第二章.2
「問題無い様ですね。まずこれが今回の成功報酬となります。魔物の討伐報酬と素材の売却金はこちらです。」
僕達は無事に街へと帰り、魔術師ギルドの受付で報告をしていた。
予想通り、多めに採取物を提出した事で群生地を潰していないか魔道具を使って調査されたのだが、勿論3人とも問題無しだ。
受付のオジサマ(渋い声のナイスミドル)は僕達を感心しながら見回し、代金を渡してきた。男の頃からこういう人には憧れたが、今見ると破壊力が違う。素敵。
英雄の視線が少し冷たいが、気にしない事にした。
ギルド合同で行われる仕事の報告先は必ず受けたギルドでする必要は無い。
今回の様に、冒険者ギルドで受けた仕事を魔術師ギルドへ報告してお金を貰う事が可能なのだ。魔物や素材は人類共通の敵と資産なので、どのギルドでも報酬を貰える。
エゴールは魔術師ギルドへ登録しており、構成員はここからギルド間への仕事を発注する事で払う側は割引が付くらしい。
「お二人とも、今日は本当に有り難う御座いました。おかげで来月まで潜らなくて済みそうです。」
マンドラゴラを大量に採取してきた彼は、ここに入るなり錬金術仲間から色々と声を掛けられていた。どうやら話に聞くよりも評価の高い縁起物だったようだ。
嬉しそうな彼を見ると、僕達も頑張った甲斐がある。
「こっちも、色々と美味しい思いが出来たからお互い様だよ。」
「まったくだ。今後とも御贔屓にしてくれ。」
3人で笑い合うと、エゴールは工房に戻る為にギルドを出て行った。師匠や仲間への報告が有るらしい。それを見送ると僕達も宿へ帰った。
「おう、ヒデオ、アスマお帰り。どうだったって聞くまでもねえな。」
カウンターのマルコヴナさんに満面の笑みを向けると、向こうも楽しそうに頷いてくれた。自分のお客さんが成長していくのを見る事が楽しいらしい。
食事や湯浴みを済ませて今日の成果を置く。
「しかし、改めて見るとすげえ額だな。」
「そうだね。レッドベアには全然届かないけど、僕達がチクチク狩っていた時より多いよ。1日でこれならだいぶ余裕が出てくるね。」
自然と口角が上がる。このままお金を貯めて行けば、旅の準備を始められそうだ。
「新しい街が楽しみだな。頑張って稼ごうぜ。」
「うん、ランクも頑張ってシルバーまで上げて、規制エリアに入りたいね。」
英雄の言葉に僕も頷き返す。
この世界には危険度が高く、一般人では入る事の出来ない地域が有るのだ。しかし実力のあるギルド員であればそこへ入る事が出来る。冒険者であれば、そこでの仕事などもある事から、このギルドを選んだのだ。実に楽しみである。
「毎回この稼ぎは無理だろうけど、1週間もすれば部屋が分けられるね。」
僕が笑顔で言うと、英雄は拳を握りしめて頷く。
「そうだな。」
何故そんなに残念そうなのだ。もう1つの案を切り出して良いか僕はかなり迷う。その一瞬をついてプラフィが現れ英雄に言った。
「英雄様、主様は1人1部屋では無く、2人部屋にしようとお考えですから大丈夫ですよ。」
そう、それが代案だ。いきなり2部屋にすると料金が跳ね上がる上に、1人となる為防衛に少し気を使わないといけない。この体は誠に遺憾ながら女なのだ。せめてベッドが2つの部屋に変える事で英雄の肉体的負担を減らそうと言うのが目的である。
「一緒のベッドに寝てる奴が何を今更って言うかもしれないけど、英雄からしたら結構切実な問題でしょ?」
英雄がとても嬉しそうに頷く。
「そうだな、まずはベッドが増えるぐらいで良いよな。」
下心が丸見えである。元男だからこそ彼の気持ちが分かってしまい、怒るに怒れない。
「体は女でも心が男の事は忘れるなよ? お風呂付が良いから、部屋は隣かな。」
「ああ、その前に稼ぎを安定させる事を忘れるなよ?」
実を言うと忘れていたので目線だけを逸らせて頷くと、英雄に溜息を吐かれ、プラフィに笑われた。彼女は話が終わると姿を消し、僕達はこれからの可能性に心を躍らせて寝る事する。
翌朝
「さて、普通に起こすのもなんだか芸が無いよね。何か面白い案はある?」
僕は据置き機のゲームが主流なのでエロゲなどは評価が高いバトル物を何点か遊んだだけだ。学園物は遊んでいないのでこの手のネタを探す時に苦労する。
「そうですね、主様が子供の様な声で甘えて起こすのはどうでしょうか? 例えば、英雄様の上に跨り、甘えた声で『お兄ちゃんおっきして』と言えば効果は抜群かと。」
僕はそのシーンを考えて、あまりの恥しさから両手で顔を覆う。顔が真っ赤になっている自信が有る。
英雄はそっちやアニメにも手を出していたから喜ぶかもしれないが、自分がやれと言われるとハードル云々のレベルではない。
仲間内で年上と年下、どちらが良いかと言う問題から始まった、性癖の暴露大会を思い出す。
(あいつはこの起こされ方を全力で熱く語っていたな・・・・リアル妹が小さな時に似た様な事をしてくれたのが始まりだったかな?)
今はもう会えない友人に思いを馳せる。
「どうやらお決まりの様ですね?」
「しないよ!! っていうかプラフィそれって僕達側の知識でしょ!?」
彼女は『何の事でしょう?』とでも言う様、上品に笑う。
「ちなみに君が相手を落とす時に本気でその演技をしたら、効果はあるの?」
本当に使えるのか猜疑の視線を向けると、彼女は余裕そうに答えた。
「あら、勿論ですよ。私は淫魔です。まだお見せした事はありませんが、本気になれば相手の望む年齢に変化しますので、そう言うのが好きな男に幼児体型で現れてこれを参考にすれば間違いなく抱かれますよ。」
過去の事を思い出すかのようにウットリとした艶やかな表情を見て、僕はゴクリと喉を鳴らす。
「あれ? でもそれじゃあ僕がこいつにやると唯危ないだけじゃない?」
幼児体型ではないし、英雄にもそう言う趣味は無かったはずだが、それ故に僕の悪乗りに悪乗りで返されて、致してしまうのでは? と思い彼女を見ると微笑み返された。
「その時は私がお止めしますので安心してください。」
え、本当にやるの? やらなきゃ駄目?
「まあ、精神的に痛みを伴う悪戯だと思えば良いか。見ているのも僕達だけだし。」
一番の問題は、僕がそんな恥ずかしい思いをして、こいつが無反応な場合だが、それは考えない事にした。男は度胸だ。
「行って来る。」
「検討をお祈りします。」
僕は仰向けに眠る英雄のお腹に跨る。腰の辺りは、危険な物が有るので今は無理だ。
(重かったらごめんよ。)
一度深呼吸をして、軽く揺すると反応が有ったので、僕は恥ずかしさを噛み殺して続ける。
「ぉ兄ちゃん・・・おっきしてぇ・・・・」
噛まずに言えただけでも頑張ったと思う。僕の体は羞恥で震え、茹で上がった様に真っ赤になり、涙目になっていた。
英雄が驚愕の色を張り付けて僕を見ている。
「英雄様、夢ではありませんよ。本当に主様が跨り、妹シチュを実践されたのです。」
妹シチュとか言うな。
「ぅ、ぁ・・・・」
何とか俯くのがやっとだった。
そして凄まじい速度で、太ももの側面を英雄に掴まれる。
「ひ、ひでおさん?」
僕はそーっと顔を上げると、目の据わった親友と視線が交錯した。
慌てて逃げようとするが逃げられない。
「プラフィ助けて!!」
「何処へ行こうというのだね?」
英雄が起き上がり、僕は入れ違いに仰向けになる。この体制は・・・・・マズイ!!
「まったく、妹ポジに手を出すなんて俺は最低の屑だな。」
「自分で言うなってうわぁ!? 太腿を擦る―ひゃあ!?」
慌てて身体を捩ろうとするが、股に英雄の胴体が有り、両足は腕に捕まる事で下半身が完全に固定されていてまったく意味が無い。お尻を撫でる手つきが嫌らしい。
「お兄ちゃん、なんて言うのかな・・・・そう、心までおっきしちゃったんだ。考えても見ろ、美人が悪乗りに失敗して、寝起きに自分の上で萌えセリフを蚊の鳴くような声で一生懸命紡ぎながら羞恥に震えているんだぞ? 我慢できるか!」
「おい、当たってる! お尻に当たってるってば!?」
腰が上向きなっているので、密着している『こいつ』が僕の腰より少し下に当たる。固い。
「先の方だけ、先だけだから。」
「信じられるか!!」
(そもそも、その顔を見てどうやって信じろと言うんだ!? 誰か助けて!!)
僕の願いが神に通じたのだろう、通信用魔石がコール音を鳴らす。
「見られているようだな。お前、守備範囲を広げたのか? まあいいさ。続けるぞ?」
ふざけんなああああああ!!
放置している魔石がけたたましくコール音を鳴らしていたが、こいつの言葉を聞いたとたんにピタリと止む。
「どうやらマレフィさんは見て楽しむようだな。諦めろ。」
「ジーザス・・・・・」
「お前、仏教徒だろうが。」
英雄の手が僕のベルトに伸びる。片手で器用にバックルを動かし外された。
今の拘束は片方だけである事に気が付き、全力で抵抗を始める。
「ぱ、パワーが違いすぎる・・・・」
そして呆気なく撃沈した。
ファスナーを下ろされ下着が顔を覗かせる。
(大丈夫だ、相手にもよるが下着ぐらいなら恥ずかしくない。)
どんな時でも決して諦めるな。自分の仲間を信じろ。
そう考えて、頼みの綱であるプラフィを見ると、彼女は頷いてこちらに近づいて来てくれた。
「英雄様、その辺で止めて頂かないと関係修復が大変ですよ?」
その言葉に暴漢がピタリと止まる。
「え、でもここまで来て―」
「精神面は勿論ですが、それよりも大きな問題があって、子供を産める云々の前に、今の主様はまだ身体が出来ていません。このままされると激痛により悲鳴を上げるだけで、感じる事はありませんよ?」
僕は真っ青になる。
「主様の記憶で、お2人が軽い物であればそういった押しの強いプレイが好きな事は存じておりますが、このまま続けるとかなりハードな事になりますので、私個人としては止めておく事をお勧めいたします。」
「「・・・・」」
沈黙が重い。重いが頑張って口を開く。
「今なら許そう。」
「すまなかった。さすがに抱いた相手が悲鳴しか上げないのは無理だ。」
拘束が解かれて僕は自由になる。その言葉に嘘がない事は彼のコレクションから知っている。
無言でお互いを見ると、彼は洗面所へと向かい、プラフィは僕の中へ戻った。
「そうか、今抱かれるとそんな悲惨な事になるのか・・・・・」
あまりの悲しさから一筋の涙が零れ、不覚にも早く女になりたいと思ってしまった。




