「彼女」
わたしの名前は佐山貴子。実家から大学に通っている、ごくごく平凡な大学二回生だ。
わたしは実家通いなんだけど、一人暮らししている人ってすごいよね~? 掃除も洗濯も、ご飯をつくるのも一人でしているだなんて、考えただけでもめんどくさくなっちゃう。
就職するなら、絶対地元だね! 実家さいこー!
そんなわたしだけど……いや、そんなわたしだからこそ、家事スキルが高い人は憧れちゃうな。
サークルの合宿の時に、涼しい顔をしてパッパッパ~ってご飯をつくっちゃえる人は、ほんと尊敬しちゃう。
例えば……例えばね? 同じサークルの一宮くんとかさ。彼ってすごいよね。何でもそつなくこなせそう。
結構イケメンだし……ちょっと、気になってたんだ。だから、ちょくちょくおしゃべりとか、メールのやり取りとかしてたんだけど……。
そしたら……そしたら、なんと! お家に招待されました!
料理の話をしてて、気がついたら実際に食べさせてもらえることに!
やったね! ステップアップだ!
「彼女」
わたしは一宮くんの家に上がるなり、すぐに飛び出した。
も~! も~、ほんとに信じられない! 一宮くんったら、彼女がいるのにわたしを家に上げるとか、ほんっと信じられない!!
どーゆう神経してるの!? せめて、彼女を帰しておくか、そもそも家に連れてこないか……ともかく、隠すぐらいはしてよ!
……それも嫌だけどさ!
彼女も彼女だよ! あんなところに隠れてさ……ううん、隠れてすらいなかったじゃない!
「……でも」
でも、
ベッドの下。
何であんなところに隠れていたんだろう。