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妄想タックル  作者:
4/5

キャッチャー・イン・ザ・パーク

 え? 何? なんすか? 職質? なんで?

 え、任意ですよね。いや別にいいけど。じゃあ先に警察手帳見せてくださいよ……あー、はい。はいはい。

 ちょっと身分証明書とかはないですけど。手ぶらで来てるんで。ダメなんですか? この辺の者なんですけど。はい、すぐそこんところの。

 いや、交番はちょっと。今作業中なんで。いや、ちょっと。任務っていうか。


 あれですよ、あれ。子どもの保護的な。いや保護者じゃないですけど。保護者じゃないんですけど、守ることをやってます。

 あの小説知ってます? キャッチャー・イン・ザ・ライっていう。ライ麦畑で捕まえてってやつ。お巡りさん知らないですか? 知らないんだ……あー、知らない……。

 いやだからね、俺はそのホールデン・コールフィールドなんです。いや本名は違います。日本人です。だから、俺はホールデンみたいなことやってんですよ。知らないから分かんねえか。わかりやすく言うとね、ホールデンなんだけれども。交番はいかないってば。


 だから、俺は何者でもないんだけれど、この公園で子どもたちが迷子になったりケガしてしまったりしまわないように、守ってるんですよ。不審者が出たら守ってやるつもりでいるんです。今物騒な世の中じゃないですか。子どもはどんどん減ってるし、変な大人は増えてるし。だから俺が守ってやらなくちゃって。いやだからここでいいです。交番はちょっと遠いんで、すみません。


 知ってます? 最近不審者出たって話題ですよ、小学校で。教えてもらったんですよ小学生に。変なおっさんが出るから気をつけろって。どうするんですか、小学生が襲われたら。だから俺が目を光らせてるんです。はい、無職です。34歳です。


 少子高齢化でね、ほんと子ども少なくなっててびっくりしますよ。俺が小学生の時なんか、1学年3クラスもあったのに、今では1クラスしかないんですって。半分以下ですよ俺の時代の。やばいっすよね。やばいってのは小学生の数の話ね。わかります? 俺のことじゃないですよ。


 どうにかして守らなきゃならないでしょ。ただでさえ少ないのに数が減ったら大変ですから。だから俺が守るんですよ。こうして公園で見張ってるんです。守ってるんです。独身です。両親と暮らしています。


 そういうわけなんで! じゃあ、お仕事頑張ってください! いや交番はちょっと。遠いんで。勘弁してください。

 いやなんすか。まだなんかあるんすか。これはただの金属バットです。いざというときのために、ハイ。野球部だったんで。ハイ。

 公園野球禁止? 野球ぐらいさせてやれよ。子どもたち遊ぶ場所無いんだから。ジジババがうるさい? いいでしょ無視すりゃ。暇なんですよあいつら。だから他人に文句ばっかり言ってんでしょ。俺は暇じゃないってば。文句言ってないでしょうが。俺は野球しねえよ。


 え、任意ですよね。俺よりもっと凶悪犯とか追ってくださいよ。俺はここで子どもたち守りますんで。お互いにいい仕事しましょう。お疲れ様です。はい、無職です。34歳です。この辺に住んでます。交番はいきません。身分証明書はちょっと、今無いんですけど。

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