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「手形」

フリーライフの投稿の合間に、こちらも更新です。

 僕の名前は一宮健二。安アパートで一人暮らしをしている、しがない大学二回生だ。


 一人暮らしをしていると、色んな苦労がある。


 例えば、家事だ。掃除洗濯、炊事に後片付け……まぁ、一回二回じゃたいした手間じゃないんだけど、毎日ともなるとそれなりに大変だったりする。


 同じように一人暮らしをしている友人たちと話をしていても、実家に帰って一番嬉しいことは、「家事をしなくていいこと」で満場一致するぐらいだからね。その苦労、推して知るべし。


 でも、まあ、誰だってそんな苦労はしていると思う。そんなことを話にしてもしょうがないだろう?まさか、「男の人がする家事について興味津々です!」なんて人はいないはずだ。


 だから、一人暮らしのことで話にするとしたら……そうそう、こんなことがある。



「手形」



 その日は、どうということはない日だった。サークルから帰ってお風呂に入り、ご飯を作って食べて寝る。いつも通りの日々だ。


 たまの金縛りにあうのだって、いつも通りだ。テレビで、「脳は起きているのに体は動いていない状態」だとか言ってたっけ。僕はそうなりやすいのか、月に一、二度は金縛りにあう。疲れた日は特にだ。


 だから、夜中にふと目が覚めて、「あ、金縛りだ」と気付いた時もそんなに慌てなかったね。


 でも……。


 流石に、床を何かが這っているような音がしたら、気にもなるというものだ。


 ずるずると、布を引き摺るような音が、体を動かせない僕の耳に届く。だけど、金縛りにあって天井しか見えない僕には、何がいるのか確かめることができない。


 こういうのも半覚醒状態の脳が錯覚しているからだと聞いたことがあったから、特に何もせずにほっといたら……案の定、金縛りが解けると共に音も止んだ。


 その後、ベッドの下まで確認したけれど、何もいなかった。やっぱり、金縛りによる錯覚だったんだね。泥棒とかそんなのじゃなくて安心した。


 翌朝、歯を磨きながら点検して回ったけれど、やっぱり家探しされたような形跡は残ってなかった。だから、もう気にすることもないかと、口をゆすいで、鞄を持って出かけようとしたんだけど……。


「……帰ったら拭こう」


 なぜか、家のドア(黒い塗装のステンレス製)に、まるでぺたぺたと誰かが触ったかのような手形が付いていた。接触した面の手脂が、黒いドアにくっきりと残っていたんだ。


 まあ、僕は靴をはく時にドアに手をついたりするからさ。それに気付いてなかっただけだと思って、その時はそのまま出かけたよ。


 でも、その手形。帰ったらきれいさっぱりなくなってたんだ。


 変なこともあったもんだ。









友人Aの実話から。


次回も実話を装飾したものを。

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