ロボットたち
「お客様の要望は全て承ります」
それは街角に突如現れた一台の銀色のロボットが掲げていた看板の文字だった。料金表には、家事代行、買い物代行、庭の手入れなど、基本的な作業が並んでいた。ロボットはウイーンウイーンと駆動音をたてながら街を歩いた。
最初は誰も近づかなかったが、やがて一人の主婦が依頼してみると、その仕事ぶりの正確さと効率の良さに驚いた。評判は瞬く間に広がり、ロボットの稼ぎは日に日に増えていった。
「このロボット、何でもやってくれるらしいよ」
そんな噂が街中に広がり始めた頃、街にもう一台の同じロボットが現れた。
「お客様の要望は全て承ります」
二台目のロボットも、正確な仕事を素早くこなした。いつのまにかロボットに仕事を依頼するアプリが作られ、予約が殺到していた。
依頼の内容も少しずつ変わっていった。企業がロボットを使い始めたのだ。ビルの清掃、家屋の解体、長距離運転――ロボットは黙々と仕事をこなし、報酬を受け取り続けた。
その後、ロボットは三台目、四台目と数を増やしていき、人々は街のあちこちで銀色のロボットを見かけるようになった。
ロボットは報酬次第でどんな仕事でもした。隣人の監視や尾行、ネットワークへの侵入、機密情報の入手や改ざん――。ロボットに倫理観は無く、咎めるものもいなかった。
ロボットは数を増やし続けた。人々が違和感を持ち始め、ロボットの増加に反対意見を表明する者もあらわれたが、その勢いは止まらなかった。
いつのまにか街中ロボットだらけになっていた。
「お客様の要望は全て承ります」
人々は気味悪がり、街から出ていった。
街には大勢のロボットが残り、ウイーンウイーンと駆動音が響いていた。