「壁ドン」
気分転換に、ショートホラーを書くことにしました。
一話完結のホラー……といっても、ぞっとするほど怖くはないです。どちらかというと、日常においてあり得る少し不思議な体験を書いていきます。時には、ちょっとだけ怖いかも?
では、暇つぶし程度に読んでみてくださいm(_ _)m
僕の名前は一宮健二。安アパートで一人暮らしをしている、しがない大学二回生だ。
朝起きて顔を洗い、テレビを見ながら玉子かけご飯を食べ、歯を磨いてから学校へ向かう。そして、面白くもありつまらなくもある講義を受けた後に、家に帰ったり、サークル部屋へ顔を出してみたり、バイトに行ったり……そんな日々を送っている。
休日?まぁ、友だちとつるんだり、色々やったりしているけれど……特にこれといったことはしていないかな。
どこにでもありそうな生活だと思う。多くの大学生は、同じように過ごしていると思う。
でも、人間って、「個」の存在なんだ。同じように生きているからって、体験までが似通ってくるもんじゃない。平凡な僕でも、人とは違った何かを体験する時だってある。
例えば……そうそう、この前、こんなことがあったんだ。
「壁ドン」
あれは、冬の終わりの頃だったかな。僕は、学期末に提出しなくちゃいけないレポートを、自分の家でせっせか書いていたんだ。
大学の評価って、出席とか試験とか小テストとか……その講義を受け持つ教授によって異なるんだけど、うちの大学にはレポート評価が好きな教授が多いんだ。とある教授に聞いた限りでは、いちいち期末試験をするのがめんどくさいとかなんとか……。
だから、学期末にもなると大変。それぞれの講義で提出を求められたレポートが、3つも4つも溜まってしまって、一日は缶詰めを余儀なくされる。
一つ一つさっさとやっとけって?僕、夏休みの宿題とか、ギリギリまでやらないタイプの人間だからさ……まあ、提出しないってわけじゃないんだから、いいじゃないか。
そんなこんなで、夜遅くまでパソコンに向かっていたんだけど……ほら、Wordで文字を打ち込むだけなんて、寂しいじゃないか。音楽の一つも流したくなる気持ちは、理解してくれるものだと思う。
その日も、ニコニコ動画にアクセスして、何十分もある音楽を流していたのね。「作業用BGM」とかいうやつだよ。それで、クラシックありの、ジャズありの、アニソンありの……色々聞いていたけれど、少し気分を変えたくなってきた。
そろそろ眠くなってきたから、少しテンションが上がっちゃうみたいな……そんな音楽が聞きたくなったんだ。
だから、洋楽……それも、ロックの類を、少し音量を上げて再生してみたわけ。途端に、部屋中に響くロックのリズム。
あ、少し大き過ぎたかな……と思った時、それは聞こえた。
「ドン!」
壁を拳で叩いたかのような、鈍い音……いわゆる「壁ドン」だ。隣人からの、「静かにしろ」という無言のメッセージ。
それが壁の向こう側から聞こえてきたとなれば、僕も申し訳ない気持ちになる。夜中にでかい音出してスミマセン……とね。
それからは、また音量を絞ってジブリジャズとか聞いてたんだけど……それにしても、おかしなこともあったもんだ。
叩かれた壁の向こう……そこって、家のバスルームしかないのに。
まだまだ寒い日が続くある日の夜。そんなことがあったんだ。
ホラーライフ、いかがでしたでしょうか?
週に数度、思い出したかのような頻度で更新するので、眠れぬ夜の暇つぶしにどうぞ。
では、また次回。