第04話 新たな職業とスキル
ボウウルフを撃退した後も俺はしばらく外の様子を警戒していた。
あれから30分たっても再襲来の様子もなく、どうやらヤツラは完全に森に逃げ帰ったようだ。
外から聞こえるちょっとした物音にも敏感に反応するおっちゃんに安心するように伝え、今日はこのまま休むことにする。
弱火になっていた炉に新しい薪を加え、緊張で強張った身体から力を抜いた。初めての戦闘に俺も知らず知らずに力が入っていたようだ。
自分が落ち着くためにも、ほうと息を吐いた。
そういえば、ボウウルフ倒していくら経験点入ったかなーとステータス画面開いてみた。
そしたら入ってた経験点はなんと2071点!
すげえ!
―――って、あれ? ボウウルフってこんなに経験点高かったっけ?
確か、ゲームじゃ精々一頭100点そこそこだったはず。さきの戦闘で倒せたのはせいぜい二頭か三頭くらいだろうに。
疑問に思っていろいろ見ていたらステータス画面の下のほうにシステムウィンドウを開くボタンがあった。ぽちっとな。
そのログに、
モンスター ボウウルフ・リーダーを倒しました
モンスター ボウウルフを倒しました
モンスター ボウウルフを倒しました
クエスト「猟師救出」を達成しました
の文字が。
『パンツァー・リート』はクエスト重視型のゲームで、下手にフィールドでモンスターを狩るよりクエストをクリアしたほうが高い経験点が入る。
むろんフィールドの狩りでも数をこなせば多くの経験点が入ってくる。しかし同じモンスターを倒すにしても、クエスト受注後に関連するモンスターを倒したほうがより高い経験点を得られる仕様になっていた。
今回のことを例にするなら、クエスト無しよりクエストを受けその障害となるボウウルフを倒せば通常より1割以上高い経験点が入るって仕組みだ。
プレイヤーはクエストを受けつつモンスターを数多く倒して経験点を稼ぐってのが『パンツァー・リート』のプレイスタイルだ。
今回はおっちゃんを助けることがクエスト扱いになり、俺もおっちゃんも無事であることからクエスト達成と見做されたようだ。しかし、『パンツァー・リート』にこんなクエストはなかったはず。
もちろんおっちゃん救出のクエストを受けた記憶もない。
「―――ってことは事後承諾かよ」
思わず一人で裏手突っ込みする。おっちゃんが不思議そうにこちらを眺めていたが無視無視。
微妙にゲームと現実とが混じっているようだ。というか、この世界の人はクエストとかスキルとか、どんな認識でいるんだろうか?
明日それとなくおっちゃんから聞きだすか。
それはともかく、せっかく経験点が入ったんだ。経験点使って成長してみますかね。
……それにしても、なんだか俺、当たり前のように現状受け止めてるよな。
新たに選択した職業は【野伏】と【銃士】のふたつ。さっそく職業を入れ替えるとしよう。
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氏名:神崎祐一 年齢:16歳
性別:男 種族:人間
冒険者レベル:1 未使用成長P:-
使用/未使用経験点:5000/91
所属パーティ:-
能力値 補正値
器用度:11 +3
敏捷度:13 +1
筋力 :13
生命力:11
知力 : 9 +2
知覚力:12 +1
精神力:12
HP:28/28 MP:26/26
常設職業
【銃士】1Lv 【野伏】1Lv 【賢者】1Lv
取得職業
【剣士】1Lv 【賢者】1Lv 【錬金術師】1Lv 【銃士】1Lv 【野伏】1Lv
特徴(人間:1Lv)
根性 3分の間、特定の能力補正値を倍に出来る(知力以外) 消費MP:3
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種類増やしただけで職業レベルは上げなかったから冒険者レベルは現状のままだ。おかげで能力値の成長ポイントの獲得はない。
能力値の上昇は今後のレベルアップに期待しよう。
【銃士】からは【銃器命中率上昇】を選択。
このスキルは言わずもがな銃器の命中率をスキルレベルにつき5%上昇してくれる。素人な俺の射撃の腕前を少しでも底上げするには必須のスキルだ。
【野伏】からは【索敵】をチョイス。
これは周囲にいる敵や隠れた相手を暴き出すスキルだ。【探索】に比べ有効距離は5メートル+スキルメートルと狭いものの、その範囲内なら【隠密】や【隠蔽】で隠れていても暴きだし、敵味方を識別してくれるとっても有難いスキルだ。
このスキルの便利なところは、なんと言ってもレーダーと連動するところだろう。
レーダーと組み合わせれば、その範囲内にいる相手が敵か見方か明確に……判別で……き……。
そう言えばレーダーなんて物があったんじゃん!
さっき使ってればもっと簡単にボウウルフの位置とかわかっただろうに!
―――いやいやまてまてまて。
初期状態のレーダーはホント単純で、距離はともかく見えている範囲でしかその機能は働かないはず。たしか背後や壁向こうは感知外で、【探索】や【索敵】などの探索系スキル取って強化すればそういった欠点も克服されるんだっけか。
そうだそうだ。よしよしよし。
選択は間違ってない。間違ってないぞ、俺。
とりあえず新しい職業とスキルも取ったことだし、今日はもう休もう。
その前に、せっかく仕留めたボウウルフの毛皮でも剥いでおくか。
動物の解体とか北海道の爺ちゃんに仕込まれたから、今じゃお茶の子さいさいだ。シティーボーイでありながらワイルドな面も持ち合わせている俺カコイイと自画自賛、
ありがとう北海道の爺ちゃん。中ボーだった俺に動物解体とか強要した恨みは今日で忘れるよ。
【剣士】外しちゃったから無用になった日本刀はウェポンボックスに仕舞っておく。
せっかく経験点使って取ったのに……いつか使ってあげるからね【剣士】スキル。
翌日。
寝静まっていた森の木々の間を漂う朝靄が朝日を受けて優しく解きほぐされ消えていく。そんな朝の時間。
囀り始めた小鳥の声。
窓から差し込む陽の光が薄暗い山小屋のなかを照らし出し、俺を覚醒へと導いていく。
日の出と共に目が覚めた俺は、同じく起きだしたおっちゃんから改めて礼を言われる。
きちんと礼がしたいとのことなので、それならば道案内して欲しいと頼むとおっちゃんの村に案内してもらえることになった。
いい加減森の中をうろつくのも面倒くさいしちょうどいい。
森をよく知るはずの猟師なら迷うこともないだろ。
ばれないようにアイテムボックスから取り出した食料アイテムでおっちゃんと朝食を済ませ、ボウウルフの毛皮をカバンに仕舞う振りしてアイテムボックスに収納し出発だ。
小屋を出て話しながら歩いてると、そういえば互いに名乗ってなかったのに気がついた。
「俺の名前はベンと言うんだ。マテウス村で猟師をしている」
「俺は神崎祐一。祐一でいいよ」
「ユウイチ?」
「呼びにくいならユーイチでいいさ」
「ならそう呼ばせてもらうよ。ところで助けてもらったのになんだけど、ユーイチはどうしてこんな森の中にいたんだ?」
やはり聞かれるか。
夕べ眠る前に考えていた言い訳が役に立ちそうだ。堂々と胸張ってれば逆に怪しまれないだろ。
「東部から旅をしてきてね。ついでと思って薬草探してたら森に迷った。ここ2・3日ずっと山中をうろついてたよ」
「東部から来たのか。どうりで見慣れない風体だと思った。薬草探してたって……ずいぶん若いけど薬師かい?」
「いや錬金術師。正確には卵だけどね。世界を見て修行して来いって師匠に放り出されたんだ」
「その若さで錬金術師なのか!」
「だからまだ見習いだって」
薬師なら座学だの薬の作り方だの師匠に引っ付いて学んでなきゃおかしいが、錬金術師の修行って言っとけば多少突拍子もない行動してても誤魔化せる―――だろう。
偏見かもしれん。
「へえ……さすが錬金術師だ」
小首をかしげているが納得された!
やっぱ錬金術師の修行ってそんなにワイルドなのか!?
某錬金術師の師匠は入門試験とか言って弟子志望者を一月もの間、無人島に島流ししてたしな。
「錬金術師って銃使うんだね。その肩に担いでいるの魔動銃だろ?」
「魔動銃だけどコレは実弾使える併用型だからね。実弾に使ってる火薬は錬金術師の領分だよ」
『パンツァー・リート』の設定(想像も含むが)にそって話してるけど通じるよな? おかしくないよな?
まさか気がついたら異世界に来てましたなんて正直に言えないし。
「なるほど火薬か。自動兵器の反乱からこっち、アンチ・マギなんとかで魔法効きにくいとかで大変だそうだからな。ヤツラの近くじゃ機甲騎兵も調子悪くなるって言うし」
「ヤツラ?」
「自動兵器だよ自動兵器! ヤツラが裏切りやがったから国も街も―――大勢の人が死んだんだ!」
なんですと!?
吐き捨てるように言うおっちゃんを呆然としてみている俺。おっちゃんは道すがら自動兵器に対する悪口雑言を口にしていた。
反乱? 裏切り? 自動兵器が?
確かあれ『蟲』とか言う謎生物に対する防衛兵器だろ? 機械が何で裏切るんだ?
そもそも自動兵器は定期的に行われる『蟲』大侵攻イベントのプレイヤー側お助けメカ的な"NPCアイテム"のはずだ―――ゲームの公式設定では。
おっちゃんの話をまとめると、80年前突如として反乱を起こした自動兵器は世界各地で人類に攻撃を開始したと言う。混乱する現状の中では原因究明などする暇もなく、戦火は一方的に拡大。おもに大陸西部から中部に壊滅的なダメージを受けたらしい。
数多の国が滅び、街が焼かれ、大勢の人が死んだ。
そりゃそうだろう。
自動兵器は拠点防御用の防衛兵器。機甲騎兵が剣とするならば自動兵器は人類を護るための盾。
人々の安寧を護っていたはずの片翼が突如として牙を剥いたのなら、安心して背を任せていた味方のはずの自動兵器が一斉に反抗に及んだとしたら被害はどのくらいになるのだろう?
SFとかによくあるAIの反乱?
そもそも80年前ってなに?
俺、夕べまで悪友とゲームしてたぞ?
この世界はゲームとは無関係なのか?
ここは本当に『パンツァー・リート』の舞台エイリシエルなのか?
だが、その疑問に答えてくれる者などいやしなかった。




