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第二章.14

ヒロインの外堀を重機で埋める作業が少しずつ始まったので、俺は身の保全とちょっとした悪戯心から遊馬をマレフィさんに預ける事にした。

ここ等でガス抜きさせておかないと、いきなり掌を返して、あいつを誘拐しかねないからだ。前回のマネキンが五感全てをリアルに再現させているのはその為だろうから、今のうちに軽く遊ばせておかないと後の反動が怖い。

ぶらぶらと街を回り、3時間ほどして宿に帰ったのだが、これは失敗したかな?


部屋に入ると遊馬によく似た美人がトロ顔でベッドから駆け寄り、俺に抱き付いて来た。プラフィが何とも言えない視線でこちらを見ている事から、やはり本物なのだろうか?

「プラフィ状況を説明してくれ。」

俺の胸に顔を摺り寄せて、嬉しそうに匂いを嗅いでいるピンと立った灰色の狼耳・・が生えた美女を撫でながら言う。気持ちよさそうに涙目をトロンと細めるのが可愛い。涎が出ない程度に口がだらしなく開いていて、むせ返る様な犯罪臭を感じ全身を電気走る。部屋に入った時から、耳と同色の尻尾・・をブンブンと振っているが、どうしよう?

「あの、今英雄様に甘えておられるのは間違いなく主様です。その尻尾・・は我々が普段行っている力の譲渡を応用した方法で、今はルルが担当しています。」

それで狼パーツなのか。それは分かった。次だ。

「じゃあこいつの格好は?」

獣人がいるから獣娘が抱き付くぐらいは問題ない。俺も遊馬も軽いケモナーだ。まったく問題は無い。今は自室だからいいが、他の人間に見られて一番困るのはこいつが下着姿だという事だ。黒の上下なんてそのまま押し倒したくなる。

「元々今日はその下着だったのですが」

そうか、持ってたのか・・・・こいつ、わざと教えなかったな? 後で問い詰めてやる。

「英雄様の退室後、マレフィ様に脱がされてその姿に。そのまま嫌がる主様を拘束し、神の強権を使い我々に力を譲渡させて様々な姿に変えると同時に弄びだし、さらには一時的な肉体改造を施したのです。」


待て、本当に何があった?


「唯でさえ元々無かった部分を触れられて敏感に反応されていた所へ、無理矢理感度を上昇させ、追い打ちをかけた結果が今の主様になります。途中から言葉も話せなくなりました。」

プラフィがおずおずと遊馬の通信用魔道具を差し出して来たので、促されるままに動画を起動すると、とても眼福な光景が広がっていた。


『むり”ぃ!! もぅ、やめで!! はねさわっちゃやああぁあぁぁ!!』

『ふふふ、羽は駄目なの? じゃあ、この可愛い尻尾なら良いのね? ほーら、どう?』

マレフィさんが遊馬に生える艶々と光沢のある黒い羽を掌で弄るのを止め、尻尾を付け根から舐める攻撃に移る。

『ひゃああああっ!? うあ、あ、あーうぅぅぅ。』

尻尾の先をパクリと咥えた所で遊馬が完全にダウンする。

『あらあら、少しやり過ぎたかしら? でも駄目よ、まだまだ寝かさないわ。』


その後も暗黒面に堕ちた女神が遊馬を撫で回している映像が流れていた。すでにトロ顔なので、これの前にも相当嬲られていたのだろう。まだ痴態は続いているが、遊馬が『あー』とか『うー?』とか、だいぶ反応が薄くなってきたのでとりあえず止めておいた。後で最初から見る事にしよう。


「今のは私が譲渡していた時の映像です。」

プラフィの言葉を聞いて納得する。

(それで艶のある羽と悪魔チックな尻尾が生えてたのか。いいなあれ。)

俺に抱き付く遊馬を見ると、映像の時を思い出したのか、虚空を見ながらブルリと震えてウットリとしている。これ治るんだよな?

心配になって証人を見ると、その後の顛末を教えてくれた。

「あれから2時間ほど調教されていたのですが、その後部下である神人の方々に見つかり、他の神の力を持って強制退去させられました。手伝って頂いた神様が薬を置いて行きまして、1日もすれば大分ましになると仰っていましたが、暫くは人目に見せない様にしておくのがよろしいかと。」

俺は迷わず頷く。今のこいつを見られたら今までの様な悪乗りでは済まないだろう。間違いなく消しに来るやつが出てくる。何としてでも秘匿せねば。こういう時は自由業で、部屋に尋ねてくる人間がいないのは助かる。

そうやって色々と考えていると、遊馬が俺の腕を引っ張り、ベッドへ連れて行こうとする。

「どうした、遊馬?」

「あー・・・・えへへへ」

尻尾を振りながら嬉しそうに笑う彼女を見て、俺はこのまま付いて行っても大丈夫なのかプラフィに確認するが、問題ないと頷いたので、とりあえずは好きにさせる事にした。

遊馬は俺に抱き付きながら一緒にベッドに転がると、俺を上にして両足で腰に組み付いて来た。

「プラフィ、説明してくれ。」

「マレフィ様による調教の賜です。そのロックを外すとあの方に滅茶苦茶にされてしまう為、言われるまで決して離そうとしないのです。」

なんてもん仕込んでんだ、あの毒婦。

実際、遊馬の拘束はかなり強い。疲れない様に適度に力を抜く事で持続時間も考えられている。軟らかい足の肉が俺の腰回りを包み込む事でいけない気持ちが昂る。

「うー?」

それに気が付いたのか、遊馬が俺の下腹部を見て妖しい声を出すと、そのままトロ顔で『良いんだよ?』とでも言う様に頬を赤く染めて微笑んできた。

「英雄様、既に肉体改造の効果は切れていますので、絶対に本番はさらないで下さいね? 手や口なら問題ありませんが、もし記憶が残っていた時の事を考えると大変危険ですので気を付けてください。」

どうしようもないじゃねえか!! ここまで来てお預けはねえだろ!!

だが無理な物は諦めるしかないので、俺は鋼の精神で自制を掛ける。

「遊馬、この足は外して良いぞ。」

言葉は理解できているようで、頷いた後に両足を腰から離してくれた。惜しいな・・・・

期待するようにこちらを見る親友の頭を撫でてやると、とても嬉しそうにするのだが、背徳感とか獣欲とかが突破しないのは偏にこいつの香りで自制心を強化しているだけだ。この体勢だと惚けた口と、涙を溜める瞳が良く見えて、俺の理性を容赦なく破壊しそうになる。

遊馬は俺の撫でている方の手を両手で優しく包むと、それを顔の方に持って行き、指を咥えた。美味しそうに俺の指を一本一本舐める様は酷く蠱惑的で、最後の一線を越えそうになる。

(落ち着け、まだ駄目だ、駄目なんだ・・・・これで覚えてれば合法的に外堀を埋められる。それどころか本丸の中に監禁出来るかも知れない。耐えろ。)

獲物の口から指を抜くと透明な糸を引き、ぷつっと切れ落ち遊馬の口元を汚す。それを自分の指で掬い、咥える様を見せつけ、挑発的に微笑んでくる。

(本人にその気は一切ないんだろうな。)

プラフィが濡らしたタオルを持って来てくれたので咥えられた手と遊馬の口を拭きながら少し悲しく思っていた。

「なあプラフィ、俺が来るまでに時間があったはずだよな? その間はどうしてたんだ?」

だいぶ落ち着きを取り戻した俺は、ずっと気になる事が有ったので、彼女に確認をしたのだが、まあ予想は付いていた。

「はい、マレフィ様を習い、私の出来る範囲で対応させて頂きました。大変乱れて可愛かったですよ。」

艶やかに笑って答えてくれたのだが、俺はそれを見れなかった事が純粋に残念でならない。

「向こうから映像記録が来るのを待つか。」

あの神々の事だから隠し撮りぐらいしてるだろう。期待して待っていよう。

で、問題の遊馬なのだが、さっきから俺の首元など、肌が見える所に吸い付いてキスマークを付けている。いいなこれ。

「プラフィ、もう少し楽しみたい所だがこれ以上やると俺が外に出られなくなるんで、何か方法は無いか?」

狼耳とセットで頭をわしゃわしゃ撫でながら彼女に聞くと、すぐに対応してくれた。

プラフィが遊馬の耳で何かつぶやくと、そのままコテンっと眠ってしまったのだ。

「魔法で眠らせました。少し強めにかけたので、暫くはこれで大丈夫かと。」

俺はその言葉に強く頷くと迷わずシャワーを浴びに向かった。通信用魔道具を持ってである。

(こいつが水の中でも使えて良かったぜ。)

プラフィに視線で『今度見せてやるからと心配するな。』と言うと、彼女は嬉しそうに頷き遊馬の中へと消えて行った。

(さて、俺は自分を鎮める事にするか。)

昂った体の重い足を引き摺り、俺は熱いシャワーを浴びながら動画を楽しむ事にした。


翌朝隣を見ると、丸めた体全体を布団に包み、羞恥に震える可愛い生き物がいた。


俺の完全勝利だろう。


「おはよう。」

布団越しにそう言うと、中にいる生き物はビクリと反応する。楽しい。

「いやらしかったぞ。」

下卑た笑いを張り付けながらそう告げて、顔を洗いにベッドから降りると

『ぅぁぁぁぁ』

と気持ちの良い悲鳴が聞こえた。これで弄るのは最高に楽しそうだ。



僕は覚えていた、女神に遊ばれた最初の1時間を。

僕は思い出していた、邪神に弄ばれた次の1時間を。

僕は忘れられなかった、プラフィと英雄に自分から迫った2時間を。


死にたい。


「ほら、いつまでそうしてるんだ。早く起きて顔洗ってこい。」

準備を終わらせた英雄が声を掛けてくる。

今日までは休日の予定なので、昼頃までこうしていようと思ったのだが、空腹を感じて昨日の昼から2食抜いている事を思い出した。

ゆっくりと被っている布団から頭を出し、震える体をそっと持ち上げて、親友の方を振り返ると、上裸だった。

「笑うなら笑えばいいさ。英雄、頼む・・・・僕を殺してくれ。」

「いや、涙目でそう言われると興奮するものもあるけどさ、まずは俺の格好に突っ込もうぜ?」

今度はどんな思い出を作ってくれるんだろう?

心が壊れないと良いな。

「見てくれこの首元。赤くなってるだろ?」

「ああ、昨日僕が着けたもんね。しっかりと覚えてるよ。」

力なく微笑むと非常に困った反応をされた。すまない、今の僕にはそれほどの気力が残っていないのだ・・・・

「・・・・とりあえずさ、シャワー浴びてこいよ。」

軽く泣いていたから目が腫れているのだろう。このまま外に行くのは要らぬ誤解を招くので、僕は頷くと何も考えずに風呂場へと歩いて行った。プラフィから『着替えは昨日のうちに用意してあるから心配しなくても良い。』と言われたので、何も考えていなかったのだが、もっと早く眠らせてくれても良かったのではないかと聞くと、素直に謝って来たので許した。

(まあ、あんな状態の相手がいたら悪戯の1つや2つはするもんね。)

自分がハズレを引いた事に軽く運命を呪うと、僕は切り替えるように深呼吸をしてシャワーを浴びるのだった。


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