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ホワイトセイバー  作者: 藤原明日來
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ジャック・ザ・ファイアへの依頼

ここからはこの物語の主人公、レイモンドことジャック・ザ・ファイアの一人称視点です。

どうも。俺はレイモンド=ベルロイドだ。

《ジャック・ザ・ファイア》の名でヒーローをやってる。

レイモンドなのに何でジャックなのかって?

それは俺がカボチャの被り物をして黒い外套を羽織ってるからだ。まぁ、これで分かるだろうがジャック・オー・ランタンをモデルにしてる。

外でキメラがどうとか言ってっけど、残念ながら俺はキメラじゃない。

あ?「《キメラ》って何ですか?」だ?

キメラってのはいわゆる超能力を使う奴らの事だ。

昔人類の突然変異でキメラどもが出始めたんだが、これがやんちゃな奴らばっかで多くの事件を起こしたんだ。

だが、ある時1人のキメラが正義の心に目覚めた、なんてやつじゃないだろうけど、ヒーローとして次々と事件を解決していったんだ。そしたら世界中でそいつの真似事を始める奴らが増えて、ヒーローギルドやらができるなりで世界はヒーローを公式的に認めたんだ。ヒーロー事務所や会社にヒーローとして雇って貰うか、ギルドで手続きをしてある程度の期間内に何でもいいから事件を解決すれば簡単になれる。ちなみに、ヒーローには順位があって、解決した事件のランクが高い程高順位からの活動が可能になる。ただし、ランキングは5000位まで。それ以下はランク外だ。ちなみのちなみに俺の順位は恥ずかしながらランク外だ。

ヒーローはもっぱらキメラが多い。ほぼ七割がキメラだ。もちろん、ヒーローは悪党と戦うのがお約束だからキメラは能力をバンバン発動しやがる。

で、「あんたはキメラじゃないのにどうやって戦うの?」か。良い質問だな。

《ジャック・ザ・ファイア》のファイアは『炎』と共に『ぶっぱなす』って意味のファイアでもあるんだ。そしてこの外套の下には多くの重火器を隠してる。戦闘になったらこいつらをバンバンぶっぱなすんだよ。

いっちょここで試して見るか?

ここは俺のお気に入りのショットガンをーー


「何ショットガンなんか取り出してるんですか!」

「いっって!?」

突然の衝撃が俺の頭を襲いやがった。

後ろを振り返ると俺の頭を殴った忌々しいガキが居やがる。

「何すんだこのクソガキ!?」

「あなたが急にショットガンなんか取り出すからじゃないですか!あと、一体誰に話かけてるんですか!?」

「うるせぇ!暇で暇で仕方なくやって来た別次元の読者様だよ!」

「……何言っているんですか?」

俺の返答にガキは呆れた表情をしやがった。

「ったく、今度やったらテメェの服を脱がせてテメェの(ズキュン!)に(バキュン!)して(ズガガガガ!)るぞこのガキ!」

おっと、つい放送禁止用語を口走っちまった。とりあえず銃声で修正しとくぜ。

「私は悪くありません!レイモンドさんが事務所で銃なんか取り出すのがいけないんです!大体いつもそう言っておいて結局した事ないじゃないですか。もうそんな脅し通用しませんからね?」

あぁ、そう言えばここの説明を忘れてたな。ここは俺が個人経営してるヒーロー事務所兼自宅だ。何で個人でやってるかっつうとただ単に大手ヒーロー会社とか事務所に入る事が出来なかったからだ。

それにしても……、

「なんだお前、襲って欲しいのか?なら端からそう言えよ」

「言いませんし、襲って欲しくもありません!」

「素直じゃねぇな」

まぁガキに欲情するほどロリコンじゃねぇが。

この素直じゃないガキの名前はドロシー。昔孤児だったのを俺が拾った少女だ。言ってももう盛りの16歳だけどな。今年で。

まだ15だよ?誤解の無い様にいっておくけど。

でもこいつ、アジア系の血が流れているらしく黒髪で、10代ですか?って聴きたくなるほど背が低い。少女と言うよりは幼女だな。アジアらへんなら少女と見るんだろうけど。

まぁ、そんな事は置いといて俺は新聞を手に取り今日の見出しやら何やらを眺める。

載っているのは先日の強盗事件の事だっだ。

『謎多きヒーロー、ホワイトセイバーまたも現る!』

この新聞に載ってるホワイトセイバーはヒーロー会社や事務所にも入らず、ヒーローギルドでの手続きも行っていない非公認のヒーローだ。両手に持った日本刀を武器に幾人の悪党を退治している男だ。シンセンスシティの都市伝説として名が通っていて、キメラじゃねぇけどその腕前は世界中のヒーローの中でも上位に入るらしい。ちなみに正式なヒーローじゃないから順位には入ってないし警察からは指名手配されている。特に最近はなぜかセイバーを捕まえようとしている奴が増えている気がする。

「また載ってますね。セイバー」

「だな。ところで、ドロシー。うちに何か依頼は来てるか?」

「特にありません」

「はあ!?」

俺思わずずっこける所だったぜ。いやでもふざけた言い方だけどマジでびっくりしてんだぜ?

「おいおいマジかよ!ここ数日ずっとそれじゃねぇか!」

こんな事情だからかなり危機感感じてんだ。

「お前ちゃんとチラシ配ったのかよ!?」

「配りました。でも仕方ないですよ。ただでさえ知名度も低いですし、ランキングも圏外なんですから」

……納得いかん。確かに俺はランキングが低い。そもそもランキングは事件のランクと数で変わるんだが、腕には自信があるけどなぜか依頼が来ない。

「だから知名度が足りないんです!」

こいつ、地の文を読み取るスキルでもあるのか?それともただ単に俺が無意識に口動かしてるだけか?

「そんな事どうでも良いですから。どうするか考えましょう」

今の現状とコイツの態度でため息を吐く。

「はぁ、そうだな。じゃあ、もう一度チラシ配るか。このままじゃ食っていけねぇぞ」

俺は机の引き出しから自作のチラシを取り出す。

『受けた依頼は豪快に!陽気なヒーロー、ジャック・ザ・ファイア!』

チラシにはかぼちゃを被り、黒い外套を羽織って大量の重火器を構えた男、つまり俺の絵が描かれている。この絵を描いたのはドロシーだ。コイツなかなか絵が上手くてな。この絵は俺的に結構気に入ってる。俺様カッコいい!

「調子に乗ってないでさっさと行きますよ」

「な、おい押すな!」

ドロシーは俺の背中を強引に押して外に出ようとする。

仕方ねぇから扉を開こうとドアノブに手を伸ばす。

「うお!」

だが、俺がドアノブに触れる前に、扉が勝手に開いた。俺は扉にぶつからない様、とっさに後ろへ下がった。そして、

「……ワオ」

扉の向こうから、かなりお美しいお姉様が現れた。

170㎝くらいの身長で、ストレートなプラチナブロンドの髪にグリーンの瞳、綺麗なカーブを描いた高い鼻に肌は毛穴一つ見つからないくらいきめ細かく、薄い口紅で彩った唇は艶やかだ。そしてバイクにでも乗って来たのか、その身には革製のライダースーツを纏っていて、その格好とクールな雰囲気はさながらボンドガールだ。

俺がその美女に見惚れていると、彼女は部屋を一通り見渡して第一声を上げる。

「あなたがジャック・ザ・ファイア?」

「……ん?あ、あぁ」

やべぇ、まさか俺んちにこんな美女が入ってくるとは思わなかったぜ。つい見惚れて反応が遅れちまった。

そんな様子の俺になぜかため息を吐いたドロシーが代わりに美女に尋ねた。

「もしかして依頼ですか?」

「えぇ、そうよ」

「そうですよね。ランク外のヒーローに依頼なんて来るはずないですもんね」

コイツ、ケンカ売ってんのかコラッ!殴り飛ばすぞ!


――ん?


おう?依頼だって!?

「マジか!?」

「やりましたね!数日振りの依頼ですよ!」

俺とドロシーはパァッ!と表情が明るくなる。久々の依頼でやっと小遣いがプラスされるからだ!

「やったな!……てちょっと待て」

俺らは思わず踊り出しそうになるが、直後、頭の中に引っかかりを覚えた。

「詐欺とかじゃないだろうな?」

「そんな訳ないじゃない」

女は「心外だ」と言わんばかりにきっぱりと否定するが疑わしい。

「本当か?『ランク圏外のヒーローに簡単にランキング上位に入れる!』なんて胡散臭い話を俺らに持ちかけに来たんじゃないのか?」

まず、うちにこんな知的クールなボンドガールが来るはずがな――って痛っ!

「何すんだドロシー!」

「あなたは久々の依頼をみすみす逃がす気ですか!詐欺かどうかは話を聞いた後に判断すれば良いんです!」

「……詐欺の疑いは持ったままなのね」

女は呆れた感じで呟いた。



ドロシーが女性を客席に案内し、俺はその向かい側にドスッと座る。多少埃っぽいが気にしない。

美女はミランダ=アランと名乗った。

彼女は人探しの為に、ギルドを伝手にシンセンスシティ中の様々な探偵やヒーロー事務所に顔を出したが、その結果はどこもことごとく失敗。探偵と名高い上位ヒーローにも依頼した事もあったらしいが結局ダメだったそうだ。

それでも諦めずに次々と依頼したが得た情報は何も無かった。

そして、万策尽きたかのように思えたその時、俺のチラシを眼にしたそうだ。

「へぇ、人探しねェ」

「えぇ、あなたには私と一緒に人探しをして欲しいの」

ミランダは神妙な面持ちで頷く。それを認めた俺はドロシーが淹れたコーヒーを啜りながら、まず依頼ランクを聞くことにした。

「ちなみに先に聞いておくけど、ギルドはその依頼をどのランクに当てたんだ?」

ん、どうした?「なぜ内容を先に問わないのか」って?そりゃあ、依頼の難易度を測るためだ。内容だけ聞いたってそれが手こずる様な仕事だと最悪死ぬ事だってある。

ミランダは一瞬眼を伏せる。だが、すぐに視線を俺に向け、若干躊躇いがちに言った。

「……Sランクよ」

「ブフウゥゥ!!」

俺は思わず口にしていたコーヒーを吹き出し、せき込んだ。ドロシーも目を見開いて驚愕の表情を見せる

「Sランクって最高ランクじゃないですか!」

依頼ランクは合計6つある。一番下がEランク。「子猫が木から降りられない」とかの何てこともないものだ。Cランクから大事件として扱われるのだが、それが寄りによってSと言われたんだ。驚かない訳がない。

「嘘だろ!?Sだ!?ただの人探しじゃないのかよ!」

騒ぐ俺らの反応を見て、「やっぱりね」みたいな顔をするミランダ。

「ランクが高いのは人物が人物だからなの。もし無理なら断っても構わない」

ミランダの言葉に、俺は「は?」と声を上げる。人物が人物って、どんな奴なんだよ。

ランクがあまりにも高かったから断わろうかとも思ったが、こっちは生活が懸かっているし、何より気になるから聞いておく。

「……久々の依頼だから別に良いけど、その人物って誰なんだ?」

「それは…………」

ミランダはまた言い辛そうにしていたが、一度深呼吸する。

そして一呼吸すると、決心と共に口を開いた。


「私が探し出して欲しい人物はセイバー。あの《ホワイトセイバー》よ」

お気づきの方もいると思いますが、レイモンドは某アメコミヒーローをインスパイアしています。出来れば生暖かい目で見てもらえるとありがたいです。

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