりってのは無しだぞ? 魔力さえ使える様になれば、お前の壁ぐらいにはなれるからな。」

堅が真面目な顔で僕を見る。

実力が無い訳では無い為、判断に悩んでいると、後ろから声を掛けられる。

「アスマ、迷っている所悪いが、その新顔にも参加してもらう。」

振り返るとそこにはイヴァンさんが立っていた。

「イヴァンさん、確かに堅は戦力になります。ですがこいつはまだギルドの構成員でもなければ、人はともかく魔物との戦闘経験は浅いんですよ?」

英雄がそう言うと、イヴァンさんは考えるように頷く。

「だがなヒデオ、現状だとケンだったか? は昨日の模擬戦を見るだけでもお前らの中で一番技量が高い。事実お前達2人の取った戦法は、実力者にケンを当てる事だったから理解も出来ているだろう。」

「それはそうですが・・・・」

『それでも実戦は危ないのでは?』と考える英雄の気持ちは良く分かる。本音を言えば僕も参加させたくない。ただの実戦なら兎も角、危険度の高い戦いなのだ。普通は悩む。

「あの、少しいいですか。」

「ああ、何だ?」

僕らが渋い顔をしていると、先に堅が動く。

「イヴァンさんでしたよね? 昨日レフリーをして頂いた時から明らかに実力が高い方だとは思っていましたので単刀直入に聞きます。その戦いへ参加するまでに、私を出来る限り鍛えることは出来ますか?」

堅の言葉に、イヴァンさんは嬉しそうに頷いた。

「さすがお前らの連れだな。安心しろ、元からそのつもりでこっちも調整してきた。討伐隊の正式発表は今日の午後で、出発は明後日だから明日の昼まではみっちりと教えてやる。お前の場合はとにかく魔力をしっかりと操作できるようになればそれだけで戦力になれるから心配するな。」

ニヤリと笑う彼を見て、堅もしっかりと頷く。

こいつの顔が嬉しそうなのは強くなれるからか、置いて行かれないからかは分からないが、イヴァンさんがしっかりと能力を見た上で連れて行くと言うなら大丈夫だろう。

「堅、良いんだな?」

「ああ。そもそも、お前らが死地に飛び込むのを見て1人だけ待ってろと?」

英雄が確認をすると堅が答える。

それを聞いて僕らは苦笑する。

確かに僕らは我が儘だから、1人で待っているなんて絶対できない。

「決まりだね。イヴァンさん、堅をお願いします。」

僕がそう言うと、イヴァンさんは『任せておけ。』としっかりと頷く。

「アスマ、お前はジナイーダの所に言って話を聞いて来い。あと、フロウはこっちに出しておけ。こいつらと一緒に鍛えておく。」

そう言うと僕らはそれぞれ行動を開始する。

フロウを含めた4人は訓練所へ向かい、僕はジナイーダさんを呼びにカウンターへ向かった。


「アスマ、今回貴女にお願いしたい表向きの仕事は参加者全員のサポートよ。」

ジナイーダさんと合流した僕は訓練所の個室ではなく、内緒話で散々お世話になっている個室だった。

他にも、アズレトさんとアデリーナさんにアドリアーナがいる。

「表向きの内容で既にブロンズの範疇を超えていると思うのですが?」

僕がジナイーダさんの言葉にジト目で返すと皆に苦笑された。

「言いたい事は分かるけど、返事は裏の仕事を聞いてからでも遅くないわよ?」

彼女が悪戯っぽく、くすりと笑うのを見て僕は覚悟を決める。

絶対厄介事だよこれ。

「裏の仕事については俺から説明しよう。実はな、この街に王国の工作員(・・・・・・)が潜入している。」

アズレトさんからもたらされた斜め上の情報に僕の背中が冷える。


王国とはこの国の西にある人類至上主義の最低な国で、お話に登場する様な悪い王様と貴族が納める地だ。

人以外に人権は無く、人であっても平民には人権が無い。

特に女の扱いは酷くて有名だ。

他国の集落へ侵略した際に、男は遊び感覚で虐殺して、女は年齢問わず陵辱した後に殺して回った事件はある意味伝説になっている。

少し調べれば胸糞悪い事件が山のように出てくる国だ。


「この街は国境の近くでもなければ腕利きのギルド構成員も多くいる、向こうからしたら危険地帯ですよ? 何でそいつはここへ?」

僕がそう聞くとアズレトさんは苦々しげに答える。

「少し前にアデリーナ達が捕まえた別の工作員から聞き出したんだが、どうやら人攫いのコネクションを造ろうとしているらしい。警戒の強い国境沿いよりも、離れた所で少しずつ構築しようとしているそうだ。論理の崩壊した奴や方法を問わずに金が欲しい奴はどんな国にもいるからな・・・・」

クソッタレが。

あまりにも見下げ果てた考えに本気でイラつく。

アデリーナさんに視線を送ると、彼女も本気で嫌そうな顔をしていた。

全員が亜人種PTである彼女達からしたら、あの国へは憤りしか感じないだろう。隣のアドリアーナも目付きがかなり鋭くなっている。

「さて、本題に戻ろう。アスマ、今回お前にはその工作員を釣り出す為の餌になってもらいたい。」


どうやら本気で取り組まないといけない仕事の様で、体の芯が熱くなるのを感じた。


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