異世界でも二日酔いはトイレで治す。膀胱に全集中したら魔法が出ました。
ただおもいついただけです!ごめんなさい!!
ズッキンズッキンと頭が割れそうなほど痛い。
胃の奥からはまるで波のように吐き気がこみ上げ、重しをつけたように身体が重たい。
「……最悪……」
私は草の上に転がりながらうめき声をあげる。
覚えているのは、昨夜やけ酒したことだけだ。失恋のやけ酒。…あの顔を思い出すだけでまた吐きそうになる。
「…くそっ…気持ち悪い…」
ぼんやりと瞼を開けると、見慣れた天井ではなく、青々とした空と木々の葉。
――ここどこだろ。
「……うぅ……頭いてぇ……」
寝ぼけた頭で、ふとくだらない冗談を思いつく。
右手をヒラヒラと額のあたりで振って、口に出す。
「ほら〜、こっち流れろ〜……頭痛、下に流れろ〜……膀胱あたりに行け〜……」
酔っ払いが藁にすがっているだけ。
…のはずが次の瞬間、本当にズルリと痛みが下腹部に落ちていく感覚がした。
「……あっ、やば。トイレ……!」
私は慌てて草むらに駆け込み、そのまま用を足す。
とてつもなく濃い匂いが立ち上り、頭痛も吐き気も、一瞬で消えた。
「……はっ!めっちゃ頭スッキリしてる!!!」
そこでようやく周囲を見回す。見知らぬ森。小鳥のさえずり、草の匂い。
私は自分がどこにいるのかを理解できずにしばし呆然とした。
ちょっとまって、なんか変な鳥…え?造形おかしくない???何?夢?
と、その時だった。
「ねえ!いまの、何!?」
ガサッと草むらが揺れ、白い髪の女が顔を出した。目は爛々と輝き、頬は興奮で赤く染まっている。
「ひっ……!誰!? 覗き!? 変態!?」
「違う違う!私この森の魔女よ!!それはそうと今のなに!?頭痛を膀胱に移動させた!?そんな魔法、聞いたことない!!」
「いや、トイレだから!用を足しただけ!!」
私は慌てて草むらから飛び出した。女はひょいと私の前に立ちふさがり、獲物を見つけた猫のように笑う。
「ねぇ、もう一回やって!」
「排尿を!?やだよ!!」
「お願い! ほら、この薬草酒、飲んでみて! 二日酔い成分をまた移動させてみて!」
「排尿するために飲むの!?意味わかんない!」
「だって面白いじゃない!!あなた、天才よ!」
「本当に意味がわからない!!」
女は構わずぐいぐい近づいてきて、小瓶を突き出した。中には見るからに怪しい緑色の液体。ツンと鼻をつく匂いがする。
「いや絶対やばいでしょそれ!!!」
「安心して!死にはしない!」
「死には!?死にはしないってことは苦しいんじゃん!」
「でも意外と美味しいのよ!?癖になるわよー!!!」
目の前でキラキラと期待に満ちた目を向けられると、反論の気力もそがれていく。
……まあ、どうせここが夢なら、飲んでも問題ないか。
「……まあ、ちょっとだけなら」
私は小瓶を受け取り、ぐいっと飲んだ。
味は…なんだろ、アブサンとかそう言うやつみたいな…癖になりそう…と思った途端に胃がぎゅるると鳴り、強烈な頭痛と吐き気が襲ってくる。
「うわっ……やっぱ毒じゃんこれぇぇぇ!!」
「今よ! さあやって!!」
「くそっ……!頭痛、膀胱に流れろォォ!!」
半泣きで手をヒラヒラさせる。
するとまたもや痛みが一気に下腹部へと落ちていき、強烈な尿意が襲った。
「……っはあああ……スッキリ……!」
私はまた草むらに駆け込み、全てを放出した。
背後から魔女の歓声が聞こえる。
「すごい!燃やしてみるわよ!!ほら、火つけてみるわね!!」
と言い、魔女は火魔法を放つ。
「いやめちゃくちゃ燃えるな!え、どう言うこと?しかもなかなか消えないし!!私の排尿を燃料にするなし!」
「濃度が普通じゃない!これは大発見よ!」
そういい魔女はメモを取り始める。
「尿燃料理論ができるわよー!!!」
「やめて!」
私は顔を真っ赤にして叫んだ。
「二日酔いはトイレで治す!それだけ!!」