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本日は晴天こちら姫風工務店  作者: アルファルド
1章ユニコーンと姫君の涙
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第五話

 彩斗は眠りから覚めるとそこには宇佐美が上に乗っていた。

「なんでお前が此所にいる?」

「なんでユニコーンと戦ったんですか!!」

 宇佐美が耳元で叫ぶ。

「うるせぇな・・・・・・」

 彩斗があまりのうるささに耳を塞ぐ。

「たく・・・・・・アホか俺は怪我人だぞ」

「彩斗さんは間違えば死んでましたよ、宇佐美が行かなければ死んでいたんですよ!!」

 よく見ると宇佐美は目に涙を溜めている。

「うーんまぁそのなんだ、あんがとな」

 彩斗は宇佐美の頭に手をのせ乱暴に撫でる。

「彩斗さん〜頭くしゃくしゃになっちゃいますよ〜」

 彩斗は立ち上がりそのまま部屋を出ると黒髪に眼帯をした少年玲音が聖堂の椅子に座っている。そのまま彩斗はその少年に近づく。

「こんにちは」

 彩斗が近づくよりまえに玲音が彩斗にあいさつする。彩斗は驚きの表情を浮かべる。

「こんにちは・・・・・・」

 彩斗はあいさつされたのでとりあえず返す。

「珠理さんのお知り合いですか?」

 玲音が立ち上がり訪ねる。

「あぁ、一応な」

 彩斗は当たり障りのない反応を玲音に返事する。

「すまないが今何時だかわかるか?」

 彩斗は玲音に時間を尋ねると玲音はポケットから携帯を取りだし表示画面の時間を見る。

「21時36分ですね」

「もう夜か・・・・・・ん、学生は早く帰れよ」

 彩斗は時間を聞き、玲音の服が学生服であることに気付き当然のことを言う。

「いえ、珠理さんにこれを返さないといけないんで」

 玲音は椅子においてあるタッパーを彩斗に見せる。彩斗は欠伸をすると椅子に座り込みポケットからタバコを口に加えるとライターを出そうとするとライターが見当たらない。

「ち!」

 彩斗は聖堂の正面に置かれている火のついた蝋燭を引き抜きタバコに火をつけると蝋燭を戻す。

「バチが当たりますよ」

「あいにく無神論者なんでね」

 玲音は彩斗に呆れながら呟くと彩斗は玲音に向かい答える。

「ならなんで協会に居るんですか?」

 玲音の疑問は当然だが彩斗の瞳は玲音の腕に付けられた腕輪を見ていた。

「なんですか?」

「その腕輪は珠理につけてもらったのか?」

 彩斗は玲音の腕輪についての疑問を投げ掛ける。

「はい、中学に上がった時に珠理さんに付けてもらいましたって、あれ?」

 玲音の腕輪に黒い鎖が取り付けられる。

「俺からのプレゼントだ」

「あの・・・・・・」

 黒い鎖を彩斗が繋げると目の前に立つ。

「珠理が何を思って付けたのかは知らないがそれは君の意思の鎖だ、もし誰かを自分を殺してでも守りたいと思った時に鎖を引け」

「引いたらどうなるんです」

 玲音は自らの疑問を聞くと彩斗がニヤける。

「引く引かないは君の自由だよ、俺は君に選択権を与えただげだよ、何もできない腕輪に壊すか壊さないかの選択権をあげたんだよ」

 彩斗はそのまま外に出ていくと入り口に珠理が立っていた。

「腕輪に細工をするなんて信じられないわね」

「居るなら入ればいいだろ」

 寒空の下に珠理はいつもの修道服ではなく白いコートに白い帽子の雪のような服を着ていた。

「彩斗はどうするの?」

「どうするって」

 彩斗は珠理の質問の意味はわかっていたが聞き返す。

「ユニコーンのことだよ」

 珠理は不安そうに彩斗を見つめる。


「まずはクライアントに報告だ」

 彩斗は珠理の方を見ずに答える。

「その後は・・・・・・どうするの?」

 珠理はまるで願うように彩斗を見つめている。

 まるで戦って欲しくなんてないように。

「なぁ、珠理、星がよく見えるな此処は」

 彩斗は夜空を見上げ、星に向かい指を指す。

「どうした?」

 彩斗は背中に温もりを感じるが振り返らずに訪ねる。

 珠理の温もりだ。珠理が自分に抱きついている。

「危ないことは、してほしくないよ……?」

「あ……」

 珠理の言葉に彩斗は言葉を失った。

 彼女は純粋に彩斗を心配しているのだ。

「悪い、心配かけてばっかだな、俺」

 彼女の心配はわかる。おそらく宇佐美が運んだときの自分は瀕死の状態だった筈だ。それを彼女が治してくれたのだ。そう思うと何か申し訳ない気持ちになる。

「そうだよ、彩斗はいつだって無茶ばっかりだよ」

 背中の温もりをより強く感じる。

 携帯が鳴り出す。

「あぁ……もしもし?」

 彩斗が面倒だと思いつつ電話にでる。

「私よ、アンよ」

「あぁ、あんたか、ユニコーンを発見した仕事は終わりだよな」

「・・・・・・」

 電話の向こうは沈黙、彩斗の感が危険信号を発する。

 嫌な予感がする。こうゆう時の彩斗の嫌な予感は良く当たる。

「なんかあったんだな」

「えぇ、魔術協会の増援が望めなくなったわ」

 彩斗は絶望を覚える。

「どうゆうことだ、魔術協会は何を考えてる」

 彩斗は気付けば怒鳴っている。

 現状のこちらの戦力で戦うことは自殺行為に等しいのだ。

「五弦機関よ、連中はユニコーンを発見したのを良いことに事実の隠蔽を始めたのよ」

 話を聞き彩斗の表情に焦りが生まれる。

 予想外だ、先に五弦が封鎖をかけて来ることは予想外である。

「申し訳ないけど、私はしばらくホテルに身を隠すわ、魔術協会の人間のあたしは狙われる可能性があるわ」

 アンの言うことは最もだ元々魔術協会のユニコーンだ、資料を狙いアンが狙われる可能性は無視できないものがある。

「貴方もしばらく身を隠しなさい、私とコンタクトを取った以上狙われる可能性があるわ」

「はぁ?」

 彩斗は思わず聞き返してしまうがすでに電話が切れている。

「はぁ……」

「どうしたの?」

 背中に抱きついたままの珠理が心配してくる。

 今の彩斗の顔は大分疲れている。

 理由は簡単である金がないのだ、姫風工務店は万年金欠、ホテルに泊まるような余裕は無いのだ。

(どうすっかな……野宿かぁ)

 すぐに頭を振り、否定する。

 今は冬だ、夜の冷え込みが厳しい、流石に凍死してしまう。

 仕方なく彩斗は最終手段を使うことにする。

「なぁ、珠理」

「なに? 彩斗」

 彩斗の何気ない振りに珠理はいつものように何気なく答える。

「今晩泊めてくれ」

 彩斗の発した何気ない言葉を聞き珠理の顔が赤く染まり、いきなり彩斗から離れる。

「えぇぇぇぇ? ちょっと待って、彩斗それはつまりあたしとってことだよね、別に私は彩斗がしたいならいいよ、でもね、こうゆうのは心の準備が大切だと思うのだからね、あのね、つまりね、くぎゅ〜」

 珠理が顔を真っ赤にしながら後ろに倒れる。

「あ、珠理が壊れた」

 彩斗は確信する。珠理は自分の処理能力で処理しきれないことが起こると倒れるのだ。

「お〜い、大丈夫かぁ?」

 彩斗が珠理を覗きこむと珠理は幸せそうな、笑みを浮かべながら意識を失っていた。

「ダメだな、こりゃ」

 珠理の気絶を確認して彩斗がため息を一つ。

 とりあえずほっておくわけにもいかず抱き抱えてそのまま教会に入ると玲音が訝しげに彩斗を見ている。

「襲ったんですか?」

「いや、無いのだろ」

 玲音が彩斗に怪しいものを見る目を向けるが彩斗は苦笑を浮かべながら珠理を教会の椅子に寝かせ自分も横にすわる。

「本当に知り合いなんですね」

「何が?」

 玲音が彩斗の隣に座るが別に彩斗は何も言わず玲音に返事を一つ。

 彩斗が携帯を取りだし着信履歴を確認している。

「やっぱり事務所からかけてやがるか」

 彩斗は着信履歴を見て苛立ちを覚え、乱暴に携帯を閉じる。

「あぁ〜あと君、もう遅いから帰りなさい」

 彩斗は立ち上がり玲音に注意をする。

 そろそろ午前1時を回る。学生が出歩くような時間では無い。

 玲音も携帯の時刻を確認して焦っているようだ。

「もうこんな時間ですか、まずいですね、電車無いや……」

「電車なのか?」

 玲音が焦る様子も無く淡々と答えるので彩斗は形だけの心配をする。

「いいえ、徒歩です」










 美咲市からフェリーで10分の場所にある一年間通して気温の変化があまりない島【七月島】。

 島の約三割が海岸の観光地。

 この観光地の砂浜に立つ建物でたる海の家【上月屋】

 この建物の二階で二人の少女が談笑している。

「お主は相変わらず飴ばかりじゃの、アンジュール」

 アンジュール少女は白衣に桃色の髪の毛に眼鏡、そして周りに転がる飴の包み紙が彼女が飴好きであることを物語る。

「そうゆうお前はその姿で煙草は何も言われないのか一子・・・・・・」

 一子と呼ばれた少女は同じく桃色の髪に黒い服に黒いスカートだが口には煙草がくわえられている。

「ちゃんと免許だってもっとる大人のレディーになにを言っておるか」

 二人の少女は笑い合いながら酒を酌み交わす。

「アンジュール、覚えとるか、あの日の楓の言葉を」

「あぁ、覚えてるよ、戦争の話だろう」

 二人の表情が暗くなり沈み込む。

 一子が立ち上がり、ベランダに腰かける。

「近いうちに戦争が起こるの〜、のぉ〜零二お前の守った世界はどうなるのじゃろうな」

 少女は海を見ながら一人呟く。

 その呟きは波に消され消えていった。










つづく

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