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「ふたり」

 わたしの名前は佐山貴子。実家から大学に通っている、ごくごく平凡な大学二回生だ。


 この前、一宮くんに彼女がいることを知ったわたし。思った以上にショックだったのか、最近、何だかやる気が出ない……ご飯を食べるのもおっくうだ。


「だからって、マックシェイクばっかり飲んでたら体に悪いよ。ほら、おにぎり。梅干が入ってるから、夏バテにもいいよ」


「うう~、ありがと~、れんちゃ~ん」


 情けないわたしに、れんちゃんはいつも優しい。


 ってゆーか、れんちゃんは優しいだけじゃなくて、頭もいいし、運動神経もいい。おまけに美人さんだ。 


 男だったらほれてたね! 実際、れんちゃんは男にも女にもモテモテだ。なのに……。


「何でれんちゃんみたいな子に彼氏がいないのさー。早く恋愛して、わたしにラブの奥義でも伝授してよー」


「あはは、無茶言わないでよ。私、まだ恋愛とかよくわからないよ。貴子と遊んでる方が楽しいぐらいだしさ」


「れんちゃん……」


 やだ、キュンときた……って、いかーん! 百合なんて、わたしは望んどらーん!


 わたしは、男とラブラブチュッチュッしたいんだ! 彼氏が欲しいんだー!


「そうそう、恋愛って言ったらさ。友だちから聞いたんだけど、一宮くん、彼女なんていないみたいだよ」


「へ? うっそだー! わたし、見たもん! 一宮くんの家に、長い黒髪の女の人がいたのを!」


 れんちゃんはいきなり、何を言い出すんだろう。わたしはこの目で見たんだ。一宮くん家にいた、彼女さんを……。


「でも、本人もいないって言ってたし、一宮くんとよく遊んでる男の子も、『あいつに彼女? ないない、ありえない』って笑ってたよ」


「そう……なの? それ、ほんと?」


「あはは。私、こんな嘘は吐かないよ」


 どうやら、本当に嘘じゃないようだ。そもそも、れんちゃんはこんなことで嘘を吐くような人間じゃない。これは、信じられることなのかも……?


「じゃ、じゃあ、一宮くんってフリーなわけ?」


「そういうことになるんじゃないかな?」


「マジで!?」


「うん、マジマジ」


「やったあああ~~~~~!!」


 これでまだチャンスはあるってことね! よ~し、わたし、頑張るぞ~!




「ふたり」




「うわああ~~~~~ん!」


 嘘嘘! 嘘ばっかり! れんちゃんったら、何が一宮くんに彼女はいないよ!


 いるじゃない! いるじゃないの!


 サークルの飲み会の帰り、酔っ払った一宮くんをアパートまで送っていったんだけど、部屋に上げてはもらえなかった。


 酔ってるし、部屋もあんまり掃除してないし、って言ってたけど、それも嘘だった。


 本当は、彼女がいるからわたしを部屋に上げたくなかったのよね!


 だって、ほら、カーテンで遮られた部屋の窓には、男と女、ふたりの影が……。


 今だって、一宮くんに少しずつ近づいている女の影。あ~あ~、ラブラブですこと! もう見てらんない! 帰る!


 そして、悔しさでぽろぽろ涙を流しながら帰ったんだけど……。


 その間、ちょっとしたことが気になっていた。


 女の影を映し出した部屋の灯りは、一宮くんが部屋に入ったタイミングで点いたんだけど……。


 なんで彼女さん、暗い部屋に突っ立ったままだったんだろう?




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