第1話
勉強は苦手。
でも、工作は大好き!って小学生か、俺。
工業高校定時に通っている勤労学生+ダブリな俺は、昼間真面目に働いてる。
従業員5名の小汚い(ゴメン!)小さな工場。
給料は安いけど良い人ばかり。
貧乏な俺のために、昼飯は大御所・安部のおいちゃんが作ってきてくれる。
あぁもちろん、本当に作るのは優しい奥さんね。
「イッテェ~ッ!」
「なんだぁ、坊主またやったか?」
「へへへ、指、白い」
手に持っている半田ゴテは100度を超える熱。
つい指に当てちまったから、ヤケド。
水ぶくれなんかじゃない、白くなっちまう。
米粒サイズだと熱いではなく痛いんだよね。
「この部品さぁ、隣が電解コンで、狭いんだよぉ」
「実装の順番間違えたんだから、自業自得だな」
ほとんどの電化製品には基板って呼ばれるものが入っている。
生基板は基板屋でやるがその上に部品を実装するのはここでやる。
基板の上に指定された部品を半田していくが、小さな部品から実装するのが鉄則。
コテ先が入らないような狭さになったら、削るのは自分の指になるからね。
ここでは、量産になるまでの試作基板を専門に製作しているんだ。
有名なメーカーの下請けの下請けの下請け。
末端の会社の俺は新人。つまりかなりの下っ端?!
「大分上手くなったな」
「ほ、本当?本当に上手くなった?」
大好きだけど不器用。
しっかり自覚している俺は、新婚の槙田さんの言葉が飛び上がるほどうれしい。
「ああ、半田上がりも綺麗なもんだ」
ナンバー2の納期の鬼、田所さんまでが褒めてくれるからたまらない。
今日は何の日だ?
誕生日じゃねえぞ?!
「順番なんて基本を忘れるようじゃ、まだまだだな」
うぅ~、やっぱ、おいちゃんは落としてくれるぜ。
「真面目に毎日来てるんだ。すぐにもっと上手くなるさ」
槙田さんありがとう!
即浮上!
「うっうれしい!けど、今日は誕生日じゃないし、なんか気味悪いかも」
俺以外が大笑い。
「滅多にないんだ。素直に褒められてろ」
その言葉が1番痛いです、おいちゃん。
「おはよう。順調かね?」
「おはようございます。社長!」
新人の俺は、ちゃんと立って頭を下げる。
「1人ばかし指を半田付けしてますが、予定通りですよ」
「た、田所さ~ん」
俺今度は泣いちゃおっかな。
「あ~、亮太くんはうちのアイドルだからね、半田まみれでもかわいいよ」
にっこり笑って言われてしまった。
「そんなにはやってないです。社長・・・」