変化 (3)
子供たちが帰ってから、僕はぼーっと川の向かいの住宅地を眺めていた。
どれくらい時間が経っただろう。
空が薄暗くなっている。
30分、いや、それ以上経ってるかもしれない。
その間僕は何も考えずに、ただただ向かいの景色を眺めていた。
目に焦点がなく景色がぼやけていたので、川の向かいを“眺めていた”という表現が適しているかは分からないが。
次に思考が戻った時、頭の中は何も整理されていないはずなのに、少しだけスッキリした感覚があった。
そうか、僕には何も考えない時間が必要だったのか。
ここ最近はずっと考え事ばかりだった。
母さんと誠がいなくなって、死のうとして、麗と出会って、生きる意味を見つけて、生きたいと願って、いなくなるのが怖くなった。
ずっとずっと、重い思考に囚われていた気がする。
一瞬でも、その時間から開放されたために、頭がスッキリした錯覚に陥ったのだろう。
僕は重い腰を上げ、立ち上がり、そして大きく伸びをした。
子供たちと話したからか、はたまた頭がスッキリしたからか、このままではダメだと、漠然とそう思った。
よし、家に帰ろう。
家に帰って、母さんにも全部伝えて、父さんと話そう。
話して、何か変わるかは分からない。
でも何もしないことはもうしたくない。
これは麗といて学んだことだ。
麗が僕に1歩踏み出す勇気をくれ、行動したから、少しづつ自分を許し、生きていこうと思えた。
何かしたから、僕は変われたのだ。
もちろんまだ未来で誰かと笑い合っている自分は想像できなくて、お先真っ暗なことは確かだ。
しかし行動しなければ何も変わらない。
未来を想像出来なくても未来はやってくるのだからら、その為に今自分が出来る精一杯のことをしようと思った。
今からすることは、いわば未来への投資だ。
僕は1歩踏み出し、帰路に着いた。
自分のことを何も知らない第三者、しかも純粋で素直な子供だったからこそ、その言葉を素直に受け入れることができ、“僕”は動こうと思えたんじゃないかな。
変わるきっかけは案外どこにでも転がっているものだと私は思います。




