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舞台裏・独白2

 もう待てなかった。

 一週間待った。待っていたが駄目だった。これ以上はもう待てない。

 覚悟は固めた。そして手段も、昨日のうちに決めてある。

 あとは、実行に移すのみ。

 真っ直ぐにテーブルへ向かうと、そこに乗せられたものへ手を伸ばす。

 用意は深夜のうちに整えていた。誰よりも早くここへ来る為に。誰にも見られず動く為に。覚悟を鈍らせないよう、自分を戒める為に。

 そして、失敗しない為に。

 きっかけは何でもいい。

 ただ、殺意を表現する手段として、目の前のこれはうってつけだ。見れば一目で誰でも分かる。

 掴んだ肉厚の包丁の柄を逆手に握り直すと、刃先を床へ向けた。

 床と水平に伸ばした腕の先に、銀色の刀身。そこに映る自分の顔は、不謹慎にも笑んでいた。薄闇を一閃する金色の光が、不意に室内を駆け抜ける。窓の外を走った車のライトだ。刀身を鈍く煌めかせた光の色は、まるで夜を飾るネオンのように、虹色の光彩を帯びていた。


「……殺す」


 小さな呟きが、思わず喉から零れた時。

 ぱっ、と手を、包丁から離した。


 床板を穿った包丁が跳ねる劈くような音を、耳が拾うことはなかった。

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