夫婦愛?
残業で帰りが遅くなってしまったある日のことだ。
駅から少し離れた集合住宅の中にある自宅に歩いて帰る最中のことだった。街頭が疎らで暗い夜道とはいえ歩き慣れた道。
電車の中では見えなかった星々のほのかな明かりを背に道を歩いていたところ、ふと背中が重くなった。けれど周りには何もない。おかしいな、予想以上に疲れていたか?と首を傾げながら帰宅した。
すると妻から「あら、子供なんてどうしたの?と聞かれた。「いや、子供なんて知らないけど」と答えた。特に心当たりもなかった。「そこにいるじゃない。まあいいわ。悪い子じゃないようだし上がっていらっしゃい。」と妻が言うととふっと背中が軽くなり、パタパタと子供が走るような音が家のどこかへ消えていった。
妻から「あなたには見えなかったの?」と聞かれたが「いや、特に何も見えなかったな。」と答えた。「あら残念。ずいぶん可愛い子だったのに。」「そりゃ残念だったな。」などと談笑しながらご飯を食べ風呂に入りいざ寝ようという時、ふとあれから何も起きなかったことに気付き「あの子、もう居なくなっちゃったのかな。」とつぶやいた。
それを聞きつけた妻が「あら、まだいるわよ、そこに。」と指差した先、カーテンには子供らしい型が残っていた。「どうやら見えてないの気にしてくれたみたいね。」と妻と二人で笑いあった。