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幕間・即興劇
「誰だ」
あまりに怠惰に響いたのは、自分の声。ただ、その声には自分でも分かる程の確かな驚きが滲んでいた。
だって、と思う。ここに、こいつがいるはずがないのだ。
いつか、この時を待っていたのかもしれない。そんな風にさえ思えてくるこの即興劇に、こんな展開が待ち受けているなど、一体誰が思うだろう。
夢のままで。そんな風に言ったのは誰だったのか。感傷に浸って、そんな自分に酔いしれて、しみじみと勿体つけて考えるまでもない。それは、あいつだ。あいつしかいないのだ。この身体が、頭が、確かに覚えている。全身全霊で記憶している。
「……」
そいつは、何も言わなかった。
ただ、真っ直ぐにこちらを見つめて――くしゃりと、泣きそうな顔をした。
「……ごめんね、なんでもないの」
そう言って、笑った。
ああ、全然似ていない。
漫然と、そう思った。




