「音楽」
わたしの名前は佐山貴子。実家から大学に通っている、ごくごく平凡な大学二回生だ。
ところで、みんなはテスト勉強はしているかな? わたし? わたしは……あんまし、してなかったり。
やばーい! 単位を落としたりしたら、お母さんにお小遣いを減らされるー!
と、いうわけで、幼馴染のれんちゃんと勉強会をすることにした。一人だと、どうしても遊んじゃうからね。
それに、れんちゃんは頭もいいからね。高校の頃から、お世話になっています!
……今度パフェでもおごろう。改めて考えてみると、彼女にお世話になってばかりだ。
でも、今は勉強! 喫茶店には、試験明けに行こう!
「音楽」
かりかりかり。
今、れんちゃんの部屋では、シャーペンでノートに文字を書く音しか聞こえない。
かりかりかりと、ひたすらに文字を書くわたしたち。
持ち込み可のテストは、いかに講義の要点をまとめられるかがポイント。速さは強さだ! 試験中に配布資料を広げているような輩は、時間が足りなくなって泣きを見ることがある。
だからこそのまとめノートの作成なんだけど……駄目だなー。静寂には耐え切れそうにない。
「れんちゃん、れんちゃん。音楽かけていい?」
「んー、いいよー」
わたしの言葉を聞いているのかいないのか、生返事をされる。でも、いつものことだ。れんちゃんは勉強しているときは集中力高めだからね。他のことが気にならなくなっちゃう子なんだ。
だから、遠慮なく音楽をかけさせてもらおう……でも、少しは遠慮して、大人しめな音楽にしとこう。
そう思って、CDラジカセにクラシック全集なんかを入れてみたんだけど……。
再生できない。あれ? 壊しちゃった? でも、いつも通りに再生したのに……あれ?
さすがに焦ってあれこれいじってみたけれど、ラジカセはうんともすんとも言わない。
ああ~、これはれんちゃんに土下座コースかな……と、半ば諦めながら、ラジカセに耳をつけ、音量つまみをひねっていると……。
不意に、音……ううん、声が聞こえた。
「そこにいるよ」
そして、流れ出すクラシック音楽……。
……う~ん、変な出だしのクラシックもあったもんだ。
佐山貴子さんは、佐山貴大くんの曾お婆ちゃん。
れんちゃんはれんちゃんの曾お婆ちゃんです。