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本日は晴天こちら姫風工務店  作者: アルファルド
1章ユニコーンと姫君の涙
12/14

11話

 蒼く輝く閃光と黄金の閃光の勝敗の空中での決着は意外な形で終わりを迎える。黄金の閃光と蒼く輝く閃光のぶつかり合う直前に漆黒の雷が黄金の閃光をユニコーンを切り裂いたのだ。

「何が起こった」

 彩斗の疑問はもっともである。先程の雷撃はユニコーンランスを易々と切り裂き、ユニコーン本体の身体にすら傷をつけたのだ。

「どこからだ!?」

 彩斗は雷撃の方向を振り向くとコンビニの屋根に漆黒の鎧を纏い、同じく漆黒の剣を携えた女が彩斗の方を見据えていた。

「珠理!?」

 だがその纏う空気は異質であった。ユニコーンが地面に落ちる。

「く!?」

 彩斗がレイから降りるとレイは消える。風が黒い騎士の髪を撫でると黒い騎士の右目には赤く脈動する鍵穴が存在していた。

「観測者!!」

 彩斗の言葉を聞き黒騎士が漆黒の剣を構えると漆黒の光を放ち輝く。

「不味い、空中じゃ身動きが」 

 彩斗は未だに空中にあり身動きすらとれないのだ。黒騎士の漆黒の剣が漆黒の光を放ち収束し放たれる。

「ち、カウンターフラッガ!!」

 彩斗が放たれた黒き破壊の閃光に戦人フラガの短剣で迎え撃つ。

「え?」

 カウンターフラッガは発動するがそのまま貫かれ破壊の閃光はフラガの短剣を砕き彩斗を貫き洋服店の屋根から中へ落下する。






















 彩斗の落下を見据える者が商店街の入り口に居た。全身を漆黒の鎧を纏い、顔にのっぺらぼうの黒い面をつけその腕には身の丈ほどの刀を持つ。黒狼である。

「観測者め余計なことをしてくれる」

 黒狼の表情は面に隠され伺うことはできない。

「神話魔法ミュルニル、厄介な物を持ち出してくれる」

 黒狼が刀を鞘に戻すと黒騎士の方に向かい走り出し跳躍し屋根伝いに走るが黒狼の足元に鎖が打ち込まれる。

「残念ですがここは通行止めですよ」

 黒狼が上を見上げると零也が空中から降りてくる。

「まったくいつもいつも私の邪魔ばかりしないでくださいよ」

 帽子を深く被りながら鎖を引き上げ袖に通して入れる。

「貴様か、あれをここに呼んだのは」

 黒狼は静かに刀を鞘から引き抜き構える。

「観測者ですか、あれは姫風彩斗に引き寄せられただけですから私ではどうとも」

 零也が困ったように説明するといきなり黒狼が零也の前に移動し斬りかかる。

「戯け、空のあれのことだ、ルシフェル!!」

 黒狼の言葉に零也が驚きを隠さない。

「てめぇ何者だ、なぜその名前を知ってやがる」

 零也の纏う空気が鋭く変わると黒狼が踏み込み刀を振るい零也が跳躍して避ける。

「おっと危ねぇじゃねえか、だがこの程度なら魔導六祖もたいしたこと」

 最後まで言う前に零也が下がる。

「ふん、気付かぬほど愚かでは無いか」

 黒狼が刀を構えたまま動かない。

「流石は三大神器の担い手魔導六祖最強の黒狼ってとこか、まあ今回はそこまで欲張る気はねえから消しとくぜ」

 零也はそう言うと帽子を深く被る。

「それであなたの目的は何ですか、魔導六祖」

「我は貴公らのふざけた計画の破壊の為に動く」

 黒狼が背中にある大太刀を引き抜き構えると同時に零也が手元からナイフを投げる。

「ふん」

 刹那、黒狼の太刀動くナイフを弾き、なおその斬撃は止まらず零也に迫る。

 だが零也はそれを読んでいたかの如くバックステップでかわす。

「虚空斬、不知火‥‥‥!!」

 黒狼の言葉に空気が震え爆ぜる。

「ち!?」

 零也がしゃがみ姿勢を低くすると衝撃波が頭上を掠める。

 だが黒狼の攻撃は終わらない。既に零也の正面に移動している。

「マズ!!」

「遅い!!」

 黒狼の拳が零也の鳩尾に叩き込まれ零也が宙を舞う。

「ガ‥‥‥!!」

 零也がそのまま向かいのビルの屋上の看板に叩きつけられる。

「クククククククク、いいねぇ、流石は魔導六祖最強と名高い黒狼だ、これくらいじゃなきゃむしろ困る」

「ふん、悪いが貴様を生かしてはおかん、六道零也、貴様はここで滅びよ!!」






















 洋服店の試着室からYシャツを血に染めた彩斗が出てくる。コートは脱ぎ捨てており今はYシャツにジーンズといった格好だ。

「く‥‥‥やべえな観測者まで来やがるのか」

 彩斗は目を閉じる。あれはおそらく十中八九何らかの神話魔法だろう。

「肩の傷は塞いだが」

 彩斗の右腕がダラリと垂れている。

「筋組織と骨までは無理か」

 彩斗は肩傷は塞いだが中までは直しておらず彩斗の右腕は力なく動かない。

「さて、行くか」

 彩斗は洋服店より飛び出すと跳躍する。

「ユニコーンはどこだ‥‥‥」

 宙を舞う彩斗は辺りを見回すがユニコーンの姿は無い。彩斗はまず1番に街のビル街のビルに着地するがこれが彩斗のミスであった。

 突如彩斗の足元が爆発し足元から突起物が現れる。

「く‥‥‥」

 足元からユニコーンが現れたのだ。その衝撃を受けた彩斗は宙に打ち上げられる。

 かつてのその優雅な姿は自身の血で赤く染まり、澄んだ瞳は憎悪に歪んでいる。

「ち、腕がまだ治って無いときに!?」

 彩斗の額に汗がにじみ、焦りが浮かぶ、未だに腕の骨格と筋組織の再生が終わらないのだ。彩斗の焦りは当然である。

 だが突如ユニコーン胴体に轟音と共に衝撃が走りそれをまともに受けたユニコーンはそのまま地面に叩き落ちる。

 彩斗はそのまま打ち上げられた勢いを殺し僅かに残ったビルの手すりに着地する。

 彩斗は地上を見つめるとそこには虎柄の巨大な金属の塊に二本のベルトに無骨な長い砲身から煙が出ている。かつての彩斗の師が部品を買い集め自身が組み上げたタイガー戦車こと虎丸がビルの間からその無骨な姿を覗かせている。

「宇佐美はなんとか間に合ったか‥‥‥」

 彩斗は口に煙草をくわえポケットからライターを取り出し煙草に火を付け紫煙を潜らせる。

「ふぅ~」

 煙草の煙が揺れるとユニコーンが再び大地に立ちあがり憎悪の声が上げると彩斗の座るビルの窓ガラスが全て弾ける。

 ユニコーンは再び疾走しビルを駆け上がる。

「まだ、動けんのかよ」

 ユニコーンの疾走と同時に彩斗の腕の修復が終了すると煙草を投げ捨てその身をビルより投げ捨てる。

 宙に躍り出た彩斗の眼帯が取れその蒼い瞳が晒される。その瞳に映るユニコーンランスにより加速するユニコーン。

「神を喰らいし魔狼、闇をも喰らう王」

 彩斗の口より詠唱が紡がれる。フェンリル・ランスである。魔導六祖、黒狼との死闘により生み出された彩斗の攻撃魔法。フェンリル・ランスは込められた魔力により対象の魔法術式を破壊する魔法である。

 これによりいかな威力魔法であってもその形を失い。魔狼の牙に喰らわれ消える。

 だが、この魔法には発動条件が存在する。魔法はそれぞれ術式が違う為それにあった対抗術式を入れた。フェンリル・ランスを撃たねばならないのだ。

「黄昏に沈みし世界、魔狼の刻」

 だが彩斗はその発動条件を己の魔眼により埋める。同じく黒狼戦にて生まれた魔眼、この魔眼の実際の能力は不明だが能力は1つ判明している。魔法の術式の看破である。これにより彩斗の瞳にはユニコーンランスの術式を常に視認する。だが魔眼の弊害は存在する。本来、幻想種の術式の看破など人間の行うことではないのだ。見すぎれば彩斗の脳はオーバーロードを起こす。

「 叫ばれし贄どもよ 、喰らわれ、奪われ、失せろ」

 彩斗の右腕に魔力が込められ渦巻き一本の槍を魔狼の牙を作り上げる。だが既にユニコーンランスもすぐ側に迫っている。彩斗は自らの死の具現となったユニコーンランスに相対する。

「フェンリル・ランス!!」

 彩斗は自らの死の具現に魔狼の牙を放つ。魔狼の牙がユニコーンランスに喰らいつくがユニコーンランスは止まらない。

「大したもんだが、幻想種、テメー人間を舐めすぎだ」

 突如ユニコーンの胴体から鮮血が吹き出すし揺らぐ。その揺らぎが勝敗を分けることとなる。ユニコーンランスの魔力一瞬薄くなると同時に彩斗の放ったフェンリル・ランスがそこに集中し喰い破ろうと集まる。

「教えてやるよユニコーン、さっきぶち込んだ特注弾は銀弾に更に別の幻想種の血液を突っ込んであった‥‥‥で、気分はどうだユニコーン、自分の幻想を他の幻想に浸食される気分は」

 幻想種の殺害にもっとも効果的と言われいる方法に他の幻想種の血液を打ち込むという

方法がある。幻想種とはそもそも人々の幻想が形となったものなのだ。だがその幻想は混ざりを許容できないのだ。言うなれば他の幻想種との混合ができないのだ。もしその混合が起こった場合何が起こるかそれは簡単である幻想同士の喰い合いである。

 ユニコーンの身体に打ち込まれた幻想がユニコーンの身体を浸食し激痛と共にユニコーンから鮮血を出している。そして次の瞬間魔狼の牙は主の死を食い破りユニコーンの喉に食らいつく。

 ユニコーンが声を上げるも喉元に喰い付いた魔狼の牙により空気が抜け声は上げられずユニコーンはゆっくりと地に墜ちる。

「黒き網、歌われし道化、晒され、止

まれ!!」

 彩斗の落下が緩やかになりゆっくりと地面に降り立つ。そのままゆっくりとユニコーンに近づくとユニコーンは全身から鮮血を吹き出し死に体であることがわかる。






















 零也がが帽子を投げ捨て自身の敵である、魔導六祖たる男を見据える。両腕より左右に五本ずつ、合計十本の鎖付きナイフを垂らす。

「さて、時間もねーし、とっとと決めるぜ!!」

 零也は黒狼に向かい疾走するが黒狼が刀を上段で構えると空気が震える。

「虚空斬、激震」

 黒狼の呟きと共に大太刀が振り下ろされるが突如赤い線が走り黒狼の大太刀は力なくアスファルトに当たる。

「助かりましたよヴァルキュリア」

 黒狼の後ろに黒いドレスに黄金のロングヘアーの黒いレース付きの帽子の女性が佇んでおり黒狼は太刀でヴァルキュリアに突きを放つ、その突きは武を極めた者の突きである。速度、威力共に最強ランクの物である。その一撃はヴァルキュリアの心臓を貫き一撃の元絶命させるものになるはずだった。だが黒狼の突きはヴァルキュリアに届かず制止している。

「なに!?」

 黒狼の背後より三本のナイフが射出され、黒狼に迫る。黒狼は弾き落とすために刀を斜め下より切り上げようするも再び赤い線が走り黒狼の動きが脱力感と共に止まる。

 変わらず迫るナイフに黒狼は跳躍しそれを回避するが再び赤い線が走りすぐに落ちる。

「む、からくりは読めんがそこの女が何かしている様だな」

 黒狼が再び刀を構えるると一瞬でヴァルキュリアとの距離が詰まり突きを放つが再び赤い線が走り刀を持つ手が脱力するが黒狼の即座に空いていた片腕が殴りかかりにくるが赤い線が走り再び止まる。それを見た黒狼は即座に跳躍する。

「逃がさないわよ」

 ヴァルキュリアの言葉と共に黒狼の背後に赤い線が走るが突如黒狼は驚くべき行動に出る。空中で前方に跳んだのだ。だが再び赤い線が走り黒狼は力なく着地した。

「なるほどな、そうゆう魔法か‥‥‥」

 黒狼は全て理解したかの様につぶやくと腕がブレると黒狼の周りに糸が舞う。

「なんですって!?」

 ヴァルキュリアは心底驚いている。黒狼はこの数撃の応酬で自分の魔法の触媒を理解し看破したのだ。

「運動エネルギーの減衰か確かにこれなら如何なる魔法を持とうが関係ない‥‥‥、笑わせる、まさかこの程度で我に貴公は勝つ気か、ならば見せてやろうその程度で我が刀を止めることなどできんことをな」

 黒狼が再び大太刀を突きの姿勢で構える。どうやら零也は黒狼にヴァルキュリアをぶつけてどこかに行ったようだ。

「我が名は黒狼、推して参る!!」



















 彩斗は腰のホルスターからデザートイーグルを引き抜きユニコーンに向けるがその引き金が引き抜かれることはなかった。突如巨大なフラスコの様な装置が上空から降ってきたのだ。

 それだけでは無いそのフラスコの中身に彩斗は驚きを隠せない。

「アン・ワイズメル!?」

 フラスコの中には青い液体と呼吸器付けられたアン・ワイズメルが入れられていたのだ。

 だがそれ以上にフラスコの上に乗る男を見た彩斗は動揺を隠せないのだ。黒いスーツに黒い帽子と服装はあの頃とは比べるまでも無い正装だがどれだけ成長しようとその顔を忘れることはない。

「どうゆうことだ‥‥‥お前はあのときあの町で死んだんじゃ無いのか‥‥‥六道零也!!」

 黒いスーツの男、六道零也の彩斗を見る目は酷く無機質なものであった。少なくとも生き別れた親友の物ではなかった。

 零也はフラスコから降りると両腕から3本の合計6本のナイフが六角形を作る。その中心には死に体のユニコーン。

 まるでそれは六角形の魔法陣のようになっている。そして中心よりアン・ワイズメルのフラスコに魔法陣はつながっている。

「ミナ・ミルカニス」

 その言葉で魔法陣より光が上がる。光の帯が彩斗を、アンを、そしてユニコーンを、包みついに門は開く。







つづく


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