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第一章.33

「新しい子は2種類ね・・・・もうどちらを呼ぶか決めたの?」

水晶の置かれた個室でジナイーダさんは召喚本を見ながら聞いてくる。

「まだ決めてないんです。最初の3体は悩まなかったんですが、この2体は正直難しくて・・・・英雄とも相談したんですが、時間も無かったので保留にしました。」

僕は新しく追加された『鬼』と『吸血鬼』の事を考える。

「なるほどね、鬼は近接戦闘で、吸血鬼は後衛からの魔法攻撃が主体か。確かに貴方達のPTじゃ悩むわね。近接にはヒデオが、後衛にはアスマがいるからどちらにしても被ってしまうもの。」

彼女は苦笑いしながら本を返してくれる。

「吸血鬼の純粋な魔法攻撃は助かりますけど、日中に少しだけ制限を受けるのがネックなんですよね。」

バランスで言うなら後衛が増えた方が良いのだが、この条件の為に僕達は渋っていた。

「まあ、それは追々詰めていけばいいわ。とりあえずはこの子達を呼べるように訓練をしましょう。どちらにしても基礎は必要だしね。」

僕は彼女の言葉に頷き、水晶に手を置くと魔力を送り込んだ。

「そう言えば、森で貴女を助けた時の事なんだけど」

ジナイーダさんが訓練中にふと思い出したように口を開いた。ちなみに訓練は続けたままだ。

「その時にね、血を使って治療する事を提案したのはプラフィだったのよ。その時にあの子、片言だったけど言葉を話したわ。人型ならもう少しで会話が出来るんじゃないかしら?」

僕はその言葉に目を見開く。呼び出した彼女達とは是非話してみたい。

「もし会話出来る様になったら、あの子からも意見を聞いてみたら?」

それを聞いて、僕は嬉々として練習量を引き上げた。


「お、おい、大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」

隣に座る英雄に『気にするな』と無言で頷く。

頑張り過ぎたのだ。魔力が枯渇一歩手前になり、僕は青くなっている。

「無理しなくていいんだからな? 楽しみなのは分かるが、焦らずゆっくり行こうぜ。」

そう言われて宿まで運ばれる。体が重い。

「夜食は軽くして、明日の朝シャワーを浴びるよ。」

「ああ、そうしろ。」

お通夜の様な雰囲気で食事を終えると後ろから聞こえる

『ヒデオの野郎、まさかアスマちゃんに酷い事を?』

『まさか、嘘だろ? 泣き叫び嫌がるあの子に下卑た笑いを浮かべながら拘束して、致したとでもいうか!?』

『ヒデオ、俺の思いは届かないのか・・・・』

こんな感じの会話は全て聞き流し、部屋へと戻る。そろそろこいつの貞操も危ないな。

「ごめん、汗臭かったら言って。頑張ればお湯を浴びるぐらいの余裕は出て来たから。」

僕はベッドに腰掛けて英雄に言う。

「気にしないで良い。さっきも言っただろ、無理するなって。ほら、今日はもう寝ろ。」

英雄は気を使ってくれているのか、満面の笑顔で言ってきた。

なぜ今そんな顔を?普通は心配そうな表情だろ?

僕はそのままベッドに入り、英雄は浴室へと向かう。明日からはちゃんとペース配分を考えようと決意を固め、眠る事にした。


それから3日後、目を覚まして準備を整えていると、体の中から暖かい感覚が溢れる。その理由が何か分かっていたので、僕は迷わず彼女を顕現させた。

「おかえり、プラフィ。庇ってくれて本当にありがとう。」

そう言うと、こちらを見て微笑んでくれた。またこの笑顔が見れるのは嬉しい。

「ただ今戻りました、主様。」

僕は彼女が喋った事に驚いて目を見開いた。プラフィは悪戯に成功したのが嬉しかったのか、口元を手で隠して上品に笑っている。

「喋れる様になったの?」

「はい、主様お蔭です。本当に有り難う御座います。」

僕の質問に頭を下げてくる。

「良かった。あ、言葉遣いとか呼び方だけど、もっと砕けて良いよ? それに僕の都合で勝手に呼び出したんだ。怒ってないの?」

そう、召喚の特性としてずっと考えていた事だ。解除状態にしても、結局は僕の心の中にいるのでは、故郷に帰ることは出来ない。マレフィお姉ちゃんから『詳しくは説明できないけど、気にしないでも大丈夫』とは言われていたが、家族や友人と引き離されて恨んでいない筈が無い。

「やはり気にしておられましたね。その事ですが、英雄様を起こしてから一緒に説明した方がよろしいかと思います。ご安心ください、私もルルもチチリも全く気にしていませんよ。それどころか感謝しているのです。さあ、詳しい説明の前に、まずは彼を起こしましょう。あ、言葉遣いは追々という事で。」

不安が無いと言えば嘘になるが、今はその言葉に頷き、英雄を揺すろうとして止まる。

「主様?」

彼女はどうしたのかと首を傾げている。

「ねえ、プラフィ。朝から美人に起してもらえたらこいつも嬉しいんじゃないかな? 前に似た様な事言ってたし。」

僕がそう言うと、なるほどと頷いて、代わりに起してくれた。

「英雄様、おはようございます。朝ですよ? お起きになってください。」

妙に艶やかでエロい声に僕はゾクリとする。

親友は聞き慣れない声に少し警戒して起きるが、声の主を見て固まる。

「え?プラフィ? ・・・・・もういいのか?」

少し困惑気味に声を掛けるのが見ていて楽しい。

「はい、怪我も治りましたし、この通り会話も出来る様になりました。さあ、主様がお待ちですよ。」

ようやく事態を理解したのだろう。幸せそうに彼女へお礼を言うとベッドから降り、こちらを向く。

「やったな、遊馬。」

「うん。頑張った甲斐が有るよ。」

僕達は笑い合って、英雄は洗面所へと向かった。


「さて、何処から説明しましょうか・・・・」

2人とも準備が出来たので僕達はプラフィから少しだけ説明を聞くことにしたのだが、聞く事が多すぎて、彼女も僕らも困っていた。

「とりあえずさ、勝手に呼び出して大丈夫なのかどうかを教えてもらわねえか? ある意味召喚士にとって永遠の命題だろ。これの内容次第で日本人は胃が死ぬ。」

僕は沈痛な表情で俯いた。もし皆の生活を破壊してたらどうしよう。

「そうですね。ではそれから説明しましょう。」

プラフィの明るい声を聞いて顔を上げる。彼女は微笑んでいて見た感じではあまり引きずった様子は無い。

「実を言うとですね。主様に呼ばれる私達ですが、皆一度死んだ者達なんです。」

困った様に、だが、少しの楽しさを含んだ声でそう告げられる。だからこそ理解できなかった。彼女は何を言っているんだと。

僕は思考が追い付かず英雄を見る。彼もこちらを見てきたので聞き違いではないだろう。

「驚かれるのも無理はありません。私達は一度死に、魂だけの状態となった所を主様に拾われて、もう一度生を受けたのです。この時に選ぶ基準は私達側にありますので、みんな好きで主様から召喚されます。ですから無理矢理呼んだという事はありませんので、気になさらないで下さい。」

その説明を聞いて心の底から安堵する。良かった、最悪の行いは回避していた様だ。

「ねえプラフィ、僕に自分の意志で拾われたって言ったけど、召喚出来る種族が少ないのは何で? 純粋に相性が合わないから? それとも単に実力不足?」

そう、一度死んでから回収されたという事は、もっと多くの個体がいる筈だ。

「私達は付いて行く際に、召喚者の魂を間借りします。契約が結ばれるまではそこに待機していて、選んで頂けると完全に混ざり合い、お力になる事が出来るのです。

そしてこれは相手が召喚士でないと出来ないので、主様の場合はこちらの世界に来て以降に亡くなった者達が集まります。ルル・チチリ・私はほんの少し前後があっただけで、お二人が現れた後に亡くなったから、お仕えする事が出来ました。」

なるほど、奇跡的なタイミングで優秀な3体を引き当てたわけだ。つまり新しい2種類は最近亡くなったという事か。重いよ。

「という事は、同じ種類は呼べないのか?」

英雄が僕の聞きたい事を質問してくれる。

「はい、基本は1種族につき1体です。私達の話になりますが、宿主が被った時は早いもの順です。」

満面の笑みを見る限り嘘ではないだろう。

「時間的にこれが最後の質問かな? 『こちらの世界』と言ったけど、僕達の事はどれぐらい知っているの?」

それを聞いて英雄が頷く。

「召喚者様の事は、本人が隠そうとしない限りは知る事が出来ます。これは無意識でも、知られたくないと思えば、聞かれる事はありません。待機中も同様です。主様は自分の事を一切隠そうとしなかったので、元々は男性だった事も存じております。」

プライバシーとはと一瞬考えたが、こちらの事を理解していたからこそ、お風呂や着替えなどを手伝ってくれたのだと思えば怒る要素は一つもない。むしろお礼を言う側だ。

「お前のガードが甘いからだぞ? 責めたら駄目だからな。」

「分かってるよ。プラフィ、その事に付いては気にしなくて良いからね。必要だと思ったら、遠慮せずに引き出しちゃって。」

そう言うと彼女は頷いて、僕の中に戻って行った。

「魔法って奥が深いんだな。とりあえず朝飯食うか。」

「本当に感心するよね。不安が1つ解消されたし、今日は美味しく頂けそう。」

上機嫌で部屋を後にする。

「今夜にでも少し話そうぜ。」

「そろそろ新しい子も決めたいしね。」

そう言って、これから済ませないといけない事へ意識を切り替える事にした。


ギルドでの訓練中、ジナイーダさんにプラフィが質問攻めにされていたが、2人とも楽しそうで、これだけでも話せるようになって良かったと思う。ただ、内容が専門的な魔術だったので理解できず、少し寂しい思いをしたのは内緒だ。


新しい2人もすぐに話せるといいな。


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