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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

"完全完美"

掲載日:2025/10/15

「魔法の本は、どうやって作られてると思う?」



君は魔法の本をめくる指を止めて、木椅子に座りながら僕を視た


書斎の窓から差し込む陽射しは、既に夕陽に染まり始めて居る

それは詩的で穏やかな輝きであり、夜をもたらす血染めのヴェールでもある

僕は「知らないけど……」と前置きした上で、続けた



「でも、いま持ってるそれが魔法の本なんじゃないの?」


僕が問い掛けると、君は、ふふ、と笑った後で否定した



「これは魔女の記した魔法について記された本だが、まだ『魔法の本』じゃない」


「この本を使ってあらゆる罪悪が為され終えたあと、本は本質的な意味で『魔法の本』となり、機能し始めるんだ」


端的な説明だった

僕が「あらゆる罪悪って?」と尋ねると、君は恍惚と両の眼を閉じて、「あらゆる罪だよ」と答えた



「それはこの本を使って人を傷付ける事であり、神の名を穢す事であり、姦淫を行う事でもある、他にも詐称や窃盗、或いは人の家の窓を割る事なんかも含まれるんだ」


僕は立ったまま腕を組み、解った様な解らない様な気持ちでそれを聞いていたが、不意に腑に落ちないものを感じ「姦淫って?」と尋ねた


君は気まずそうに視線を逸らしながら、「それは別に本題じゃない」と答える



「それよりも問題が有るんだ」


話を逸らす為か、君は両手のジェスチャーまで交えて僕に力説した



「この本は、『何故かまだ完成して居ない』」


「『何らかの罪が不足して居る』んだ」



嫌な予感がした


先日も君は『偉大な力の探求』と言って僕を縛り首にしようとしたし、今回だって油断がならない


しかし警戒するより早く、君は本の角で素早く僕のこめかみを殴り付けて居た


躰が大きく後ろに揺れ、次に自分の頭から飛び散る鮮血、音がそれに続き、最後に遅れて痛みが襲い掛かって来た

無意識に、殴られた場所を押さえる為に自分の手が動くのが解る

その手が届くよりも早く、次の一撃が僕を完全に後ろに倒れ込ませた



倒れた所に君が覆い被さり、硬い背表紙を上から押し付けて喉を壊しそうな程に潰してくる

実際には一分もしなかったのだろうが、永遠にも思える位の時間、僕は四肢を暴れさせて抵抗した



とはいえ君は凶器を手にしている分、僕から距離がある


抵抗が苦し紛れ過ぎる事もあり、有効な反撃を与える事は一つも出来なかった

そして、僕の瞳は突然に真上を向いてしまった




意識が消失するまでの、刹那ほどの時間

君の声が聞こえた



「何故だ?魔法が発現して居る………」


「つまり最後の鍵は『友情を踏みにじること』であり、殺害では無かったのか」


「………まあいい」



「安心し給え、君」


「すぐに屍術で、君の生命を呼び起こしてあげよう」



躰に別の者の魂が入り込んでいく感覚が在る

死の瞬間、屍術が成功した事だけはなんとなく解った


僕の魂が肉躰から切り離され、遠くて昏い穴に沈んでいくのが解る……

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