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2挺目 彼女の名前を目指して

今日、二度目の更新です。評価、感想、ブクマ、いいね、レビュー、お願いします!


 翌日、学校に行こうと外に出た俺は202号室を見て足を止めた。学年は知らないが、あの少女は高校生らしい。よし、待ってやろう。そして、必ずや名前を聞き出すのだ。

 すると、俺が待ち始めてから十分もしないうちに彼女が出てきた。先に行ってしまったのではないかと心配したが、杞憂だったらしい。


「ハロー! 一緒に行こうぜ、学校! どこ校? って、その制服雲雀川じゃん。ミートゥー! あ、今日もマスク付けてんのな。風邪? それともお洒落?」


 俺は朝からハイテンションで話し掛け、彼女の気分を盛り上げようとする。


「......黙れ」


 が、彼女は鬼のように冷たく、やさぐれた目で俺を睨んできた。低い声で溜め息を吐きながら、目を擦っている。どうやら、朝は弱いらしい。


「一緒に行こうぜ」


「絶対に嫌。失せろ」


「失せろ!?」


 拒否というよりかは拒絶に近い反応をされた。


「まず誰。お前」


 彼女の言葉がグサッと俺の心に刺さる。


「昨日、言っただろ! 霊群蒼(たまむらそう)!」


「耳障り」


 グサァッ。


「俺とお前は同じ高校の学生だ。お前が嫌と言っても俺とお前は同じ道を歩き、同じ目的地へ行かざるを得ないんだぞ。あ、お前がお前って呼んでくるから俺もお前呼びさせて貰ってるけど、嫌だったら名前言ってね! ......あれ、居ない」


 俺を置いて彼女はアパートの階段を降り、学校へ向かっていた。俺は慌てて追いかけ、彼女の肩に手を置く。


「ぜえ、ぜえ、ちょい待ち。俺、体力無いから先に行かないで」


「触んな」


 バシッ、と彼女の肩に置いた手は払われた。


「せめて、名前だけで良いから教えてくれよ。隣人なんだしさあ」


「嫌」


「何故に」


「お前、名前を教えたら余計、付き纏ってきそうだから」


 彼女は俺を心底嫌そうな表情で睨み付け、『はあっ......』と鬼のように大きな溜め息を吐いた。

 顔の整った所謂、美少女なのだが、やさぐれたような表情と放っている陰気なオーラ、えげつない殺意のせいでそれが打ち消されている。


「お~し~え~て~」


 俺は何度も彼女の肩を叩きながら言う。邪険にされているというのに、不思議と不快ではない。むしろ、もっと彼女という存在に興味が沸いてくるのは何故なのだろうか。


「ウザイ」


「じゃあ、せめて何年生かだけ教えて?」


 学年さえ分かればその学年のクラスの中から彼女のクラスをしらみ潰しに探し出し、そのクラスの生徒に彼女の名前を聞くことが出来る。


「嫌。大体、私がお前に名前や学年を教えたところでメリットがあるとは思えない。それとも、何かあるの? 私へのメリット」


「俺とお近づきになれる、とか」


「くたばれ」


 結局、登校中に彼女の名前を聞くことは叶わなかった。


⭐︎


 学級委員の声に合わせて起立、気を付け、礼をすると午前中の授業が終わり昼休みになった。

 彼女は弁当だろうか。それとも、購買部に行くのだろうか。俺は朝から彼女のことで頭がいっぱいだった。


「あ、霊群先輩!」


 すると、突然、後ろから声を掛けられた。


「ん? ああ、アズアズじゃん。ハロー」


 声の主は蜂須賀梓。アパートの向かいにある一軒家に住む少女だった。


「霊群先輩も購買部に行くんですか? だったら、梓たんと一緒に行きましょ」


「いや、俺は弁当......。いや、そうだな。うん。行くか」


「何々? どったの?」


 首を傾げる蜂須賀に俺は202号室の彼女のことを話した。


「ちょ、タマムラ兄さん、それはいくら何でもヤバいで。めちゃヤバやで」


 すると、何とも言えない反応を示された。


「何がだよ」


「いや、そのお隣さんのことは私も知ってますし、梓たんも何度かお近づきになろうとしたので彼女と学校で会いたい気持ちも分かりますけど~。流石に弁当なのに彼女に会いたいからって、購買部で待ち伏せするのはストーカー染みてるかな、って梓たんは思います」


「……確かに」


「あ、もしかして、自分のやろうとしてたことののヤバさに気付いてなかった?」


「うん」


「うん、ってアンタ。こりゃあ、中々、サイコな奴が近所に引っ越してきたみたいだなあ......。まあ、梓たんはそういうクレイジーな人が大好きなんですけど!」


「お前もクレイジーな感じだもんな」


「失礼な! 私は至って常識的ですよ。清楚が服着て歩いていると言っても過言じゃない。キャーッ、梓ちゃんてばマジ清楚可愛い~」


 こりゃあ、中々、サイコな奴が近所に居るところに引っ越してしまったみたいだなあ......。


「というかお前はアイツの名前、知ってるのか?」


 先程の蜂須賀の言葉を聞く限り、彼女は何度かあの毒舌娘にアタックをしたらしい。であれば、名前の一つくらい知っていても可笑しくはないだろう。


「そりゃあ、もちです」


「マジで!? 教えて!?」


 俺は蜂須賀の肩に手を置いて、彼女の体を揺すりながら言った。


「うあ~うあ~うあ~、ちょ、揺らさないでクレメンス2世。いやまあ、教えても別に良いんですけどね? なんか、教えない方が面白いことになりそうなので敢えてその頼みは断らせて貰います」


 ニコッと笑顔を浮かべてそう話す蜂須賀。俺は舌打ちをしながらも内心、蜂須賀の考えに同調していた。確かに此処で蜂須賀に呆気なく、聞いてしまうよりも試行錯誤を繰り返しながらアイツから聞き出す方が楽しそうだ。


「じゃあ、せめてアイツの学年だけでも良いから教えてくれないか?」


 俺がそう聞くと蜂須賀はわざとらしく『うーむ』と目を細め


「ま、そんくらいなら良いですよ。この梓たんに感謝しやがれ下さい!」


と、言ってくれた。

 良い後輩を持ったものだ。

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